終セい紀

昔懐かし怖いハナシ

文字の大きさ
11 / 33

一一

しおりを挟む
 二人の目の前には、先の見えないトンネルがあった。数歩歩くと足元が見えなくなる程、暗くてジメジメしていた。
「これ、なんて読むの?」
今となっては読めない字が、トンネルの脇にある石に掘られていた。所々、ひびがはいっていた。
「分からん。とにかく先に進むぞ。」
爺は、箱の中から円柱状の、先を光で照らす道具を出した。マルも灯りを灯すものとして、火をおこした。
 そして、爺は黙ってマルと共に歩いていった。
 中は、古く岩肌がむき出しの状態だった。所々岩が崩れ落ち、小石や大岩など散乱していた。
「これ、どうするか。」
二人は立ち止まってしまった。
「とりあえず、取り除くぞ。」
「あ、うん。」
爺の前向きな姿勢に、マルも心を動かさずにはいられなかった。
 爺は、ある小さな箱を、足元に一つ置いた。
「離れて。」
爺はそう言い、急いでその箱から離れた。
 すると、大きな岩が一つ動いたかと思うと、その他も次々にその箱に吸い込まれていった。ただ、ゴーっという岩が動く大きな音には、マルは慣れてはいなかった。
「おい!そこから、動くなよ。」
「誰?」
マルは、振り返ってしまった。
「動くな、って。」
その時、マルの足元に何かが飛んできた。それはとても速く、地面にめり込んだ。
「動くな。」
爺は、マルにそう言い放った。マルは、地面を見たまま動かなかった。
 トンネルの入り口に立っている人、彼は筒のようなものをこちらに向けていた。二人は、なんとなく危ない物だと思った。
「そこには、何もない。だから、こっちへ来い。」
彼の背中から強くはない光が二人をさしていた。
 しかしその光は、すぐに消える。
「早く来…」
ドッドーという、地響きがしたかと思うと、入り口から土や岩が流れてきた。入り口を塞ぐほどだった。
 間もなく、彼は岩に飲み込まれ見えなくなってしまった。マルは、無意識に耳を塞いでいた。爺は、目をふせていた。
「多分、あの岩はあの人が積んだものだろう。不運な。それが、自分の身に降りかかるなんて。」
爺は、手を合わせた。
 マルは、閉じこまれた事に不安に感じていた。
「どうする?どうする?」
慌てふためいていた。
「とりあえず、この先に行こう。」
先程まであった岩が全くなくなって、箱だけが一つ置いてあった。
「あ、。」
その先には、たくさんの食料が置いてあった。保存食がほとんど、食べ物があった。
「どうやら、さっきの人はこれを隠していたんだ。
 …。入り口にふさがった岩、そして取り除いだ岩、同じだと思わないか。」
爺は吸い取った箱から、一つ小さな岩のかけらを取り出した。
「この岩肌、全く同じだ。」
マルはそう気づいた。
「多分、何かで崩れたこの岩を、あの人はこの食料の為に掘り出していたんだ。
 でも、あんな形で人生終わってしまった。
 …悲しいもんだ。世の中は。」
マルも小さくコクっと頭を下げた。
 爺は、もう一度手を合わせ目を閉じた。マルも同じように真似をした。片目で、爺を見ながらだったが。
「その動き、なんだ?」
「これは、昔の名残だな。」
「ふう~ん。人が死ぬと、こうするんだ。」
マルはそう言い、食料の何個かを持った。
「ここに置いておいても、もったいない。多分、まだ食えるだろう。」


 




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...