4 / 64
第一章 突然の出来事
追って来た二人
しおりを挟む
「ロイ様、リディア様をもみくちゃにしないでください。ただでさえ、疲れているのに」
マリーがロイを止めてくれた。マリーはロイに、あまり遠慮がない。リディア付きの侍女なので、ロイの事も小さい時から知っているのだ。
「それは、私の方が聞きたいのだけど。まずは、あなた方は、なぜここに居るの?」
「ユーリ殿下から、君がシリカ修道院に送られたと聞いて、慌てて追って来たのさ。こんな急な処分なんてありえないよ」
そう言われても、実際にそうなっているのだから仕方ない。相変わらずロイは感情的ね、と幼馴染の腕に手を置いた。
「まあ、座って頂戴。私も聞きたいことが山程あるのよ」
ロイと、後ろで黙って立っているトーマス様に、敷物の上に座るよう勧めた。
二人は行儀よく、敷物の端の方に遠慮がちに座った。しかし市場で買って来た、鶏の丸焼きやパンやチーズなどを、マリーが手際よく皿に盛って渡すと、二人共お腹が空いていたようで、すごい勢いで食べ始めた。
二人が一息ついたところを見計らって、事情を聞いてみた。
「私が修道院送りになったこと、いつ聞いたの?」
「今朝、君の事が気になって、早くに王宮に出掛けたんだ。それで、ユーリ殿下に会いに行った。すると殿下はまだ寝ていて、侍従が言うには、朝早くに一度出かけたから、二度寝していると言うんだ」
「まあ、そうね。そちらに居る隊長と一緒に、朝早くに私の所まで来たもの」
ロイが隊長を睨み付けてから、続けた。
「それで、彼が起きるまで待ったのさ。その間にトーマスもやって来た。起きて来たユーリ殿下に、君がどこに居るのか聞いたら、もうここにはいない、修道院に送ったって言うんだ。心臓が家出しそうになったよ」
「相変わらず、大げさね」
「大げさじゃないよ。昨夜のパーティー会場から護衛達に連れて行かれたっきり、君がどうなったのかわからなかったんだ。殿下は、しかるべき場所に押し込めていると説明しただけで、誰にも君の居場所を教えなかった」
「ねえ、パーティーはどうなったの?」
「あの後、何事もなかったようにパーティーが行われたよ。その間、誰も君の事を殿下に聞けなかった。なにせ、とてもご機嫌で夜会を楽しんでいる様子で、聞ける雰囲気ではなかったからね。一応王子だから、扱いは慎重にしないと危険だ」
まあ、ロイもかなりあからさまな物言いをするのね。
「マリーもロイも、揃ってユーリ様に対して言葉が過ぎない? 抑えないとだめよ」
「いつもこうだろ。今更何を言っているんだよ」
ロイに言われて驚いた。そうだったかしら、と考えてみると、そうだったかもしれない。
「君の事だから、どうせユーリ殿下の悪口は、耳から耳に抜けていたんだろうな。誰もがあんなに、あの王子は辞めておけと言ったのに、全く聞きやしないんだから」
私は思いがけない言葉に首を傾げた。そんなことは……言われていたわね。気にしていなかったけど、今思うとみんなの言うことの方が正しかったようだ。
そう思ったら、また失恋したことを思いだしてしまった。
「ロイ、私、失恋したの。君なんか大嫌いで、顔も見たくなかったんだって言われたの。王から婚約解消の承諾を得たから、自分の目に入らない場所に追い払うって」
そう言った途端に、離れた所に居た兵たちは、一斉にがさがさと寝支度をして横たわり、寝たふりをし始めた。
さすが伊達に王宮務めではないわ。王家の内輪の話など、聞いてしまったら、ろくな事にならないのを、良く知っているようだ。
「ちょっと待って、リディア嬢。婚約解消ってどういうことなんだ? そんな話は、聞いていないが」
静かに聞いていたトーマス様が、突然ロイの後ろから身を乗り出してきた。目を見開いている。よっぽど驚いたのだろうけど、いつも冷静な彼の驚きように、こっちの方が驚いた。
「ユーリ様から今朝聞きました。内々の話で、まだ公にされていないそうです。私も初耳でしたから、誰も知らないと思います」
「本当に?」
私は寝た振りを続ける隊長に声を掛けた。
「隊長は一緒に聞いたわよね。他の兵の皆さんは寝たままでいいけど、あなたは直接聞いたのだから、今更知らん顔しても無駄よ。こっちに来てちょうだい」
隊長は起き上がり、渋々やってくると、リディアの言葉が事実であると答えた。ロイ達に促され、今朝のやり取りを話すに従って、隊長は辛そうな様子になっていった。
「私は王子に命令されたら従うしかありません。多少……いえ、かなりおかしいと思ってもです」
ロイとトーマス様は、強行軍でなるべく早く、修道院に送り届けるよう命じられたことも、旅の間に便宜をはかってはいけないという命令の事も、黙って聞いていた。
しかし私が薄い紙包みを開いて、与えられた食料の実物を見せると、本気で怒りだした。
「この透けたハムはなんだ。この極限まで薄いパンは! 何を考えているんだ」
「いやがらせですよ。根性曲がってますよね」
声を上げたロイに、マリーが答えた。目が吊り上がっているわよ、怖いわマリー。
「お嬢様が機転を効かせて、ピアスを換金しなかったら、今もひもじいままだったはずです」
ロイがずいっと、寄って来た。
「リディア、帰ろう。こんな仕打ちはあってはならない。従う必要なんてないよ」
「それは駄目よ。だって王子殿下の命令よ。従わなければ、不敬罪どころではなくなるわ。だからこのまま修道院に向かいます。そして、後のことはお父様にお任せするわ」
父は数日前から、外交団の一員として、隣国のメルリック王国に行っている。絹織物の流通について、我が国に有利な条件をもぎ取って来る、と鼻息も荒く出掛けて行った。帰国するのは一週間ほど後の予定だ。
そう言えば、夜会の前日にクックの運んで来た手紙には、帰国したら卒業パーティーの様子を詳しく聞かせてくれ、と書かれていたのだった。
詳しく話したら、お父様の血管が切れるかもしれない。
「お父様が黙っているはずがないのよ。皆様もよくおわかりでしょう。もしかしたら、隊長はご存じないかしら」
「伯爵様がリディア嬢を、非常に大切に思われていると、耳にしたことがあります。それですと、私はどちらに従っても、明日が無いのでは......」
「大丈夫よ。父には私が取りなすわ。だから、この先の旅はよろしくね」
そう明るく言うと、隊長は喜んで従うと約束してくれたので、隊長を解放して、タヌキ寝入りに戻ってもらった。その時、本当に寝てしまったほうがいいと思うわ、と付け加えて、ウイスキーをもう一本手渡した。
そしてロイとトーマス様に向かいなおした。
「お二人にぜひ聞きたいことがもう一つあるの。昨夜の夜会のあれは何? あなた方はどう説明されて壇上に立っていたの?」
マリーがロイを止めてくれた。マリーはロイに、あまり遠慮がない。リディア付きの侍女なので、ロイの事も小さい時から知っているのだ。
「それは、私の方が聞きたいのだけど。まずは、あなた方は、なぜここに居るの?」
「ユーリ殿下から、君がシリカ修道院に送られたと聞いて、慌てて追って来たのさ。こんな急な処分なんてありえないよ」
そう言われても、実際にそうなっているのだから仕方ない。相変わらずロイは感情的ね、と幼馴染の腕に手を置いた。
「まあ、座って頂戴。私も聞きたいことが山程あるのよ」
ロイと、後ろで黙って立っているトーマス様に、敷物の上に座るよう勧めた。
二人は行儀よく、敷物の端の方に遠慮がちに座った。しかし市場で買って来た、鶏の丸焼きやパンやチーズなどを、マリーが手際よく皿に盛って渡すと、二人共お腹が空いていたようで、すごい勢いで食べ始めた。
二人が一息ついたところを見計らって、事情を聞いてみた。
「私が修道院送りになったこと、いつ聞いたの?」
「今朝、君の事が気になって、早くに王宮に出掛けたんだ。それで、ユーリ殿下に会いに行った。すると殿下はまだ寝ていて、侍従が言うには、朝早くに一度出かけたから、二度寝していると言うんだ」
「まあ、そうね。そちらに居る隊長と一緒に、朝早くに私の所まで来たもの」
ロイが隊長を睨み付けてから、続けた。
「それで、彼が起きるまで待ったのさ。その間にトーマスもやって来た。起きて来たユーリ殿下に、君がどこに居るのか聞いたら、もうここにはいない、修道院に送ったって言うんだ。心臓が家出しそうになったよ」
「相変わらず、大げさね」
「大げさじゃないよ。昨夜のパーティー会場から護衛達に連れて行かれたっきり、君がどうなったのかわからなかったんだ。殿下は、しかるべき場所に押し込めていると説明しただけで、誰にも君の居場所を教えなかった」
「ねえ、パーティーはどうなったの?」
「あの後、何事もなかったようにパーティーが行われたよ。その間、誰も君の事を殿下に聞けなかった。なにせ、とてもご機嫌で夜会を楽しんでいる様子で、聞ける雰囲気ではなかったからね。一応王子だから、扱いは慎重にしないと危険だ」
まあ、ロイもかなりあからさまな物言いをするのね。
「マリーもロイも、揃ってユーリ様に対して言葉が過ぎない? 抑えないとだめよ」
「いつもこうだろ。今更何を言っているんだよ」
ロイに言われて驚いた。そうだったかしら、と考えてみると、そうだったかもしれない。
「君の事だから、どうせユーリ殿下の悪口は、耳から耳に抜けていたんだろうな。誰もがあんなに、あの王子は辞めておけと言ったのに、全く聞きやしないんだから」
私は思いがけない言葉に首を傾げた。そんなことは……言われていたわね。気にしていなかったけど、今思うとみんなの言うことの方が正しかったようだ。
そう思ったら、また失恋したことを思いだしてしまった。
「ロイ、私、失恋したの。君なんか大嫌いで、顔も見たくなかったんだって言われたの。王から婚約解消の承諾を得たから、自分の目に入らない場所に追い払うって」
そう言った途端に、離れた所に居た兵たちは、一斉にがさがさと寝支度をして横たわり、寝たふりをし始めた。
さすが伊達に王宮務めではないわ。王家の内輪の話など、聞いてしまったら、ろくな事にならないのを、良く知っているようだ。
「ちょっと待って、リディア嬢。婚約解消ってどういうことなんだ? そんな話は、聞いていないが」
静かに聞いていたトーマス様が、突然ロイの後ろから身を乗り出してきた。目を見開いている。よっぽど驚いたのだろうけど、いつも冷静な彼の驚きように、こっちの方が驚いた。
「ユーリ様から今朝聞きました。内々の話で、まだ公にされていないそうです。私も初耳でしたから、誰も知らないと思います」
「本当に?」
私は寝た振りを続ける隊長に声を掛けた。
「隊長は一緒に聞いたわよね。他の兵の皆さんは寝たままでいいけど、あなたは直接聞いたのだから、今更知らん顔しても無駄よ。こっちに来てちょうだい」
隊長は起き上がり、渋々やってくると、リディアの言葉が事実であると答えた。ロイ達に促され、今朝のやり取りを話すに従って、隊長は辛そうな様子になっていった。
「私は王子に命令されたら従うしかありません。多少……いえ、かなりおかしいと思ってもです」
ロイとトーマス様は、強行軍でなるべく早く、修道院に送り届けるよう命じられたことも、旅の間に便宜をはかってはいけないという命令の事も、黙って聞いていた。
しかし私が薄い紙包みを開いて、与えられた食料の実物を見せると、本気で怒りだした。
「この透けたハムはなんだ。この極限まで薄いパンは! 何を考えているんだ」
「いやがらせですよ。根性曲がってますよね」
声を上げたロイに、マリーが答えた。目が吊り上がっているわよ、怖いわマリー。
「お嬢様が機転を効かせて、ピアスを換金しなかったら、今もひもじいままだったはずです」
ロイがずいっと、寄って来た。
「リディア、帰ろう。こんな仕打ちはあってはならない。従う必要なんてないよ」
「それは駄目よ。だって王子殿下の命令よ。従わなければ、不敬罪どころではなくなるわ。だからこのまま修道院に向かいます。そして、後のことはお父様にお任せするわ」
父は数日前から、外交団の一員として、隣国のメルリック王国に行っている。絹織物の流通について、我が国に有利な条件をもぎ取って来る、と鼻息も荒く出掛けて行った。帰国するのは一週間ほど後の予定だ。
そう言えば、夜会の前日にクックの運んで来た手紙には、帰国したら卒業パーティーの様子を詳しく聞かせてくれ、と書かれていたのだった。
詳しく話したら、お父様の血管が切れるかもしれない。
「お父様が黙っているはずがないのよ。皆様もよくおわかりでしょう。もしかしたら、隊長はご存じないかしら」
「伯爵様がリディア嬢を、非常に大切に思われていると、耳にしたことがあります。それですと、私はどちらに従っても、明日が無いのでは......」
「大丈夫よ。父には私が取りなすわ。だから、この先の旅はよろしくね」
そう明るく言うと、隊長は喜んで従うと約束してくれたので、隊長を解放して、タヌキ寝入りに戻ってもらった。その時、本当に寝てしまったほうがいいと思うわ、と付け加えて、ウイスキーをもう一本手渡した。
そしてロイとトーマス様に向かいなおした。
「お二人にぜひ聞きたいことがもう一つあるの。昨夜の夜会のあれは何? あなた方はどう説明されて壇上に立っていたの?」
128
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気
ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。
夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。
猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。
それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。
「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」
勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています
綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」
公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。
「お前のような真面目くさった女はいらない!」
ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。
リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。
夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。
心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。
禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。
望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。
仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。
しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。
これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる