公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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101 公爵令嬢はお芝居をプロデュースする

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 遂に、遂に出来ました!

 『さしすせそ』の『せ』!

 そう、醤油!

 味噌が出来たからたまり醤油が作れるようになって、一気にテンション上がって来たァ!

 ただ、味噌からすぐ作れたわけじゃないんだよ。

 味噌玉を作ってそれを一年以上発酵させて作るんだけど、ただ放置してるわけじゃない。

 熟成過程で味噌玉からしみ出すもろみ液を何度も味噌玉にかけ戻し、熟成を進めてやっと完成。

 はあぁぁ、長かったぁ!

 ああ、何から作ろうかしら。

 溜まり醤油は刺身醤油として有名だけど、お刺身とかだと寄生虫が不安だしなぁ。

 タレや煮物に相性抜群だから、そっち系がいいかな?

 とは言っても、魚醤で結構作っちゃってるから、新しいものってのが特にない。

 うーん、お米さえあれば新メニュー続々なんだけどな……




 今日は男爵領内に建てた劇場へ視察。

 プロのコンサートやオペラから、一般人がする演劇や合唱団など、町の娯楽の一つとなっている。

 舞台は常に満席で、いつもお客さんで賑わっている。

 他の領からの観光客も多く、町の新しい観光地になりつつあった。


 今日は演劇の日だったようで、所々歌を挟みダンスをするミュージカル風の演目がされていた。

 結構人気作だったようで、歌のシーンではお客さんも一緒に歌っている。

 確かに面白い。

 ちょっとコメディっぽく、でもラストは感動的なストーリー。

 子供も大人も楽しく舞台を見ている。

 演目が終わり、舞台裏でスタッフや出演者たちに声をかけた。

 「とても素晴らしい舞台でした。
 面白く鑑賞させて頂いたわ。」

 「ありがとうございます、領主様に見て頂いてとても光栄です。」

 「秋祭りから始まったこの舞台も、徐々に板についてきたって感じです。
 とても充実しています。」

 うんうん、みんないい反応している。

 「何か困ったことはない?
 協力できることがあれば力をかすわよ。」

 すると、何故か全員がもじもじし始めた。

 「な、何があったの?
 劇場に不具合でもあった?」

 「いえ、劇場はとても素晴らしく、全く問題ありません。」

 「では一体何が?」

 「あ、あの……」

 団長である男性から声が漏れた。

 彼は勇気を振り絞った様子で

 「今度の秋祭りの演目、領主様にプロデュースしていただけませんでしょうか!?」

 な、なんだってぇ!?

 「大変多忙な事は重々承知しています。
 ただ、今年は結成して五年目の記念の年、どうにか特別な事をしたいと思っていたところ、領主様のデビュタントの噂を耳にし、これしかないと思ったんです!」

 あ、あの恥ずかしのデビュタントね……

 てか、あれはぶっちゃけ私よりリッカやお母様、レベッカちゃんの茶々入れの方がおおかったんだけどね。

 そんな数年前の黒歴史を今更掘り起こしてくれるなよ。

 「是非、斬新なストーリーや演出を、可能であるならば監督をして頂けませんでしょうか!?」

 わ、私監修の演目とな……

 正直荷が重すぎる……

 ただ、ここにいる全員の必死な様子を見て、無下に出来るわけがない……

 「わ、わかったわ。
 スケジュールをどうにか調節して、お手伝いさせていただくわ。」

 「「「あ、ありがとうございます!!!」」」

 その場が歓喜で埋め尽くされた。

 プレッシャーぱない。




 「フラン様、またお仕事増やされてきたのですか!?」

 帰って早々にリッカに叱られた。

 だったらその場で止めてくれりゃいいじゃんかよ。

 「あの方たちのあの顔とあの空気を見て私が口出ししていいと思ってるんですか?」

 チクショウ、好き勝手言いやがって。

 「フランちゃん演劇するの?
 私見たーい!」

 レベッカちゃんがノリノリで参加してきた。

 「いや、私が出演するんじゃなくて、作家と演出と監督をするだけで……」

 「なんで!?
 フランちゃんも出演者になればいいのに!
 絶対大人気の舞台になるよ!」

 「確かに、フラン様がステージに立てば、立ち見の観客はおろか、劇場内に入れない観客も大勢になるはず。
 フラン様、忙しいとはお思いでしょうが、是非とも出演者になってはいかがでしょうか?」

 たからなんで勝手に決めるんだよ!?

 大体、ちゃんと演者がいるのに、監督の私が勝手にステージで演技してちゃダメでしょうが!



 「それは素晴らしい提案です!
 是非、領主様も出演者として参加してください!」

 うそーん。

 くっそー、この流れじゃあ私が主役になりそうだし、絶対恥ずかしい!!

 「ちなみに、演目内容はどのような感じのものをお考えで?」

 演目内容はその日の夜に思いついてたから、もう台本書いて渡して時々来て監督しようと思ってたんだよ。

 なのに、こんなことになるなんて思っても見なかった。

 「えっ、もう台本が完成しているんですか!?
 さすが領主様です!」

 「あの日の夜中部屋に灯りが長らく付いていたのは、こういうことだったんですね。」

 リッカ、その顔怖ぇよ!

 「私にも台本見せて!」

 レベッカちゃんが乗り出してきた。

 じーっと台本を読み込んで発言したのが、

 「これ、あの人たち呼ぼうよ。
 絶対役に立つ!」

 は、マジで言ってんの!?

 あの人たちだって暇じゃないんだよ!?

 「とか言いつつ、毎年お祭り参加してるじゃん。」

 確かにそうだけども!

 「でしたら、ここの部分をこのように演出してはいかがでしょうか?」

 り、リッカまで何参戦してんだよ!?

 「それは素晴らしい!
 本当にそんな事が可能なんですか!?
 流石は領主様!!!」

 ちょ、団長もなに決定事項にさせちゃってんの!?

 彼らに話したら絶対ノリノリになるし、もうするしかないじゃんよ……
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