レスト:ランプ

昔懐かし怖いハナシ

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初めてのお客

お客様の

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 ある男の人がいた。陰ながら社会を支える仕事をしていた。とても優しく、温厚な人であったため、人から好かれていた。
 ある仕事帰りに、いつも通る道とは別の道を選んだ。こっちの道が近いからだ。いつも帰る頃には、少し小腹が空くぐらいになる時間帯になるのだが、家まで帰れば夕飯が食べられることもあり、店にはあまり立ち寄らない人だった。ただ、この時は違った。
 いつもは空き地であった場所に少し古い店があった。もちろんこの人にとって、見たことがない店であった。この時代、電気が普通なのに、明かりには、火が灯るランプが店を強調していた。中も、古い雑貨屋みたいに特別おしゃれではなかった。
 まっすぐ帰ろうと足先を変えた時、若くはない店の女主人らしき人が出てきた。
「今夜、ここで飯を食べていかないかい?」
たぶん、ぼったくられるだろう。そう、不安があった。
 ただ、自分では抑えられない冒険心が強く働いた。
 今日は食べて帰りたい。
 そう心を決め、店に入った。ドアのベルが心地よく鳴った。
 さあ、中に入ると思った通りの狭い空間が現れた。しかし、不思議と懐かしい気分になった。この雰囲気が、心を落ち着かせる。キッチンはオープンになっていて、その前にはカウンターがある。
 しかし男は、窓側のテーブル席に座った。お客は誰もいない。ジュークボックスが、古いポップな曲を奏でていた。
 テーブルにはメニュー表があり、そこには大きく、
「あなたの未来を教える料理。信じる方のみ、食べてもらいたい料理です。」
不思議な言葉が並んでいた。
 普段は神とか運命とか信じる人ではなかったこの男は、この時ばかりは信じようと思った。面白そうだったからだ。
 さっそくその料理を頼んだ。すぐに、女主人はスープ、パスタ、パンという洋食を持ってきた。
 シンプルなのに、どれも美味しそうな香りが漂い、食欲が自然と湧いてきた。
 男は、その料理を黙々と食べた。久しぶりに美味しい物を食べたと思う。ただ、スープは何か不思議だった。薄っすらと、「153」と数字が浮かんできたのだ。すぐに、女主人を呼び説明を促した。
「これはこれは。明日一日、この数字があなたを良い運命に導いてくれるでしょう。
 ただ、その次の日から、この数字には気をつけてください。」
 最初は、少し分からなかったが、信じる気持ちを持とうと思った。別に難しいことではなかったからだ。
 そのスープは、心が温まるものだった。
 しかし、最後のパンを食べてから、意識がなくなった。どうやら、寝てしまったらしい。気がついたのは、家のベッドの上だった。
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