終セい紀

昔懐かし怖いハナシ

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九話

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 今日は、この街で一夜を過ごした。
 爺の特殊な箱で、火を起こした。その箱はどうやら、火を出せるらしい。しかし、そんなに熱くはなく、静かにパチパチとなっていた。こんな火は見たことのない。また一つ、爺を不思議に思った。
「その箱は、誰が作ったの?」
マルは、本当に不思議だった。自分の作る物と、ほとんど同じ作り方だった。そこが不思議だったのだ。
「これは。僕が貰ったもの。この民族のまとめ役がいたと言ったよね、さっき。その人に、貰った。多分その人が、作ったと思う。」
すべての箱には、名前が刻まれていた。しかし、誰一人読めなかった。大昔の文字らしい。
 もちろん、書ける人も今はいない。そんなものは、役に立たないからだ。

「お前も、よく作れるよな。難しい回路を、」
マルは、ある物を開発していた。コンパクトな、水処理器だ。
 相変わらず、空は真っ黒であり夜も朝も変わらない。
「で、行く先は決まってるのか?」
マルは聞いた。小さくパチパチと燃える火を見ながら。
「あぁ、まだ僕が行ってない場所がある。
 あの山の先だ。」
 マルの街とは真逆にあった、大きな山。今は、砂利と土だけの丘だった。
「分かった。早く寝るか。明日は、疲れそうだ。」
マルは、ある機械を中心に置いた。すると、ドーム型の“もの”が出来た。人二人分ぐらいが入る。
「これで、身を守れるわけか。」
爺は感心した。
「まぁ、爺も寝たほうがいい。」
「じゃあ、そうするよ。」
爺は何枚かの布の上で、ゆっくりと転がった。マルは、身体を包むようなものだった。
「お休み。」
爺はそう言い残して寝た。
 マルは寝ていたのか分からないが、返事はしなかった。
 一晩中、火は小さく燃え続け、翌日には火を燃やすために使われた燃料も減っていた。

 二人は、コンクリートだらけの街を抜け、あの山を目指した。不思議と誰にも襲われなかった。
「俺は、何にそんなに怯えていたんだろう。」
いつもの日常とかけ離れた世界で、マルはそう思った。
「ずっと、こんな人間に怯えて、コロニーで暮らしていたのか。」
「そうだ。人は、恐いだけじゃないんだ。」

 広い所は出ると、あの車を出した。まだ先は長い。
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