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Chapter1
08 ニーナ(仮)
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みんなでテーブルについて、アルシュが淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。
足の生えたスマホは俺の湯飲みの周りでちょろちょろと歩き回っている。こいつのおかげでよくわからなかった状況がさらに意味不明になったけど、とりあえず仲間に信用してもらえてよかった。
ため息をついてスマホから視線を上げると、三人とも俺を見守っていた。そうだ説明しないと。
「えーと、なにから話したらいいのか……」
「どうかチョココロニー様のお心のままにお話しください」
あっ、まずはこれだな。名前について。
「その『チョココロニー』っていう呼び方なんだけど、変更してもらうことってできる?」
「もちろん、チョココロニー様のお望みであれば」
俺の言葉に、リュカはにこりと微笑む。
別にチョココロニーでもいいんだけどね。名前として呼ばれると間抜けすぎるっていうか。
「そしたらニーナって呼んでもらっていい? 友達にもそう呼ばれてるし、そっちの方が馴染みがあるから。様もつけなくていい」
あだ名っていうかほぼ本名なんだけど。名前を名乗っちゃいけないって言われてたけど、フルネームを名乗らなければよさそうな感じだし。
「わかりました、ニーナ」
「そんでニーナはなんで降臨することになったの?」
リュカの返事に少しかぶせ気味に、ハオシェンに尋ねられる。
「え~と、説明するとややこしいんだけど……」
とりあえず簡潔にまとめますと。
✲歩きながらスマホをいじってたらいつの間にかこっちの世界に来ていた。
✲理由はわからない。
✲この世界は俺がプレイしていたスマホゲーム「トリニティ・ファンタジア」の世界そのもので、みんなはそのゲームに登場するキャラクターです。
それだけ説明すると、みんな「なるほど」と頷いた。
「えっ!? 今ので納得した!?」
「俺には神様の世界のことはわかんねえけど、ニーナが俺らの世界に来てくれたのが嬉しいから俺はそれだけで十分って感じだな」
「そうですね、私も同じ思いです」
ハオシェンの言葉にリュカも同意する。アルシュも俺の湯飲みにお茶のおかわりを注ぎながら頷いた。
動じないなこの人たち。困らせるよりは全然いいけども。
「自分がゲームのキャラクターだっていうのは、どう思う?」
そう尋ねてみると、リュカは考え込むように顎のあたりに手を当て、小さく首をかしげた。
「ゲームというのは……現世の表象は神の遊戯、ということなのでしょうか」
「要するに、世界も俺たち人間も、神の為に作られた存在ってことだろ? それは別に当たり前っていうか、普通のことじゃん?」
なるほど、リュカたちにしたら衝撃の新事実ってわけでもないのか。
ゲームのキャラだとか深く考えずに話しちゃったけど、みんなショックを受けたりしなくてよかった。
「そうだよね、俺から見てもみんな普通の人間に見えるし」
俺がそう言うと、三人とも複雑そうな顔をして俺を見つめた。
「えっ? 俺、なんか変なこと言った?」
「いいえ、その、大変申し上げにくいのですが……」
リュカが言いよどむ。
「ニーナには角がない」
なんとなく気まずい雰囲気の中、今まで話の成り行きを見守っていたアルシュがずばりと俺に告げた。
言われてはっとする。確かに街にいた人たちにも、形は違えど角があった。フードをかぶっていた巡礼のローブ姿の人たちも多分そうなんだろう。羊っぽい家畜には一本だけだったけれど、額の中心に角が生えていた。リュカの愛馬のエクレールも角があったし、そういえば森で見たリス的な小動物にすら角が生えてたな……。
「えっ? ってことはもしかして、この世界で角がない生き物って俺だけ!?」
ついでっかい声を出すと、ハオシェンは手を頭の後ろで組んで、椅子を後ろに傾けた。
「ほんと言いにくいんだけど、角がないのは魔物か魔人だとばっかり思ってたんだわ」
「あ~。最初にハオシェンが俺のこと魔人って言ってたのはそれか……」
「そうそう。ゴメンね☆」
いや別にいいんだけど。仮にも神にむかってテヘペロ☆するんじゃあない。
思い返せば、リュカも最初俺を見た時に警戒してたような気がする。拠点に着くまでフードを被っていてほしいっていうお願いの理由もわかった。仲間の二人でさえ説得するのに苦労したのに、街の人たちに俺の頭を見られてたらやばかったな……。
――角が二本あるのが人間で、一本角は動物。角がないものは魔物か魔人。
もしかしたらオープニングとかチュートリアルでそんな説明があったかもしれない。読み飛ばさなければよかった。
えー。それで。仲間たちに信用してもらえたし。拠点は安全だし。一通り状況説明はしたし。俺に角がないことは仲間以外には秘密にしておかなきゃいけないということもわかったし。後はどうしたらいいか。どうしたらいいかというと。えーと。
ぐぅ~ぎゅるるるるる。
回らない頭のかわりに、盛大に腹が鳴った。
「……………………めっちゃ腹へった」
「では食堂へ行きましょう。ニーナのお口に合うとよいのですが」
リュカの提案に一も二もなく頷く。異世界メシ! すっごい興味あるんですけど!!!!
足の生えたスマホは俺の湯飲みの周りでちょろちょろと歩き回っている。こいつのおかげでよくわからなかった状況がさらに意味不明になったけど、とりあえず仲間に信用してもらえてよかった。
ため息をついてスマホから視線を上げると、三人とも俺を見守っていた。そうだ説明しないと。
「えーと、なにから話したらいいのか……」
「どうかチョココロニー様のお心のままにお話しください」
あっ、まずはこれだな。名前について。
「その『チョココロニー』っていう呼び方なんだけど、変更してもらうことってできる?」
「もちろん、チョココロニー様のお望みであれば」
俺の言葉に、リュカはにこりと微笑む。
別にチョココロニーでもいいんだけどね。名前として呼ばれると間抜けすぎるっていうか。
「そしたらニーナって呼んでもらっていい? 友達にもそう呼ばれてるし、そっちの方が馴染みがあるから。様もつけなくていい」
あだ名っていうかほぼ本名なんだけど。名前を名乗っちゃいけないって言われてたけど、フルネームを名乗らなければよさそうな感じだし。
「わかりました、ニーナ」
「そんでニーナはなんで降臨することになったの?」
リュカの返事に少しかぶせ気味に、ハオシェンに尋ねられる。
「え~と、説明するとややこしいんだけど……」
とりあえず簡潔にまとめますと。
✲歩きながらスマホをいじってたらいつの間にかこっちの世界に来ていた。
✲理由はわからない。
✲この世界は俺がプレイしていたスマホゲーム「トリニティ・ファンタジア」の世界そのもので、みんなはそのゲームに登場するキャラクターです。
それだけ説明すると、みんな「なるほど」と頷いた。
「えっ!? 今ので納得した!?」
「俺には神様の世界のことはわかんねえけど、ニーナが俺らの世界に来てくれたのが嬉しいから俺はそれだけで十分って感じだな」
「そうですね、私も同じ思いです」
ハオシェンの言葉にリュカも同意する。アルシュも俺の湯飲みにお茶のおかわりを注ぎながら頷いた。
動じないなこの人たち。困らせるよりは全然いいけども。
「自分がゲームのキャラクターだっていうのは、どう思う?」
そう尋ねてみると、リュカは考え込むように顎のあたりに手を当て、小さく首をかしげた。
「ゲームというのは……現世の表象は神の遊戯、ということなのでしょうか」
「要するに、世界も俺たち人間も、神の為に作られた存在ってことだろ? それは別に当たり前っていうか、普通のことじゃん?」
なるほど、リュカたちにしたら衝撃の新事実ってわけでもないのか。
ゲームのキャラだとか深く考えずに話しちゃったけど、みんなショックを受けたりしなくてよかった。
「そうだよね、俺から見てもみんな普通の人間に見えるし」
俺がそう言うと、三人とも複雑そうな顔をして俺を見つめた。
「えっ? 俺、なんか変なこと言った?」
「いいえ、その、大変申し上げにくいのですが……」
リュカが言いよどむ。
「ニーナには角がない」
なんとなく気まずい雰囲気の中、今まで話の成り行きを見守っていたアルシュがずばりと俺に告げた。
言われてはっとする。確かに街にいた人たちにも、形は違えど角があった。フードをかぶっていた巡礼のローブ姿の人たちも多分そうなんだろう。羊っぽい家畜には一本だけだったけれど、額の中心に角が生えていた。リュカの愛馬のエクレールも角があったし、そういえば森で見たリス的な小動物にすら角が生えてたな……。
「えっ? ってことはもしかして、この世界で角がない生き物って俺だけ!?」
ついでっかい声を出すと、ハオシェンは手を頭の後ろで組んで、椅子を後ろに傾けた。
「ほんと言いにくいんだけど、角がないのは魔物か魔人だとばっかり思ってたんだわ」
「あ~。最初にハオシェンが俺のこと魔人って言ってたのはそれか……」
「そうそう。ゴメンね☆」
いや別にいいんだけど。仮にも神にむかってテヘペロ☆するんじゃあない。
思い返せば、リュカも最初俺を見た時に警戒してたような気がする。拠点に着くまでフードを被っていてほしいっていうお願いの理由もわかった。仲間の二人でさえ説得するのに苦労したのに、街の人たちに俺の頭を見られてたらやばかったな……。
――角が二本あるのが人間で、一本角は動物。角がないものは魔物か魔人。
もしかしたらオープニングとかチュートリアルでそんな説明があったかもしれない。読み飛ばさなければよかった。
えー。それで。仲間たちに信用してもらえたし。拠点は安全だし。一通り状況説明はしたし。俺に角がないことは仲間以外には秘密にしておかなきゃいけないということもわかったし。後はどうしたらいいか。どうしたらいいかというと。えーと。
ぐぅ~ぎゅるるるるる。
回らない頭のかわりに、盛大に腹が鳴った。
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