45 / 56
第四章 マックスの学園生活
初めての運動会
しおりを挟む
体育祭の日は晴天だったので、観覧席も満員になっていた。
生徒達も張り切っていて興奮気味だ。
演目は午前中が綱引きと、騎馬戦、リレー、借り物競走、障害物競走、午後が馬術競技で三時頃には終る。
寮単位の対抗戦で、三つに分かれて勝敗を争う。
僕は脚が速いので、リレーの選手に選ばれた。他には騎馬戦と馬術競技に出る。
ここは都会なので、馬に乗り慣れているのは、もう少し年上の生徒たちで、三年生からの出場は珍しいらしい。
領地で育った僕には馬は身近なものだったが、大きい馬に乗り始めたのは、十一歳からのことだった。
キースも出場すると言っていたが、馬に乗り始めたのは、十二歳くらいからだそうなので、僕のほうが有利だ。
馬術競技では無理だが、騎馬戦では彼と戦えそうだ。それが楽しみで、ワクワクしている。
公式にケンカが出来るわけだもの、力比べが出来る。王女様の見ている前で落馬させるのもいいかも。
競技は一年生と二年生の混合リレーで始まった。
応援合戦も声援も派手だった。一族郎党を連れた親達が、メガホンを持って大騒ぎしている。
結果は僕の属するイースト寮が一番。サウス寮が二番、キースのいるウエスト寮が三番だった。
俄然、周囲の生徒たちが盛り上がり始め、帰って来た選手を拍手で迎えている。
次の競技は障害物競走だ。
これは全学年から参加する。運動が苦手な人が参加するせいか、モタモタしていて笑える。これは、笑いを取るための競技だな。思いっきり笑わせてもらった。
同室のマーキスがこれに出ていて、麻袋を腰まで引っ張り上げて走るとき、前にビタンと転んだ。顎を擦りむいたようだ。
やれやれだ。
ゴールした彼に、救護班が駆け寄って、負傷者テントに引っ張って行った。
かっこ悪い奴だ。
次は三年から四年生のリレーだ。ようやく出番が回って来た。
走る順番は、あらかじめ決めてある。
僕のチームは、最初と最後に四年生の特に早い選手が走り、それ以外は三年と四年が順番に走るよう、くじ引きで決めた。
僕は四番目だ。
キースは、と探すと、アイツ!
先頭走者としてトラックに並んでいた。
他の二チームは四年生なのに!
すでに観客席から歓声が上がっている。
ハッピーと呼ぶのが結構聞こえる。
先頭の走者は目立つものさ。女の声がうるさいが、こっちの走者は速いのだ。この歓声の中で赤っ恥をかいてしまえ、と思っているうちにスタートが切られた。
速い。なんだ、あいつめちゃくちゃ速いじゃないか。
コースの途中でスタミナ切れし始めたのか、少しスピードが落ち、同着1位でバトンを渡した。相手は4年生だった。
やられた。どんどん差が開いていく。
他二チームは3年生だ。
四番の僕にバトンが渡った時には、こっちのチームはだいぶ離されてのビリだった。
頑張って差を縮めたけど、これでは全く目立てない。くたびれもうけというものだ。
結果は、がっかりな三位に終わり、皆でしょんぼりと座席に戻った。
チームが温かく迎えてくれて、この仕返しは、借物競走で返す、というリーダーの叫びに、皆と一緒にオーッと叫んだ。
借物競走は運だよね。
運ならハッピーが最強だな。という声が、どこからか聞こえた。え、それも出るの?
出ている。横に座っている奴に聞いてみた。
「なあ、これ幾つ出てもいいの?」
「うん。出たいのに立候補するんだ」
出る気はなかったけど、またアイツが目立つのはムカつくな。
嫌な予感がする。また格好良く目立ちそうな。
スタートと同時に、キースが先頭を切って飛び出した。箱から出した紙を広げ、読んでいる。
周囲の応援の声が凄い。
「お姫様の人形か、お姫様にちなんだ物を持っている人いますか?」
観客席に向かって走りながら、キースが叫んでいる。
女の子がぴょんっと立ち上がり、良く通る高い声で叫んだ。
「はい、はい。私、お姫様です」
えー、本物のお姫様、有りですか?
特設テントの貴賓席から女の子が走り出ようとする。
キースが駆け寄り、断っている? 雰囲気だ。
王妃様が、行っていらっしゃい、というようなジェスチャーをすると、キースが恭しくお姫様の手を取って一緒に走り始めた。
拍手の中を二人で走り、見事一等賞を勝ち取った。
他の選手は探し物に苦労している。かつらを引いた奴は、かつら着用者に声をかけることもできず諦めていた。同チームの奴だった。
もう一人はサーベル、もう一人はプードルだった。うちのチームは運に見放されている。
他の出場者は花の刺繍のハンカチ、黒いネクタイ、白い帽子、赤い靴などの比較的ありそうなものだったので、次々にゴールしていった。
借物競争は進み、イースト寮は何とか二位を勝ち取った。
選手が待機する場所に、キースがスツールを運んできて王女を座らせ、話し相手になっている。確かに王女は他の者には目もくれず、キースを見つめていた。
すごくきれいな女の子だ。そしてキースとはお似合い。それなら僕でも同じことなのだ。
結果が発表されて、バラバラと選手たちが席に戻ると、次は高学年のリレーで、
騎馬戦の次に盛り上がる競技だ。
会場の熱気が盛り上がって来る。
声援の仲、選手がトラックの中に集まっていく。
その中を逆の方向へ、キースが王女様の手を取ってエスコートしていく。
まるで王と王妃を騎士が取り巻いているように見えた。それだけ二人は存在感が別格だった。
僕の周囲も観客席も、何の反応も見せないのは慣れているのだろうか。当たり前な事のように見ている。
また横に座っている生徒にこっそり聞いてみた。
「キースと王女様がすごく親しげだけど、貴族達からの反発はないの?王女に取り入りたい家門も多いでしょ」
「ああ、そういうのはあるかもしれないけど、王女様がああだもの。何か言ったら嫌われてしまうよ。
それにまだ幼いし、キース自身はお守り役程度にしか考えていないからね」
「そんなものなんだ。緩いね」
「それに王女様の友人はキースの妹達なんだよ。妹たちと三人で飛びついて来るから、キースにとったら三人の妹、かな?
大変だよね。かわいそうに」
キースの妹と言えば、侯爵家の双子か。
まだ会ったことが無い。母が父を奪った相手の子供達だもの。従妹弟だけど、縁は薄い。
キースの側にいれば、その内顔を合わせることもあるだろう。
その時どんな対応をされるか分からない。あからさまに無視されるだろうか。
なにせ、ソフィ叔母は、今でもキースに関わっていないそうだ。
そこまで徹底しているなら、僕のことなんか、あからさまに避けて通りそうだ。
ぼんやりとリレーを眺めている内、もうアンカーにバトンが渡っていた。
次の騎馬戦の用意で、そろそろ厩舎に行かなくてはいけない。
競技に参加するのは三年生以上で、三、四年生は馬術部の持っている馬を、借りることになっている。
上級生は自分の馬を使うことが許可されているので、選手は馬を連れてきてもらっている。
早く行かないと良い馬が取られてしまう。周囲に断ってから、急いで厩舎に向かった。まだ良い馬が残っているのでホッとし、その中から一番立派な馬を選んで鞍を置いた。
軽く歩かせて調子を確かめる。いい感じだ。そのまま歩かせて、会場へと向かうと、やはりキースと間違える人が声をかけてくる。体操服だと、更に見分けがつかないと、よく言われる。
適当に返事をして、会場の自陣に停止させた。
自陣では、大将役の最上級生が待ち構えていて、上着と鉢巻を渡された。
メンバーがはっきり分かるようにチームカラーが分けられているそうで、イーストは赤色のものだ。
馬の前垂れも渡されたので、首に掛けた。赤地にイーストの紋章が描かれていてかっこいい。
一番小さいサイズのジャケットを受け取り、着てみたらぴったりだった。
鉢巻は、これまた派手な刺繍が施された広幅のもので、ジャケットとお揃いの赤色だ。眉の上くらいから額に巻いて、頭の後ろできつめに結ぶよう言われた。
間違っても、動いているうちに落としてはいけない。その場合も失格になるそうだ。そんなことになれば、まぬけと呼ばれるぞ、と脅された。
選手が揃ったところで、最終打ち合わせが始まった。あらかじめ打ち合わて戦法を決めていたので、調整程度だ。
だが馬を引き連れ、衣装を着込み、剣を手にしたメンバーで集まると、緊張感が全然違った。
生徒達も張り切っていて興奮気味だ。
演目は午前中が綱引きと、騎馬戦、リレー、借り物競走、障害物競走、午後が馬術競技で三時頃には終る。
寮単位の対抗戦で、三つに分かれて勝敗を争う。
僕は脚が速いので、リレーの選手に選ばれた。他には騎馬戦と馬術競技に出る。
ここは都会なので、馬に乗り慣れているのは、もう少し年上の生徒たちで、三年生からの出場は珍しいらしい。
領地で育った僕には馬は身近なものだったが、大きい馬に乗り始めたのは、十一歳からのことだった。
キースも出場すると言っていたが、馬に乗り始めたのは、十二歳くらいからだそうなので、僕のほうが有利だ。
馬術競技では無理だが、騎馬戦では彼と戦えそうだ。それが楽しみで、ワクワクしている。
公式にケンカが出来るわけだもの、力比べが出来る。王女様の見ている前で落馬させるのもいいかも。
競技は一年生と二年生の混合リレーで始まった。
応援合戦も声援も派手だった。一族郎党を連れた親達が、メガホンを持って大騒ぎしている。
結果は僕の属するイースト寮が一番。サウス寮が二番、キースのいるウエスト寮が三番だった。
俄然、周囲の生徒たちが盛り上がり始め、帰って来た選手を拍手で迎えている。
次の競技は障害物競走だ。
これは全学年から参加する。運動が苦手な人が参加するせいか、モタモタしていて笑える。これは、笑いを取るための競技だな。思いっきり笑わせてもらった。
同室のマーキスがこれに出ていて、麻袋を腰まで引っ張り上げて走るとき、前にビタンと転んだ。顎を擦りむいたようだ。
やれやれだ。
ゴールした彼に、救護班が駆け寄って、負傷者テントに引っ張って行った。
かっこ悪い奴だ。
次は三年から四年生のリレーだ。ようやく出番が回って来た。
走る順番は、あらかじめ決めてある。
僕のチームは、最初と最後に四年生の特に早い選手が走り、それ以外は三年と四年が順番に走るよう、くじ引きで決めた。
僕は四番目だ。
キースは、と探すと、アイツ!
先頭走者としてトラックに並んでいた。
他の二チームは四年生なのに!
すでに観客席から歓声が上がっている。
ハッピーと呼ぶのが結構聞こえる。
先頭の走者は目立つものさ。女の声がうるさいが、こっちの走者は速いのだ。この歓声の中で赤っ恥をかいてしまえ、と思っているうちにスタートが切られた。
速い。なんだ、あいつめちゃくちゃ速いじゃないか。
コースの途中でスタミナ切れし始めたのか、少しスピードが落ち、同着1位でバトンを渡した。相手は4年生だった。
やられた。どんどん差が開いていく。
他二チームは3年生だ。
四番の僕にバトンが渡った時には、こっちのチームはだいぶ離されてのビリだった。
頑張って差を縮めたけど、これでは全く目立てない。くたびれもうけというものだ。
結果は、がっかりな三位に終わり、皆でしょんぼりと座席に戻った。
チームが温かく迎えてくれて、この仕返しは、借物競走で返す、というリーダーの叫びに、皆と一緒にオーッと叫んだ。
借物競走は運だよね。
運ならハッピーが最強だな。という声が、どこからか聞こえた。え、それも出るの?
出ている。横に座っている奴に聞いてみた。
「なあ、これ幾つ出てもいいの?」
「うん。出たいのに立候補するんだ」
出る気はなかったけど、またアイツが目立つのはムカつくな。
嫌な予感がする。また格好良く目立ちそうな。
スタートと同時に、キースが先頭を切って飛び出した。箱から出した紙を広げ、読んでいる。
周囲の応援の声が凄い。
「お姫様の人形か、お姫様にちなんだ物を持っている人いますか?」
観客席に向かって走りながら、キースが叫んでいる。
女の子がぴょんっと立ち上がり、良く通る高い声で叫んだ。
「はい、はい。私、お姫様です」
えー、本物のお姫様、有りですか?
特設テントの貴賓席から女の子が走り出ようとする。
キースが駆け寄り、断っている? 雰囲気だ。
王妃様が、行っていらっしゃい、というようなジェスチャーをすると、キースが恭しくお姫様の手を取って一緒に走り始めた。
拍手の中を二人で走り、見事一等賞を勝ち取った。
他の選手は探し物に苦労している。かつらを引いた奴は、かつら着用者に声をかけることもできず諦めていた。同チームの奴だった。
もう一人はサーベル、もう一人はプードルだった。うちのチームは運に見放されている。
他の出場者は花の刺繍のハンカチ、黒いネクタイ、白い帽子、赤い靴などの比較的ありそうなものだったので、次々にゴールしていった。
借物競争は進み、イースト寮は何とか二位を勝ち取った。
選手が待機する場所に、キースがスツールを運んできて王女を座らせ、話し相手になっている。確かに王女は他の者には目もくれず、キースを見つめていた。
すごくきれいな女の子だ。そしてキースとはお似合い。それなら僕でも同じことなのだ。
結果が発表されて、バラバラと選手たちが席に戻ると、次は高学年のリレーで、
騎馬戦の次に盛り上がる競技だ。
会場の熱気が盛り上がって来る。
声援の仲、選手がトラックの中に集まっていく。
その中を逆の方向へ、キースが王女様の手を取ってエスコートしていく。
まるで王と王妃を騎士が取り巻いているように見えた。それだけ二人は存在感が別格だった。
僕の周囲も観客席も、何の反応も見せないのは慣れているのだろうか。当たり前な事のように見ている。
また横に座っている生徒にこっそり聞いてみた。
「キースと王女様がすごく親しげだけど、貴族達からの反発はないの?王女に取り入りたい家門も多いでしょ」
「ああ、そういうのはあるかもしれないけど、王女様がああだもの。何か言ったら嫌われてしまうよ。
それにまだ幼いし、キース自身はお守り役程度にしか考えていないからね」
「そんなものなんだ。緩いね」
「それに王女様の友人はキースの妹達なんだよ。妹たちと三人で飛びついて来るから、キースにとったら三人の妹、かな?
大変だよね。かわいそうに」
キースの妹と言えば、侯爵家の双子か。
まだ会ったことが無い。母が父を奪った相手の子供達だもの。従妹弟だけど、縁は薄い。
キースの側にいれば、その内顔を合わせることもあるだろう。
その時どんな対応をされるか分からない。あからさまに無視されるだろうか。
なにせ、ソフィ叔母は、今でもキースに関わっていないそうだ。
そこまで徹底しているなら、僕のことなんか、あからさまに避けて通りそうだ。
ぼんやりとリレーを眺めている内、もうアンカーにバトンが渡っていた。
次の騎馬戦の用意で、そろそろ厩舎に行かなくてはいけない。
競技に参加するのは三年生以上で、三、四年生は馬術部の持っている馬を、借りることになっている。
上級生は自分の馬を使うことが許可されているので、選手は馬を連れてきてもらっている。
早く行かないと良い馬が取られてしまう。周囲に断ってから、急いで厩舎に向かった。まだ良い馬が残っているのでホッとし、その中から一番立派な馬を選んで鞍を置いた。
軽く歩かせて調子を確かめる。いい感じだ。そのまま歩かせて、会場へと向かうと、やはりキースと間違える人が声をかけてくる。体操服だと、更に見分けがつかないと、よく言われる。
適当に返事をして、会場の自陣に停止させた。
自陣では、大将役の最上級生が待ち構えていて、上着と鉢巻を渡された。
メンバーがはっきり分かるようにチームカラーが分けられているそうで、イーストは赤色のものだ。
馬の前垂れも渡されたので、首に掛けた。赤地にイーストの紋章が描かれていてかっこいい。
一番小さいサイズのジャケットを受け取り、着てみたらぴったりだった。
鉢巻は、これまた派手な刺繍が施された広幅のもので、ジャケットとお揃いの赤色だ。眉の上くらいから額に巻いて、頭の後ろできつめに結ぶよう言われた。
間違っても、動いているうちに落としてはいけない。その場合も失格になるそうだ。そんなことになれば、まぬけと呼ばれるぞ、と脅された。
選手が揃ったところで、最終打ち合わせが始まった。あらかじめ打ち合わて戦法を決めていたので、調整程度だ。
だが馬を引き連れ、衣装を着込み、剣を手にしたメンバーで集まると、緊張感が全然違った。
1,919
あなたにおすすめの小説
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
いくつもの、最期の願い
しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。
夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。
そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。
メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。
死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる