ようせいテレビ

昔懐かし怖いハナシ

文字の大きさ
上 下
5 / 10

過去のお話

しおりを挟む
「さちちゃん。ちょっと。」
こうきは家の中へと手招きをした。
「なになに?」
気になる様子で、駆け寄った。
「二階行ってみようよ。」
「いいの?」
「平気。」
二階は、物置として使われている。なぜなら、おじいちゃん達が二階へ登るのがつらくなり、次第に古い物が置かれるようになったからだ。こうきは、いつもそこで隠れんぼや、お宝探しに夢中だった。
 ギシギシと鳴る、木の階段を駆け上がった二人は、手前の部屋へと入った。
 そこは、見たことのない古い道具ばかり置いてあった。ホコリを被っていたが、使えるものは何個かあった。部屋の隅にあるテレビ、その一つだった。
「ねぇ、このテレビ点くの?」
さちは取っ手をひねったりボタンを押したりした。
「点くと思うけど。」
コンセントを入れると、変な音を立てて画面が白くなった。
 と途端、部屋中に光が満ちたのだった。二人は、思わず目を閉じてしまった。
「あれ、またテレビの中?」
また同じ空間が広がっていたのだった。しかし、数は少なくなっており、テレビの画面の大きさも小さくなっていた。
 すると、さちは一つの画面に気がついた。
「ねぇ、女の子いるよ。」
「え?」
その画面の向こうには、沢山の人が行き来している道があった。そこに赤いワンピースの小さな女の子がポツンと立って、こちらを見ていた。
「もしかして、こっちに気がついている?」
さちはそう思い、手を振った。
 するとその女の子も、手を振り返した。
「画面に手を触れて。」
広義はそう言うと、両手を恐る恐るテレビの画面に触れた。二人には、その手のひらが見えていただけだったが。
 気がついたら、その無限の空間に三人の子供がいた。
「あれ?ここは。」
その女の子は、周りをキョロキョロ見わたし、興味津々だった。
「実はここ、テレビの世界なんだ。びっくりしたでしょ?」
「本当に?」
女の子は広義に微笑んだ顔を見せ、聞いた。小さな顔だなぁと思った。なんだか見たことあるなぁとも思った。
「ほら、これ見て。」
広義は、近くに浮いてあったテレビの画面を見せた。その向こうには、大人達が笑ったりがっかりしていた姿があった。
「ふーん。そうみたいだね。」
女の子は顔を近づかせ、画面を見ていた。
「私、さちっていうんだ。」
さちがそう言うと、女の子は振り返り
「私、みつね。よろしくね。」
「僕は、こうき。」
「ねぇ、ここ探検しようよ。」
みつねは、突然広義の手を引いた。
「でも、迷子になるよ。」
「平気。」
さちとは違い、気の強い女の子だった。
 広義はさちの手を握り、三人で画面しかない空間を進んでいった。何も、目印はないそんな空間を子供の感で。
「ねぇ。ここ、大人は入れないんじゃない?だって、さっき大人は、私達のこと見えてなかったみたい。」
「もしかしたらそうなのかもしれないね。」
さちに広義は、そう聞いた。
「うん。」
三人は、まだ至る場所にある画面の間を抜けていっていた。
 すると、みつねはまた見つけたのだった。
「この部屋。あいつの家だ。ちょっと待ってて。」
「みつねちゃん?」
広義の手を振りほどくと、その画面の中へと行ってしまった。二人はみつねが返ってくるまで、その画面を見つめていた。
 部屋には誰もいなかった。テレビは点きっぱなし。みつねは、足音を立てず台所へと行くと、冷蔵庫からジュースを三本取りだしテレビに手を触れ、再び戻ってきたのだった。
「泥棒だよ?」
さちは怒った。
「いいの。私をいじめてきた子の家なの。だから、お返し。」
広義はみつねの手の甲に酷いあざが有ることに気がついた。
「さちちゃんも、あざだらけ。」
「ころんだの。」
さちは、強く否定した。






しおりを挟む

処理中です...