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ゆーとぴあ
三〇
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「こんにちは。」
ガラガラと音を立てて、玄関からひょこっと出てきたのは、女の子だった。彼女は頭を軽く下げた。マルより背が少し低かった。
「あ、」
何も言い返すことは出来なかった。急に現れ、マルはビクッとしたからだ。
もしかしたら、同じ歳ではないのか。そう思うと、親近感が湧いた。
「何年生きてる?」
マルは聞いた。
「えっと。確か、十七年です。」
「というと、、」
マルはポケットから箱を取り出し、そこからまた一つ石を取り出した。赤の線が引いてある石だった。それを一つ一つ数え、こう言った。
「ちょうど十七だ。俺は、お前と同じ時に生まれた。」
「まあ。それは、面白いです。お互い、“幼なじみ”ですね。」
「同じか。今までの人と比べて、お前は話しやすいや。」
「そうですね。私もです。」
彼女は優しく微笑んでいた。その美しい顔に、マルは目を奪われ、咄嗟に顔を下に向けた。
なんだろう、この気持ちは。
「なぜここにいる?」
マルは顔を下に向けたまま、そう聞いた。
「私も、“家族”なんです。ここの、一番最初の住人、ていうところですかね。」
不思議な話し方が気になったが、それ以上に彼女の可愛らしさが頭の中を取り巻いていた。だが、マルはどう接していいか、自分の気持ちでさえよく分かっていなかった。
「あの二人のお墓を見ていましたが、何か気になる事があったのですか?」
何を話そうか迷っている中、彼女から先に質問されてしまった。
「いや、、…うん。あの墓、俺のママとパパなんだ。小さい頃に居なくなってから、ようやく会えたんだ。」
「なんと。あの二人の息子様ですか。」
彼女は、とても驚いていた。マルは、親達のどこが特別な存在なのか分からなかった。が、後に親達が彼女にどんな影響を与えたのか、分かってきた。
「私は、二人に助けてもらった者です。実際は私の親が助けてもらったのです。昔、死にかけていた所を助けてもらい、生きる希望というものも教えてくれました。その事を私は、親から受け継ぎ、“ゆーとぴあ”で他の家族達と幸せを共有したいと思っています。
そして、楽しく平和に暮らしたい。それが、二人の願いなのです。その願いを現実にするのが、私の役目です。
あなたも一緒に、あの二人の意志を継いでもらいたい。」
「え?なんでだ。」
「息子だからです。」
「どうしようか。」
マルは悩んだ。“ゆーとぴあ”を作り上げる。僕は彼女と共に、率先して家族をまとめなければならないのか。それが、ママとパパの意志。
「でも…悪いな。」
彼女は、マルの手を握って必死に訴えた。
「どうしてですか?二人の意志を継ぐのは、息子なら当然のハズ。」
彼女は、自分の当たり前だと思っている事を言っているのだろう。だがマルにとって、息子とかどうでもいいのだ。
「そんな事はない。死んだ者の意志は、僕みたいな息子だけの持つものじゃない。受け継ぎたい人が、やればいい。頑張ればいいんだ。俺はもっとやりたいことがある。その道を行くんだ。」
マルは、そう言いドアを開き、明るい天井を見た。彼女も外に出て、日にあたった。いつも以上に優しい光だった。
「お前も、あの二人みたいに自分のやりたい事をやれ。他人の意志なんて、関係ない。だが、自分勝手にというわけじゃないぞ。人の世界に引き連られるな、って意味だ。」
「分かりました。」
彼女は、自分のしてきた事が正しかったのか、もしくは正しくなかったのか分からず、悲しくなった。
二人の意志を忘れたら、自分の意思は全くなくなる。急に自分のしたい事なんて考えられない。
「私、どうすればいいのでしょうか。」
「知らねーよ。何かあるだろ。やりたい事。」
「でも…」
彼女は、小さくなっていた。最初に会った時よりも。
「はあ…。まいったな。他人なんて、面倒だな。」
ついそう口走ってしまった。彼女はますます落ち込むばかりだった。
「悪かった。まぁ、僕、しばらくここにいるから一緒に考えようぜ。出ていくまでに、決める事。いいな?」
マルは、そう提案した。現在の我々から見ると、兄のように頼もしかった。彼らの誰一人も、兄というものは知らないが。
ガラガラと音を立てて、玄関からひょこっと出てきたのは、女の子だった。彼女は頭を軽く下げた。マルより背が少し低かった。
「あ、」
何も言い返すことは出来なかった。急に現れ、マルはビクッとしたからだ。
もしかしたら、同じ歳ではないのか。そう思うと、親近感が湧いた。
「何年生きてる?」
マルは聞いた。
「えっと。確か、十七年です。」
「というと、、」
マルはポケットから箱を取り出し、そこからまた一つ石を取り出した。赤の線が引いてある石だった。それを一つ一つ数え、こう言った。
「ちょうど十七だ。俺は、お前と同じ時に生まれた。」
「まあ。それは、面白いです。お互い、“幼なじみ”ですね。」
「同じか。今までの人と比べて、お前は話しやすいや。」
「そうですね。私もです。」
彼女は優しく微笑んでいた。その美しい顔に、マルは目を奪われ、咄嗟に顔を下に向けた。
なんだろう、この気持ちは。
「なぜここにいる?」
マルは顔を下に向けたまま、そう聞いた。
「私も、“家族”なんです。ここの、一番最初の住人、ていうところですかね。」
不思議な話し方が気になったが、それ以上に彼女の可愛らしさが頭の中を取り巻いていた。だが、マルはどう接していいか、自分の気持ちでさえよく分かっていなかった。
「あの二人のお墓を見ていましたが、何か気になる事があったのですか?」
何を話そうか迷っている中、彼女から先に質問されてしまった。
「いや、、…うん。あの墓、俺のママとパパなんだ。小さい頃に居なくなってから、ようやく会えたんだ。」
「なんと。あの二人の息子様ですか。」
彼女は、とても驚いていた。マルは、親達のどこが特別な存在なのか分からなかった。が、後に親達が彼女にどんな影響を与えたのか、分かってきた。
「私は、二人に助けてもらった者です。実際は私の親が助けてもらったのです。昔、死にかけていた所を助けてもらい、生きる希望というものも教えてくれました。その事を私は、親から受け継ぎ、“ゆーとぴあ”で他の家族達と幸せを共有したいと思っています。
そして、楽しく平和に暮らしたい。それが、二人の願いなのです。その願いを現実にするのが、私の役目です。
あなたも一緒に、あの二人の意志を継いでもらいたい。」
「え?なんでだ。」
「息子だからです。」
「どうしようか。」
マルは悩んだ。“ゆーとぴあ”を作り上げる。僕は彼女と共に、率先して家族をまとめなければならないのか。それが、ママとパパの意志。
「でも…悪いな。」
彼女は、マルの手を握って必死に訴えた。
「どうしてですか?二人の意志を継ぐのは、息子なら当然のハズ。」
彼女は、自分の当たり前だと思っている事を言っているのだろう。だがマルにとって、息子とかどうでもいいのだ。
「そんな事はない。死んだ者の意志は、僕みたいな息子だけの持つものじゃない。受け継ぎたい人が、やればいい。頑張ればいいんだ。俺はもっとやりたいことがある。その道を行くんだ。」
マルは、そう言いドアを開き、明るい天井を見た。彼女も外に出て、日にあたった。いつも以上に優しい光だった。
「お前も、あの二人みたいに自分のやりたい事をやれ。他人の意志なんて、関係ない。だが、自分勝手にというわけじゃないぞ。人の世界に引き連られるな、って意味だ。」
「分かりました。」
彼女は、自分のしてきた事が正しかったのか、もしくは正しくなかったのか分からず、悲しくなった。
二人の意志を忘れたら、自分の意思は全くなくなる。急に自分のしたい事なんて考えられない。
「私、どうすればいいのでしょうか。」
「知らねーよ。何かあるだろ。やりたい事。」
「でも…」
彼女は、小さくなっていた。最初に会った時よりも。
「はあ…。まいったな。他人なんて、面倒だな。」
ついそう口走ってしまった。彼女はますます落ち込むばかりだった。
「悪かった。まぁ、僕、しばらくここにいるから一緒に考えようぜ。出ていくまでに、決める事。いいな?」
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