公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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12 公爵令嬢は日本人男性になる

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リッカはとんでもない事を言い出した。

なんと、俺と話がしたいと言う。

「…不可能ではないわ。
互いの意識が混ざり合っているとは言っても、フランドールとテルユキは2人とも存在してるもの。」

だが正直に言おう。

めちゃくちゃ恥ずかしい。

私がここまでぶっちゃけておいて何を今更とか思うかもしれないけど、見た目は子供ようじょ、頭脳は大人おっさんとか、どこぞのメガネ少年探偵のような状態での会話なんて、不審極まりない。

「どうしてテルユキと話したいの?」

「私はやはり、魂が乗り移る などといった現象は信じられません。
しかし、昨日からの2日間、お嬢様とは明らかに違う別人のような言動を何度もされています。
どうしても信じざるを得ません。
納得するための決定的な証拠が欲しいのです。」

…そりゃそうだろうけども…

「…私を通じて、テルユキの意見を伝えるのでは駄目かしら。」

「申し訳ございません、直接お話をさせてください。」

うそーん。

「は、恥ずかしいのだけど…」

「本当に申し訳ございません、
ご無理を承知でお願い致します。」

「…笑ったりしない?」

「絶対に笑うはずがございません。」

…そこまで言いきるのなら、俺も腹をくくるしかない。

私は本を読む手を止めて、リッカと向き合い、テルユキになる。




「初めまして、リッカロッカさん。
僕は、日本と言う国に住んでいた37歳一般人、テルユキ・ハラダと申します。」

リッカの表情が一瞬強張ったけど、直ぐに元に戻る。

「お初にお目に掛かります。
私、フランドールお嬢様の専属侍女を務めております、リッカロッカと申します。
お見知り置きを。」

「フランドールさんを通じて存じ上げてます。」

「私めのような者に敬語など必要ございません。
名前も、呼び捨てでお呼びください。」

「いえいえ、僕のような一般庶民が公爵家にお仕えする方に、そのような失礼な態度を取るわけにはいきません。」

「とんでもございません。
私のような下級の人間が、ハラダ様のような知識も経験も豊富なお方に敬って頂くなど、恐れ多くございます。」

「…わかったよ、じゃあ普通通りにさせてもらうね。
その代わり、リッカも庶民の俺に敬語はなし。
気軽にハラダかテルユキと呼んでね。」

「そんな!
私のような者がそのように軽々しい態度を」

「では僕も、敬語で対応させて頂きます。」

「わ、わかりました!
わかったわよ、テルユキさん、これでいい?」

「おっけー。
さっきフランに言ってた 決定的な証拠が欲しいってやつ、今俺と会話してみて証拠になってる?」

「…正直分からない。
この世界の文化には、魂だけの存在というものはないの。
だから、今目の前で起こっている事が本当なら、この世界の常識が根底から覆されてしまう。
私はお嬢様との約束で、この事は誰にも話せない。
1人で納得するしかないの。」

「1人じゃないよ、俺とフランも同じだよ。
当の本人である俺達ですら、自分に何が起きてるかわかって、ないんだよ。」

そう、何もわからない。

俺が夢なのか、私が夢なのか。

それとも、どっちも本当なのか…

「そうなんだ…」

リッカが少し目を伏せて呟いた。

「俺のいた世界では、人は人生を全うしたら魂を浄化して新しい身体を与えられる『輪廻転生』という考え方があるんだ。
稀に、前世の記憶を残したまま生まれ変わる人もいるみたいだけどね。
あと、地域によって、先祖の魂を供養したり、故人の魂を呼び寄せる職業もあるくらい、魂の存在は身近なものなんだ。」

そう言うと、リッカは少し悲しそうな目でこっちを見てきた。

「…テルユキさんは、ニホンで死んでしまったから、お嬢様に生まれ変わったの?」

リッカの言葉で、絡まった糸が解けて一本になってしまった。

さっき、無意識に「日本と言う国に」と過去形で話してしまった。

輝行はあの時死んでいて、フランとして生まれ変わって、昨日前世を思い出したんだろう。

確定ではないけど、一番可能性が高い。

「非現実的すぎる」と、転生した事以外の例えを必死に探していた。

「わからなかった」じゃなくて「認めたくなかった」んだ。

日本に残してきたものが多過ぎて、俺の死を受け入れたくなかったんだ。

だから、前世の記憶を思い出したフランが混乱してしまったんだ。

悪いことをしたな、フランドール今の自分、ごめんよ…。

「…ハッキリとは言い切れないけど、その可能性は高いね。
俺が死んで、フランとして生まれ変わって、昨日俺を思い出したんだと思う。
ごめんな、リッカの大切なお嬢様を横取りしたみたいになって。」

「…お嬢様は先程、お二人の意識が混ざり合って1人になっていると仰ってたけど、昨日からの言動では、テルユキさんが優位になっていると思って間違いない?」

「それは違うよ。
フランも俺も、よく似た性格をしてる。
好奇心旺盛で、なんでも知りたがり。
思い付いた事は、何でも試す。
そんな5歳の女の子に、俺の日本での知識と経験37年分が増えただけ。」

「…テルユキさんはお嬢様の意識を支配しようとは思わないの?」

「一切ないね。
フランが言っただろ、「お互いが混ざり合っていて、今の自分はフランとテルユキで出来てる」って。
そもそも、フランを支配して何するつもりだと思ったんだよ。」

「…ニホンでの知識を使って、この世界を乗っ取ろうと考えたりはしないの?」

「するわけねーよ!
そもそも、日本という国は、あっちの世界で唯一武器を捨てた国だ。
戦争の悲劇を知り尽くしてると言っても過言じゃない。」

やや過言である。

「…じゃあ、この世界でやりたい事はあるの?」

「おう、めちゃくちゃあるよ!
日本はあっちの世界でもトップクラスにグルメな国だ。
それこそ、世界中の国々が日本の食べ物を求めていた程にね。
この世界にはない美味しい物をどんどん作って、それがこの世界の当たり前の食べ物にしていきたい。
ポテチがその第一歩だ。
フランの親父さんは、ポテチを特別なものとして売ろうとしてるけど、日本でポテチはどこのお店にも売ってる 安価で一般的なお菓子だ。
そのポテチを、俺は『誰もが気軽に食べられる ありふれた食べ物』にしたいと、思ってるよ。」

はい、リッカまたまたフリーズ。

てか、俺が質問に答える度に固まってたんだけど。

「…お嬢様の前世がテルユキさんで良かった。
どうぞこれから、お嬢様を大切にしてください。」

「もちろん。
この身体は、フランであって、俺でもあるんだからな。」

そう言うと、リッカの顔が少し明るくなった気がした。

「じゃあ戻るぞ。
今後は俺は出てこないから、俺への質問はフラン伝手に聞いてくれ。」

「ええ、わかった。
テルユキさん、ありがとう。」

「おう、じゃあな。」

「ええ、さようなら。」
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