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一五
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「待てよ。確か、この袋に。」
薄汚れてうすい茶色となっていた、その布の袋から半円の物が出てきた。たしかに、爺が持っていた半円と同じ、大きさに模様だった。ただ違ったのは、高価な鉄で作られていた点だった。
「それだ。そう、それ。」
爺は大きく目を開け、それを取ろうとしていた手が震えていた。
「待て、」
マルは、そう一言を放った。
「これは、価値のあるものだ。いくらあんたでも、簡単に渡せるものではない。」
マルはもう一度袋へと入れた。
「分かった。ではな、それが必要な所に来たら、渡してもらおう。それが、歴史の鍵となる。その時まで」
「その時が来たら…な。」
マルは箱の中へと戻し、爺はついて来い、と言うかのように目配せをした。
二人は、ある場所へとたどり着いた。“ライン”へとつながる、水の流れのある場所。この時代には、川というものは存在しない。砂やがれき、岩などが水の流れをせき止めるかのように、その場所には散らばっていた。
「この先へと行こうか。」
「おう。」
「この水の中ヘは入るなよ。ここには、小さなやつがいる。」
「それは?」
「体内に入るほど小さい。すると、腹が痛くなってやがて死ぬ。今となっては対処方法がない。歴史に埋もれてしまった。」
「そうか。歴史ってやつはそんなにひどいのか。」
マルは、岩の上から飛び降りて、爺の平たんな道へと変えた。落ちると、いけないから。
「歴史は、悪くてもいいもんだ。過去を振り返ることで、いいことも悪いことも思い出せる。それは、人にとって何よりも大切なことなんだ。生きているうち…ではね。死んだらそんな価値はないさ。本人だけの物語だね。
まあそれは歴史というか、思い出みたいなもんだね。その思い出をたくさん集めたものが、歴史って感じ。」
爺の背中を見ながらマルは、なるほどと思った。そんなにいい思い出はないマルは、これから良い思い出を作りたい。本気でそう思った。
少しの坂道でさえ、険しかったが爺のアドバイスだけで楽に歩けることができた。爺の選んだ道をついていくだけ、それだけで大分楽できた。
「この先だ。」
マルは、ある事に気がついた。
「こんなにも静かで人もいない。水さえ手に入れれば良い所なのに。」
「そうだな。だがな、お前だってこんな場所知らなかっただろ?
世界を知らなかったら、この場所も知らなかった。そうだろ?」
「たしかに。」
「あんな街の中でおびえて暮らすよりも、もっと旅をしたほうがいい。そっちの方が面白いだろうよ。」
爺は、ニヤリと笑った。
マルは、旅をする人はみんな楽しく生きてるんだろうなと思ってしまった。
「ま、今度はここに住もうかな。水は、地下水でいいだろうし。」
「地下水なら飲めると思う。その時は、たまに遊びに来るよ。」
「おう。立派な家にするぜ。」
薄汚れてうすい茶色となっていた、その布の袋から半円の物が出てきた。たしかに、爺が持っていた半円と同じ、大きさに模様だった。ただ違ったのは、高価な鉄で作られていた点だった。
「それだ。そう、それ。」
爺は大きく目を開け、それを取ろうとしていた手が震えていた。
「待て、」
マルは、そう一言を放った。
「これは、価値のあるものだ。いくらあんたでも、簡単に渡せるものではない。」
マルはもう一度袋へと入れた。
「分かった。ではな、それが必要な所に来たら、渡してもらおう。それが、歴史の鍵となる。その時まで」
「その時が来たら…な。」
マルは箱の中へと戻し、爺はついて来い、と言うかのように目配せをした。
二人は、ある場所へとたどり着いた。“ライン”へとつながる、水の流れのある場所。この時代には、川というものは存在しない。砂やがれき、岩などが水の流れをせき止めるかのように、その場所には散らばっていた。
「この先へと行こうか。」
「おう。」
「この水の中ヘは入るなよ。ここには、小さなやつがいる。」
「それは?」
「体内に入るほど小さい。すると、腹が痛くなってやがて死ぬ。今となっては対処方法がない。歴史に埋もれてしまった。」
「そうか。歴史ってやつはそんなにひどいのか。」
マルは、岩の上から飛び降りて、爺の平たんな道へと変えた。落ちると、いけないから。
「歴史は、悪くてもいいもんだ。過去を振り返ることで、いいことも悪いことも思い出せる。それは、人にとって何よりも大切なことなんだ。生きているうち…ではね。死んだらそんな価値はないさ。本人だけの物語だね。
まあそれは歴史というか、思い出みたいなもんだね。その思い出をたくさん集めたものが、歴史って感じ。」
爺の背中を見ながらマルは、なるほどと思った。そんなにいい思い出はないマルは、これから良い思い出を作りたい。本気でそう思った。
少しの坂道でさえ、険しかったが爺のアドバイスだけで楽に歩けることができた。爺の選んだ道をついていくだけ、それだけで大分楽できた。
「この先だ。」
マルは、ある事に気がついた。
「こんなにも静かで人もいない。水さえ手に入れれば良い所なのに。」
「そうだな。だがな、お前だってこんな場所知らなかっただろ?
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「たしかに。」
「あんな街の中でおびえて暮らすよりも、もっと旅をしたほうがいい。そっちの方が面白いだろうよ。」
爺は、ニヤリと笑った。
マルは、旅をする人はみんな楽しく生きてるんだろうなと思ってしまった。
「ま、今度はここに住もうかな。水は、地下水でいいだろうし。」
「地下水なら飲めると思う。その時は、たまに遊びに来るよ。」
「おう。立派な家にするぜ。」
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