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81.5 王妃殿下は公爵令嬢を恐れる
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今、アースフィールド王国で最も話題の少女、フランドール・フィアンマ。
由緒あるフィアンマ公爵家の令嬢で、私の友人の娘。
この国で唯一、錬金魔法を使うことが出来る人物。
たった7歳で辺境の小さな男爵領を活気づけた名領主。
自領に新たな学問や娯楽を与え、新しい食べ物、更に私の大好きなコーヒーを開発した革命児。
そして、我が息子、ロナウド・アースフィールドの婚約者。
彼女を好きだという者は、私の周りにもとても多い。
彼女の母であるミリアンは勿論、夫である国王陛下然り、ロナウド然り、クロード第二王子然り。
ただ、彼女の為人を発する意見は、かなり差があった。
陛下曰く「儂よりずっと未来を見据える目を持ち、民に幸を与える手を持つ者。」
ロナウド曰く「誰とでも仲良くなれるし好かれる、一緒にいると楽しい親友。」
第二王子曰く「礼儀正しく知的で才能に溢れる、慈愛に満ちた女性。」
そしてミリアン曰く「目を離すと何を仕出かすか分からない問題児。」
つまり、多くの顔を持つ少女という事なのかしら。
先日、彼女の誕生日パーティーで初めて面と向かって会話を致しました。
とは言っても、挨拶程度。
お恥ずかしい事に、彼女がロナウドと友人関係になってから、一度も会話をした事がありませんの。
だって、ロナウドの使いの者から聞いたところによると、初対面のロナウドを泣かせたと言いますのよ?
恐いじゃない!
その頃から陛下は彼女を気に入っていて、きっとロナウドのお嫁さんになるんだろうなと思っていたんですもの。
私、今は亡き前王妃様ととても大変仲が悪くございました。
俗に言う嫁姑問題?
何故か分からないけど、常日頃チクチク嫌味を言われてて、それはそれは辛い日々を過ごしていました。
正直、前王妃様が亡くなられて、不謹慎ながら心の中でガッツポーズをしてしまった程ですわ。
と、話がズレてしまいましたが、私、僅か5歳の少女に怯えておりました。
ええ、分かっています、私のこの性格が王妃に全く向いていない事は。
外交の際も、内心を探られぬよう懸命に演技をして王妃としての面目を保っていますが、いつかは知られてしまうのではないかと毎日ヒヤヒヤしています。
しかし、私はパーティーで言ってしまいました。
「一度、ゆっくりとお茶でも飲みながらお話ししたいと思っているの。
是非、遊びにいらして。」
本当は微塵も思っておりません。
遊びに来なくて宜しいです!
あの場の会話を早く終わらせたかったから思わず口にした出まかせです!
そして彼女の返答は、
「ありがとうございます。
お伺いさせて頂きます。」
あぁ、来ちゃうのね……
ロナウドの婚約者になったのだから、早かれ遅かれしっかりとお話しはしないと駄目だと分かっています。
ただ、覚悟が未だ出来ておりません。
ロナウドの婚約披露パーティーを前に、ご婦人方をお誘いしたお茶会を開きました。
そして、そこへミリアンと共に彼女をお呼びする事にしました。
あぁぁぁ、胃がキリキリする……
今までのどの公務よりも緊張して参りました……
ミリアンとご一緒に、遂にいらっしゃいました……
あぁ、とても10歳とは思えない程の佇まい。
先日の誕生日パーティーの演出の時から思ってましたが、小さな愛らしい姿から発せられるオーラが尋常ではありません。
来た、こちらへ向かって来た!
覚悟を決めて王妃の仮面を冠る。
「お招きいただきありがとうございます、王妃殿下。」
「よくいらっしゃいましたね、ミリアン、そしてフランドール。
今日のお茶会、楽しんでいってくださいな。
フランドール、後でゆっくりお話ししましょう。」
「ありがとうございます。
心よりお待ち致します。」
あぁ、後でゆっくり何の話をしたらいいの?
こんなに落ち着かないお茶会、生まれて初めてですわ。
とりあえず、お気に入りのコーヒーでも飲んで、一旦心を安らげましょう。
うーん、このコーヒーの香りはいつも香ばしくて、ホッとするわ。
ミルクと砂糖をたっぷり入れて飲むのが、私好み。
うん、コーヒーを飲んで、少し元気が出ましたわ。
いざ、出陣!
「フランドール、今少しお話ししてもいいかしら?」
「もちろんです。」
あら、この子、紅茶を飲んでるのね。
「コーヒーはお好きでないの?」
「いえ、コーヒーは覚醒効果があって、夜眠れなくなってしまうので、出来るだけ飲まないようにしてるんです。」
「確かに、文官達が眠気覚ましの薬代わりに飲んでましたわ。
このコーヒーを開発したのは、フランドールですわよね。
どうやってコーヒーを思いついたの?」
「書庫にあった文献に、覚醒作用のある木の実があると書いてありました。
実際、その実は殆どが種で食べ難い物で、どうにか普段の生活に取り入れられればと思ったのがきっかけです。」
この子の頭、どうなってるの?。
普通、「覚醒作用のあるけど種ばかりの木の実」を、普段の生活に取り入れようだなんて思いもしませんわ。
しかもそれを7歳の時に。
この子の事を知ろうと思って頑張って話しかけたのに、余計分からなくなってしまいました。
天才の考えることは、凡人には理解できません。
「私からも質問させて頂いて宜しいでしょうか?」
えっ、何を聞かれるの!?
難しい事を聞いてこないでよ!?
「えぇ、許可します。」
「ありがとうございます。
王妃殿下は、コーヒーがお好きな様で、甘くした物の方がお好みとお聞きしています。
チョコレートコーヒーはご存知ですか?」
「いえ、存じ上げませんわ。」
「コーヒーの中に、チョコレートを入れて溶かしてしまうんです。
細かく砕いた方が溶けやすいですが、試してみますか?」
え、なにその美味しそうな飲み方!
「ええ、是非お願い致しますわ。」
メイドに細かくチョコレートを砕いてもらって、熱々のコーヒーに入れてよく混ぜると、コーヒーとチョコレートの香りが混ざり合って、なんとも言えない至福感になる。
ミルクと砂糖を少し入れて、一口。
何これ! コーヒーとチョコレート両方の香りと味が一度に口の中いっぱいに広がって、そのまま鼻へ香りが突き抜ける!
凄く美味しい!
「フランドール!凄いですわ!
他にも、コーヒーの美味しい飲み方をご存知?」
「はい、コーヒーに生クリームやバニラアイスを乗せても美味しいですし、パンやクッキーを付けて食べてもいいですよ。」
「まぁ、どれも試してみたくなっちゃいますわ!」
気付いたら、結構な時間フランドールとお話することが出来ました。
ただ、内容は全て食べ物。
私、美味しい食べ物好きですけど、食いしん坊だと思われないかしら。
でも、思ったよりは話しやすい子でしたわ。
とにかく、慣れるまでは食べ物の話をしていれば良いと分かったから、収穫はありましたわ!
結論、フランドールは食べ物が好き。
由緒あるフィアンマ公爵家の令嬢で、私の友人の娘。
この国で唯一、錬金魔法を使うことが出来る人物。
たった7歳で辺境の小さな男爵領を活気づけた名領主。
自領に新たな学問や娯楽を与え、新しい食べ物、更に私の大好きなコーヒーを開発した革命児。
そして、我が息子、ロナウド・アースフィールドの婚約者。
彼女を好きだという者は、私の周りにもとても多い。
彼女の母であるミリアンは勿論、夫である国王陛下然り、ロナウド然り、クロード第二王子然り。
ただ、彼女の為人を発する意見は、かなり差があった。
陛下曰く「儂よりずっと未来を見据える目を持ち、民に幸を与える手を持つ者。」
ロナウド曰く「誰とでも仲良くなれるし好かれる、一緒にいると楽しい親友。」
第二王子曰く「礼儀正しく知的で才能に溢れる、慈愛に満ちた女性。」
そしてミリアン曰く「目を離すと何を仕出かすか分からない問題児。」
つまり、多くの顔を持つ少女という事なのかしら。
先日、彼女の誕生日パーティーで初めて面と向かって会話を致しました。
とは言っても、挨拶程度。
お恥ずかしい事に、彼女がロナウドと友人関係になってから、一度も会話をした事がありませんの。
だって、ロナウドの使いの者から聞いたところによると、初対面のロナウドを泣かせたと言いますのよ?
恐いじゃない!
その頃から陛下は彼女を気に入っていて、きっとロナウドのお嫁さんになるんだろうなと思っていたんですもの。
私、今は亡き前王妃様ととても大変仲が悪くございました。
俗に言う嫁姑問題?
何故か分からないけど、常日頃チクチク嫌味を言われてて、それはそれは辛い日々を過ごしていました。
正直、前王妃様が亡くなられて、不謹慎ながら心の中でガッツポーズをしてしまった程ですわ。
と、話がズレてしまいましたが、私、僅か5歳の少女に怯えておりました。
ええ、分かっています、私のこの性格が王妃に全く向いていない事は。
外交の際も、内心を探られぬよう懸命に演技をして王妃としての面目を保っていますが、いつかは知られてしまうのではないかと毎日ヒヤヒヤしています。
しかし、私はパーティーで言ってしまいました。
「一度、ゆっくりとお茶でも飲みながらお話ししたいと思っているの。
是非、遊びにいらして。」
本当は微塵も思っておりません。
遊びに来なくて宜しいです!
あの場の会話を早く終わらせたかったから思わず口にした出まかせです!
そして彼女の返答は、
「ありがとうございます。
お伺いさせて頂きます。」
あぁ、来ちゃうのね……
ロナウドの婚約者になったのだから、早かれ遅かれしっかりとお話しはしないと駄目だと分かっています。
ただ、覚悟が未だ出来ておりません。
ロナウドの婚約披露パーティーを前に、ご婦人方をお誘いしたお茶会を開きました。
そして、そこへミリアンと共に彼女をお呼びする事にしました。
あぁぁぁ、胃がキリキリする……
今までのどの公務よりも緊張して参りました……
ミリアンとご一緒に、遂にいらっしゃいました……
あぁ、とても10歳とは思えない程の佇まい。
先日の誕生日パーティーの演出の時から思ってましたが、小さな愛らしい姿から発せられるオーラが尋常ではありません。
来た、こちらへ向かって来た!
覚悟を決めて王妃の仮面を冠る。
「お招きいただきありがとうございます、王妃殿下。」
「よくいらっしゃいましたね、ミリアン、そしてフランドール。
今日のお茶会、楽しんでいってくださいな。
フランドール、後でゆっくりお話ししましょう。」
「ありがとうございます。
心よりお待ち致します。」
あぁ、後でゆっくり何の話をしたらいいの?
こんなに落ち着かないお茶会、生まれて初めてですわ。
とりあえず、お気に入りのコーヒーでも飲んで、一旦心を安らげましょう。
うーん、このコーヒーの香りはいつも香ばしくて、ホッとするわ。
ミルクと砂糖をたっぷり入れて飲むのが、私好み。
うん、コーヒーを飲んで、少し元気が出ましたわ。
いざ、出陣!
「フランドール、今少しお話ししてもいいかしら?」
「もちろんです。」
あら、この子、紅茶を飲んでるのね。
「コーヒーはお好きでないの?」
「いえ、コーヒーは覚醒効果があって、夜眠れなくなってしまうので、出来るだけ飲まないようにしてるんです。」
「確かに、文官達が眠気覚ましの薬代わりに飲んでましたわ。
このコーヒーを開発したのは、フランドールですわよね。
どうやってコーヒーを思いついたの?」
「書庫にあった文献に、覚醒作用のある木の実があると書いてありました。
実際、その実は殆どが種で食べ難い物で、どうにか普段の生活に取り入れられればと思ったのがきっかけです。」
この子の頭、どうなってるの?。
普通、「覚醒作用のあるけど種ばかりの木の実」を、普段の生活に取り入れようだなんて思いもしませんわ。
しかもそれを7歳の時に。
この子の事を知ろうと思って頑張って話しかけたのに、余計分からなくなってしまいました。
天才の考えることは、凡人には理解できません。
「私からも質問させて頂いて宜しいでしょうか?」
えっ、何を聞かれるの!?
難しい事を聞いてこないでよ!?
「えぇ、許可します。」
「ありがとうございます。
王妃殿下は、コーヒーがお好きな様で、甘くした物の方がお好みとお聞きしています。
チョコレートコーヒーはご存知ですか?」
「いえ、存じ上げませんわ。」
「コーヒーの中に、チョコレートを入れて溶かしてしまうんです。
細かく砕いた方が溶けやすいですが、試してみますか?」
え、なにその美味しそうな飲み方!
「ええ、是非お願い致しますわ。」
メイドに細かくチョコレートを砕いてもらって、熱々のコーヒーに入れてよく混ぜると、コーヒーとチョコレートの香りが混ざり合って、なんとも言えない至福感になる。
ミルクと砂糖を少し入れて、一口。
何これ! コーヒーとチョコレート両方の香りと味が一度に口の中いっぱいに広がって、そのまま鼻へ香りが突き抜ける!
凄く美味しい!
「フランドール!凄いですわ!
他にも、コーヒーの美味しい飲み方をご存知?」
「はい、コーヒーに生クリームやバニラアイスを乗せても美味しいですし、パンやクッキーを付けて食べてもいいですよ。」
「まぁ、どれも試してみたくなっちゃいますわ!」
気付いたら、結構な時間フランドールとお話することが出来ました。
ただ、内容は全て食べ物。
私、美味しい食べ物好きですけど、食いしん坊だと思われないかしら。
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結論、フランドールは食べ物が好き。
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