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シャノワール・王妃様の相談所 :第一章 やせ細っていく婚約者
あの日の出来事
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イリスは占い師として挨拶した後、アンヌ嬢の向かい側に座り、タロットカードを出してアンヌ嬢に話しかけた。
「アンヌ様、どんなご相談でも大丈夫です。タロットで占って差し上げますわ。もちろん、話したくないことは話さなくてもいいのですよ」
アンヌ嬢はしばらく躊躇った後に聞いてきた。
「では、私と婚約者が結婚できるか占っていただけますか」
「ええ、では婚約者の方のことを教えてくださいますか。どんな方でしょうか」
「やさしくてハンサムで、髪の毛がさらさらしてきれいです。仕事もできて頼もしくって、私、彼の何もかもが大好きなんです」
「素敵な方なのですね」
「ええ、本当に素敵な人なんですよ」
「うらやましいわ」
「そう、友人達にも、よくうらやましがられました。他の人にとられないか、心配になってやきもちを焼いたり、デートの後、離れたくなくって門限ギリギリに帰宅して両親にお小言を言われたり」
アンヌ嬢はうれしそうな顔で微笑んでいる。その様子を見ながらタロットカードをテーブル上でかき混ぜ、一つにまとめた。
「幸せな婚約期間っていう様子ですね」
「そう、幸せでした」
「今は?幸せではないのですか?」
「幸せではありません」
タロットカードをアンヌ嬢の前に置き、3つに分けてから、もう一度1つに積み直してもらう。
「婚約者の方が心変わりされたかもしれないと、思っていらっしゃるんですか」
「いいえ、彼は変わっていません。結婚するつもりでいるようなんです」
「では、アンヌ様が結婚したくないのでしょうか」
「結婚できたらと思っています。でも、できないのです」
「なぜですか」
イリスは手慣れた手付きでカードを並べていく。アンヌ嬢は、ぼんやりとした目でイリスの手元とカードを見つめながら言った。
「私は彼にふさわしくないから」
「どんなところがでしょうか」
「資格を失ってしまったから」
来た! ここの質問が大切なのよね。あまりダイレクトに聞くと、拒絶されてしまうかもしれない。少しずらして聞いてみよう。
「それは、いつのことですか」
「1年前に伯爵領で大規模な土砂崩れが起こり、兄がその対応に領地に行っていたのです。
私の誕生日パーティー前に兄がこちらに戻り、パーティーが終わったら両親と交代することになっていました。それまでは普通の兄妹だったのに」
「そう、落雷の塔が出ているの。何か思いがけない重大なことが起こったのね。何があったか話してくれるかしら」
香の香りが少しきつくなった。たぶん量や成分を変えてきているのだろう。ケインがどこかで話を聞きながら調整しているようだ。
軽くぼんやりする感覚に襲われてはっとする。これ私達にも効いているのよね。気を引き締めて、引きずられないよう集中しないと危険?
「両親が誕生日の2日後に領地に立ったその夜に、兄が寝室にやってきたんです。
初めは小さい頃のような額へのお休みのキスだった。お兄様、もう子供じゃあないんですよ、と笑っていたんです。
『そう。子供じゃないね』
そう言って首筋にキスすると夜着に手を掛けて。驚いて固まっているうちに脱がされてしまい、慌てて突き飛ばしたんです」
一息ついて、下を向いて黙り込んだが、またしばらくすると、その先を話し始めた。
「もみ合う音に気が付いた侍女のマーサがドアをノックしたので、
『マーサ、来て』
と叫びました。マーサは部屋に入ると、私たちの様子を見て狼狽しながらも、兄に出ていって欲しいとお願いしました。
兄はマーサを殴り、お前が出ていけ。さもないと、屋敷から追い出すと言いました。お前が屋敷を追い出されたら、明日の朝、アンヌの面倒を見る者がいないがな、と脅したのです。マーサは黙って出ていきました」
「アンヌ様、どんなご相談でも大丈夫です。タロットで占って差し上げますわ。もちろん、話したくないことは話さなくてもいいのですよ」
アンヌ嬢はしばらく躊躇った後に聞いてきた。
「では、私と婚約者が結婚できるか占っていただけますか」
「ええ、では婚約者の方のことを教えてくださいますか。どんな方でしょうか」
「やさしくてハンサムで、髪の毛がさらさらしてきれいです。仕事もできて頼もしくって、私、彼の何もかもが大好きなんです」
「素敵な方なのですね」
「ええ、本当に素敵な人なんですよ」
「うらやましいわ」
「そう、友人達にも、よくうらやましがられました。他の人にとられないか、心配になってやきもちを焼いたり、デートの後、離れたくなくって門限ギリギリに帰宅して両親にお小言を言われたり」
アンヌ嬢はうれしそうな顔で微笑んでいる。その様子を見ながらタロットカードをテーブル上でかき混ぜ、一つにまとめた。
「幸せな婚約期間っていう様子ですね」
「そう、幸せでした」
「今は?幸せではないのですか?」
「幸せではありません」
タロットカードをアンヌ嬢の前に置き、3つに分けてから、もう一度1つに積み直してもらう。
「婚約者の方が心変わりされたかもしれないと、思っていらっしゃるんですか」
「いいえ、彼は変わっていません。結婚するつもりでいるようなんです」
「では、アンヌ様が結婚したくないのでしょうか」
「結婚できたらと思っています。でも、できないのです」
「なぜですか」
イリスは手慣れた手付きでカードを並べていく。アンヌ嬢は、ぼんやりとした目でイリスの手元とカードを見つめながら言った。
「私は彼にふさわしくないから」
「どんなところがでしょうか」
「資格を失ってしまったから」
来た! ここの質問が大切なのよね。あまりダイレクトに聞くと、拒絶されてしまうかもしれない。少しずらして聞いてみよう。
「それは、いつのことですか」
「1年前に伯爵領で大規模な土砂崩れが起こり、兄がその対応に領地に行っていたのです。
私の誕生日パーティー前に兄がこちらに戻り、パーティーが終わったら両親と交代することになっていました。それまでは普通の兄妹だったのに」
「そう、落雷の塔が出ているの。何か思いがけない重大なことが起こったのね。何があったか話してくれるかしら」
香の香りが少しきつくなった。たぶん量や成分を変えてきているのだろう。ケインがどこかで話を聞きながら調整しているようだ。
軽くぼんやりする感覚に襲われてはっとする。これ私達にも効いているのよね。気を引き締めて、引きずられないよう集中しないと危険?
「両親が誕生日の2日後に領地に立ったその夜に、兄が寝室にやってきたんです。
初めは小さい頃のような額へのお休みのキスだった。お兄様、もう子供じゃあないんですよ、と笑っていたんです。
『そう。子供じゃないね』
そう言って首筋にキスすると夜着に手を掛けて。驚いて固まっているうちに脱がされてしまい、慌てて突き飛ばしたんです」
一息ついて、下を向いて黙り込んだが、またしばらくすると、その先を話し始めた。
「もみ合う音に気が付いた侍女のマーサがドアをノックしたので、
『マーサ、来て』
と叫びました。マーサは部屋に入ると、私たちの様子を見て狼狽しながらも、兄に出ていって欲しいとお願いしました。
兄はマーサを殴り、お前が出ていけ。さもないと、屋敷から追い出すと言いました。お前が屋敷を追い出されたら、明日の朝、アンヌの面倒を見る者がいないがな、と脅したのです。マーサは黙って出ていきました」
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