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第二章 キースの寄宿学校生活
入学式と王子様
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入学式の日、真新しい制服を着込み、それなりに胸を躍らせて学園に向かった。
そんな僕を迎えたのは、ちらちらとこちらを見る好奇の目だった。何も知らなかったとしても、この目線を好意の目だと間違えることは無いと思う。
擬音を付けたら、ふう~ん、という感じだろうか。
セリフを付けるとしたら、『あら、あの子がそうね。まあ、アトレー様にそっくり』
やっぱり気分が悪い。僕は、こっちを見ている新入生の親達に向け、皆が良くきゃ~っと叫ぶ、最高の作り笑顔を向けてやった。どきっとしているのを、ざまあみろと思って鼻で笑う。
伊達に顔がいいわけでは無いのだ。褒められ歴11年。美貌の利点はよく知っている。
祖父母は目を剥いているが、そんな二人に、僕は本物の笑顔を向ける。
「教えていただいた事をちゃんと生かして、ここで上手にやっていくよう頑張るよ。だから心配しないでね」
「お前は、大きく、そして強くなったんだね。私達はうれしいよ」
「うん。友達もできれば作りたいんだ。できればいいな、と思っている」
端っこのほうでそんな話をしていると、どよめきが聞こえ、人垣が割れた。其処にキラキラした少年がいた。薄い金色の柔らかそうな髪と、濃いブルーの瞳の美少年だ。
後ろに立つ男女は王太子殿下夫妻だった。王子は妃殿下とよく似ている。
さすがに、ロイヤルファミリーだ。存在感が違う。
周りを見回していた王太子殿下が、ふとこちらを見て、立ち止まってしまった。
こっちを向いて立ち止まるのは、やめて欲しい。あまり目立ちたくない僕を、晒したいのかな、と思ってしまう。
あっちがこちらを見るのなら、こっちは背を向けて、気が付かない振りでやり過ごそうと思った。
同じく動揺している祖父母と、話している振りをしながら、三人でそれとなく位置を移動しつつ、この場を離れようとした。
それなのに、なぜ、王子がこっちに来るんだ!
来るな~と思いながら、少し速足で横歩きしていたら、袖を引かれた。こいつ、何をしやがる、といつになく乱暴な言葉を頭の中で吐いてしまう。
「ねえ君、きれいな顔しているね。僕こんなにきれいな男の子初めて見たよ。名前は何ていうの?」
祖父に助けを求めると、祖父は目を瞑って、首を振った。
ここは、名乗らないわけにもいかない。しかし親は何をしているんだ。こいつ早く連れて行けよ。
「初めまして。キース・ゲートと申します」
礼儀正しくご挨拶し、一歩後ろに下がった。わかったら、さっさと行ってしまってくれ。
「僕はジョン・レクターだよ。よろしく」
誰だって知ってるよ、王子様、と思いつつ頭を下げていた。
しばらくしてから頭を上げたら、まだ目の前に立っている。なんなんだろう、こいつ。
祖父母も困惑している様子だ。じゃあ、王太子夫妻はと見ると、少し離れた所で何とも言えない顔をしてこちらを見ていた。
面倒なので、にっこりと笑って、では、あちらで手続きをしなくてはならないので、失礼いたしますと言って、スーッと逃げた。
「お祖父様、あれなんですか。嫌味にも思えないし、もしかして何も知らされていない純粋培養お坊ちゃまってやつですか?」
「お前、それは不敬だよ。公の場での言葉はきれいにな」
ふーっと二人で息を吐いた。びっくりした。お友達が欲しいとは言ったが、王子様はいらないよ。
まあ、今後かかわることも無いだろうから、今の事は忘れる事にした。
入学式が何とか終わり、寮に新入生が連れていかれ、部屋割りが告げられた。
僕の部屋は一年生の三人部屋で、同室になるのは子爵家の子息二人だった。
妥当なところだな、と思った。やりやすそうで助かる。
夜になってから、三人で一緒に夕食に出掛けた。寮の食堂は夜の6時から8時まで空いているので、その間なら何時でも使える。
初日だし、今日はウエルカムディナーで、いつもより豪華な夕食らしい。
なんとなくはしゃぎながら、三人で食事を始めた。
初めてなので、ちょっとかしこまってしまう。その緊張感も楽しくって、クスクス笑いながら、そして周囲の人達の様子を興味深く観察しながら、そこそこの味の料理を食べていた。
あちこちで2,3人ずつのグループが食事をしている。上級生のグループもいて、彼らは物慣れていて、すごく大人びて見える。
そこにタイミング悪くも、ジョン王子が数人の一年生と一緒にやって来た。
げーっ来るなよ、と思いながらすぐに目線を外し、なりを潜めて食事を続けた。
ああ、来ちゃったか。
来そうな気がしたんだよね、こいつ。
なんだか、僕に興味がありそうなんだもの。それがどういう興味なのか、わからないのが問題なのだけど。
「やあ、今晩は。また会ったね。ここに座ってもいいかな」
本音では、全力で嫌だと言いたかったが、公の場ではきれいな言葉、ね。
カタンと椅子を静かに引き、立ち上がった。
「残念ながら、もう食べ終わって、部屋に戻ろうと思っていたのです」
あ、まだ三分の一は残っているなあ。ちょこっとだけ強引だったか?
他の二人も、座ったまま固まっている。
ごめんね。お先に失礼します。
そんな僕を迎えたのは、ちらちらとこちらを見る好奇の目だった。何も知らなかったとしても、この目線を好意の目だと間違えることは無いと思う。
擬音を付けたら、ふう~ん、という感じだろうか。
セリフを付けるとしたら、『あら、あの子がそうね。まあ、アトレー様にそっくり』
やっぱり気分が悪い。僕は、こっちを見ている新入生の親達に向け、皆が良くきゃ~っと叫ぶ、最高の作り笑顔を向けてやった。どきっとしているのを、ざまあみろと思って鼻で笑う。
伊達に顔がいいわけでは無いのだ。褒められ歴11年。美貌の利点はよく知っている。
祖父母は目を剥いているが、そんな二人に、僕は本物の笑顔を向ける。
「教えていただいた事をちゃんと生かして、ここで上手にやっていくよう頑張るよ。だから心配しないでね」
「お前は、大きく、そして強くなったんだね。私達はうれしいよ」
「うん。友達もできれば作りたいんだ。できればいいな、と思っている」
端っこのほうでそんな話をしていると、どよめきが聞こえ、人垣が割れた。其処にキラキラした少年がいた。薄い金色の柔らかそうな髪と、濃いブルーの瞳の美少年だ。
後ろに立つ男女は王太子殿下夫妻だった。王子は妃殿下とよく似ている。
さすがに、ロイヤルファミリーだ。存在感が違う。
周りを見回していた王太子殿下が、ふとこちらを見て、立ち止まってしまった。
こっちを向いて立ち止まるのは、やめて欲しい。あまり目立ちたくない僕を、晒したいのかな、と思ってしまう。
あっちがこちらを見るのなら、こっちは背を向けて、気が付かない振りでやり過ごそうと思った。
同じく動揺している祖父母と、話している振りをしながら、三人でそれとなく位置を移動しつつ、この場を離れようとした。
それなのに、なぜ、王子がこっちに来るんだ!
来るな~と思いながら、少し速足で横歩きしていたら、袖を引かれた。こいつ、何をしやがる、といつになく乱暴な言葉を頭の中で吐いてしまう。
「ねえ君、きれいな顔しているね。僕こんなにきれいな男の子初めて見たよ。名前は何ていうの?」
祖父に助けを求めると、祖父は目を瞑って、首を振った。
ここは、名乗らないわけにもいかない。しかし親は何をしているんだ。こいつ早く連れて行けよ。
「初めまして。キース・ゲートと申します」
礼儀正しくご挨拶し、一歩後ろに下がった。わかったら、さっさと行ってしまってくれ。
「僕はジョン・レクターだよ。よろしく」
誰だって知ってるよ、王子様、と思いつつ頭を下げていた。
しばらくしてから頭を上げたら、まだ目の前に立っている。なんなんだろう、こいつ。
祖父母も困惑している様子だ。じゃあ、王太子夫妻はと見ると、少し離れた所で何とも言えない顔をしてこちらを見ていた。
面倒なので、にっこりと笑って、では、あちらで手続きをしなくてはならないので、失礼いたしますと言って、スーッと逃げた。
「お祖父様、あれなんですか。嫌味にも思えないし、もしかして何も知らされていない純粋培養お坊ちゃまってやつですか?」
「お前、それは不敬だよ。公の場での言葉はきれいにな」
ふーっと二人で息を吐いた。びっくりした。お友達が欲しいとは言ったが、王子様はいらないよ。
まあ、今後かかわることも無いだろうから、今の事は忘れる事にした。
入学式が何とか終わり、寮に新入生が連れていかれ、部屋割りが告げられた。
僕の部屋は一年生の三人部屋で、同室になるのは子爵家の子息二人だった。
妥当なところだな、と思った。やりやすそうで助かる。
夜になってから、三人で一緒に夕食に出掛けた。寮の食堂は夜の6時から8時まで空いているので、その間なら何時でも使える。
初日だし、今日はウエルカムディナーで、いつもより豪華な夕食らしい。
なんとなくはしゃぎながら、三人で食事を始めた。
初めてなので、ちょっとかしこまってしまう。その緊張感も楽しくって、クスクス笑いながら、そして周囲の人達の様子を興味深く観察しながら、そこそこの味の料理を食べていた。
あちこちで2,3人ずつのグループが食事をしている。上級生のグループもいて、彼らは物慣れていて、すごく大人びて見える。
そこにタイミング悪くも、ジョン王子が数人の一年生と一緒にやって来た。
げーっ来るなよ、と思いながらすぐに目線を外し、なりを潜めて食事を続けた。
ああ、来ちゃったか。
来そうな気がしたんだよね、こいつ。
なんだか、僕に興味がありそうなんだもの。それがどういう興味なのか、わからないのが問題なのだけど。
「やあ、今晩は。また会ったね。ここに座ってもいいかな」
本音では、全力で嫌だと言いたかったが、公の場ではきれいな言葉、ね。
カタンと椅子を静かに引き、立ち上がった。
「残念ながら、もう食べ終わって、部屋に戻ろうと思っていたのです」
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ごめんね。お先に失礼します。
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