歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter3

06 リゼロッテからの依頼

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 森を抜けると一面に畑が広がっていた。
 麦とよく似た作物がわさわさと実り、風にそよいでいる。遠くに見える大きな風車もゆったりと動いている。いいね、こういうの。のどかな田舎って感じでほのぼのする。

 たぶんこの辺一帯が次の目的地である村のはず。とりあえず中心地を目指し、舗装されていない道を進んでいく。
 しばらく歩くと柵に囲われた集落が見えてきた。入り口にたどり着く頃には村人たちも俺たちの来訪に気付き、出迎えに集まっていた。

 集団から俺と同じ歳ぐらいの女の子が前に進み出て、スカートの端を持って頭を下げる。

「チョココロニー教団の皆様、スーリエ村にようこそお越しくださいました。このような辺鄙な地に助けの手を差し伸べてくださり、まことにありがとうございます」

 ピンク色の長い髪に金色の瞳、ゆるくカーブした牛のような角。リュカに負けず劣らず高めの顔面偏差値。この子こそが百年、いや千年に一度の美少女、リゼロッテちゃんだ。

 あ~やばい顔も声もかわいすぎて失神しそう! この世界に来てよかった~!

「こんにちは! ぼくニーナです! よろしくおねがいします!」
「はい、こんにちは。私は村長の代理をしております、リゼロッテと申します。よろしくおねがいしま……」

 極限に愛想よく振舞う俺に、リゼロッテちゃんも笑顔で挨拶を返してくれたのだけれど、俺の背後を守るように控えていた三人の顔を見てはっと言葉を途切れさせた。
 リュカたちは俺を守るために「モンスター絶対ぶっ殺すマン」と化していたので、まだその名残りが残ってしまっているというか。睨んでるとか凄んでるとかそういうことはしてないんだけど、面構えが反社会勢力のひとたちみたいになっておりまして。

「――道中大変でしたのね。さあ、こちらでご休息を!」

 雰囲気に気圧された村の人々が息を呑む中、リゼロッテちゃんは急いで俺たちを村に招き入れてくれた。なんかごめん……。


 しばらく休憩した後で村の集会所に案内してもらう。リゼロッテちゃんだけではなく、村の若者たちも数人集まっていた。

「それでは私から、改めて依頼内容を説明させていただきます」

 テーブルに地図を広げ、リゼロッテちゃんはぺこりと頭を下げた。
 リゼロッテちゃんからの依頼はモンスターの討伐だった。メインクエストは教団宛に届いた依頼を叶え、人々を救って信仰を集める、という形で進んでいく。

 リゼロッテちゃんの話によると、村のすぐ近くの山中に強力な力を持ったモンスターが突如現れたそうだ。村の自警団が退治しようとしたのだが、強すぎて歯が立たなかった。
 集会所に集まっている若者は自警団の人たちだった。みんな体格が良くて強そうだけれど、よく見れば頭や腕に包帯を巻いている。自警団にはリゼロッテちゃんも所属しているそうで、遭遇したモンスターの詳細について解説してくれる。

 リゼロッテちゃんは俺とそんなに歳も変わらないだろうにすごいなあ。村長の代理を務めて、戦いにも参加して活躍している。リゼロッテちゃんを見守る村人たちの表情を見れば、みんなに信頼されているんだなっていうのが伝わってくる。
 かわいい上に勇敢。この子が仲間になってくれるとかテンション上がる! フゥウウウウ!

 いやしかし。共に戦う仲間なのだ。要するにクラスメイトとかチームメイトみたいなことでしょ? 共通の目的があるってだけの関係なんだから無闇に「恋愛対象として見ているぜ」アピールするのはよくない。よくないけど。万が一リゼロッテちゃんの方が俺に仲間以上の好意を持ってくれるようなことがあればやぶさかでないな? なんてったって俺は神様だからな~? モテてしまうかもしれんな~? 神様素敵! いいえぼくなんて、みんなが助けてくれるおかげでなんとかやっていけてるだけですよ。まあ謙虚でいらっしゃるのね! なんつって! ウフフ! アハハ!

「私からは以上です。説明が不足している箇所はありましたでしょうか」

 やっべ。妄想をしている間に説明が終わってしまった。
 誰か質問するかな、と思ったけど、リュカたちは俺を教団の代表として扱ってくれているので、俺の方に顔を向けていた。リゼロッテちゃんや自警団の人たちの視線も自然と俺に集まる。

 あわわどうしよう、途中から何にも聞いてなかった。
 あわてまくっていたら集会所の扉が開く音がして、全員の視線が俺から逸れた。ほっとしながら俺も振り返る。そこには杖をついた人が立っていた。

「お母さん! 寝てなきゃ駄目じゃない!」

 リゼロッテちゃんが駆け寄る。でもその人は支えようとしたリゼロッテちゃんの手を冷たく振り払い、俺たちに向かって深々と礼をした。

「使徒様方、遅くなって失礼を。私はこの村の村長を務めております、アスリナと申します」

 俺たちも立ち上がって挨拶をする。
 この人が村長でリゼロッテちゃんのお母さんなのか。顔色が悪いせいで一瞬おばあさんに見えたけど、俺の母親と同じか、それより若いぐらいの女の人だ。

「無礼を承知で申し上げます。皆様の聖なる戦列に、どうかこのリゼロッテもお加えください。戦いに耐えうる強い魔力を持っております。必ずや神の御心にかなう力を発揮するでしょう」

 村長はそう言って再び頭を下げた。やったね、もう仲間になってくれんの? もちろん大歓迎で~す!
 俺は浮かれてリゼロッテちゃんの方を見たけれど、リゼロッテちゃんは今にも泣きそうな顔で村長に縋りついた。

「お母さん、そんなことできないよ! 私はお母さんのそばを離れるわけには……」
「よしておくれ、あんたがしみったれた顔をして傍にはりついてる方が具合が悪くなっちまうよ。なんだい、いつまでも甘ったれて、私のことをお母さんだなんて呼んで。あんたは本当の母親そっくりの弱虫だ」
「そんな……だって、私にとってのお母さんは……」
「私に子どもはいない」

 唐突に始まった親子喧嘩にあっけにとられてしまう。えっ、なに、どういうこと?
 自警団の人たちもざわつくが、口を挟めないでいる。

「あんたももう十六歳になったんだ。いつまでもあんたみたいな根性なしを養っていられない。さっさと村から出て行っておくれ」

 村長はきつい口調でリゼロッテちゃんをなじる。リゼロッテちゃんは目に涙をたたえたまま、耐えかねて集会所から飛び出てしまった。

「リゼロッテちゃ……リゼロッテさん!」

 事情はわからないけれど放ってはおけない。俺は立ち去ったリゼロッテちゃんを追いかけようとしたけれど、出入り口にたどり着く前に、村長の体がぐらりと傾いだのが視界に入った。

「あっ、あぶない……!」

 咄嗟に手を出して村長を支えて、あまりの軽さに驚く。
 すぐにリュカや村の若者たちが駆けつけてくれたけれど、非力な俺だけでも充分に支えきれてしまうほど、村長は衰弱してやせ細っていた。
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