終セい紀

昔懐かし怖いハナシ

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一四

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「おい。爺さん。あれは何だ。」
トンネルから出た時、マルはある場所を眺めていた。
「あれはね…」
その時、マルの横顔が哀しげなのに気づいた。目元には、キラリと小さく光るものがあった。しかし、爺はそれにふれなかった。
「海と言われるものらしいね。私達は、“ライン”と言っている。ほら、この水と空との境界線。何十年前まではね、空に浮いている太陽と言われる光を発するものが見られていたんだ。それによって、あの境界線が赤く光ることから、“ライン”と呼ばれるようになった。
 今じゃ、“黒いやつ”に空を覆われてしまったが。」
「…そうか。見たかった。その太陽、てやつも。」
爺は一つ間を置き、こう言った。
「それよりも、水中に入るなよ。この水、しょっぱいし何より毒だ。入ったら死ぬぞ。」
「あぶねーな。」
マルは一歩後ろに下がった。この時マルは、笑顔になっている事に本人は気づかなかった。
「さ、そろそろ行こうか。」
「うん。」
マルは、水が激しく波打つ“ライン”に背を向け、歩き出した。その一歩は、荒れくる波風に負けない強い一歩だった。
 二人は、その場を離れた。美しくなっている姿を想像して。


 ただ一つ。波立つ水の上には、生き物の身体がいくつも浮いていた。それは波にさらわれることも無く、ただマルの足元で静かに揺れるだけだった。それを、マルは気づかないでいた。

「見せたいものがある。君の家族について。」
「何?」
「僕が、君の背中にあるしるしと同じしるしが腕についている。それは、君の家族と同じ仲間だということになる。」
マルは爺の頼りのあるような腕を見た。
「仲間…ね。」
マルは嫌そうな顔をした。
「君のお父さんお母さんと関わりのある僕達は、これを持っているはず。」
爺は、箱から一つの円盤型の石を取り出した。しかし、それは半円だった。
「この石には模様が描いてある。これは、君のお父さんとお母さんがした歴史を知る手がかりとなるはず。だが、見ての通りあと半分どこかにあるはずなんだ。」
マルは、眉を引き寄せこう言った。
「なんか見た事ある。」
「あるはずなんだ。息子のお前が持っているはず。」
爺は本気でそれを探しているようだった。肩を掴まれた爺の手がいつも以上に強かった。
「ちょっと待ってて。持ってきたかも。」
マルは爺のその勢いに負け、箱から自分の荷物を漁り始めた。なにせたくさんの道具や機械を持ってきた為、箱の中がごちゃごちゃしていた。
「それは、この一生をかけて探さなくちゃならないないものだ。歴史が今のこの世界を変えるかもしれない。彼らは、そんな物を我々に残しているはずなんだ。」




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