公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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147 公爵令嬢は不良を鍛える

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 昨日の説教が終わって、今日から私は不良のエリックと一緒に魔法の訓練をすることになった。

 魔力量がかなり少ない事と、元一班の三人は随分魔法の扱い方が上手くなったという事で、リリーちゃんはこっちに来てもらった。

 「初めまして、リリーと申します。
 今日からよろしくお願いします、エリックさん。」

 「……おう。」

 「リリーちゃんに惚れないでよ?」

 「馬鹿が。」

 じゃあ早速魔法の訓練開始。

 マッチの火ほどの火魔法が使える程度の能力なので、まずはイメージトレーニングから。

 私が見本を見せるために、訓練場に教室のゴミを持ってきた。

 一つ一つ燃やして、炎がどのように出ているか、どのような燃え方をしているのかをじっくり見せた。

 そう、私が公爵家にいた時にやったやつ。

 それを頭の中でしっかりイメージ。

 私じゃイマイチ分からなかった魔力のめぐり方も、色んな方法を頭と身体で感じるようにもした。

 そして実演。

 魔力がすぐに尽きてしまうので、魔力タンクのリリーちゃんに魔力回復魔法を何度もかけてもらった。

 いやぁ、リリーちゃんのこの魔法、ほんとに便利。

 私は少ない魔力量を毎日の訓練の繰り返しをひたすら続けて今に至るんだけど、それをたった一日で何度も出来るんだもの。

 私の時にもいて欲しかった。

 「なあ……これ、本当に効果あるのか……?」

 肩で息をしながら私に問いかけるエリック。

 「当たり前でしょ?
 自分の魔力量が実際どのくらい感じられるかが分かるだけでも、何週間もかかるような事よ?
 これだけ一日中やってれば、多少なりともどれほど魔力量があるか、体感出来たんじゃないの?」

 「……何となく。」

 「じゃあそれをハッキリ感じられるようにするまでよ。
 プラスで魔法の技術訓練がしっかり出来れば、もっと威力のある魔法が使えるようになるわ。」

 「……本当だろうな?
 違ったらタダじゃ置かねえ。」

 「本当よ?
 信じられない?
 あ、もしかして逃げ出す言い訳作りたいの?」

 「クソが!
 上等だよ、やってやる。」



 一日特訓したところで、今日はまだまだ威力は変わらなかったけど、負けず嫌いが高じてかなり集中して訓練ができた。

 「リリーちゃん、本当にありがとう。
 私だけじゃ、エリックの訓練なんて出来ないから、とても助かったわ。」

 「とんでもないです。
 フラン様のお力になれて何よりです。
 最近は別行動ばかりだったので、一緒に居られて嬉しかったです。」

 「私じゃあの三人の力になれないからね。
 ゴーレムの応援隊も邪魔だったみたいだし。」

 「邪魔と言うか、お三方の気がちってしまうので……
 やっとフラン様が役に立つ時が来ましたね!」

 やっと?

 役に立つ?

 リリーちゃんて、親しい人には思ったことをズバッと言うタイプなのかな?



 地獄の魔法の訓練を始めて一週間(地球時間で10日)、マッチほどの火力は、ロウソクほどの大きさまで大きくなっていた。

 「凄いじゃない!
 たった一週間で火力が数倍にもなるなんて!
 やっぱり、努力すれば報われるのよ!」

 「たったこれっぽっちで、大袈裟だ。」

 「なんでよ!
 こんな短期間でこれ程成長できるんですもの、来週が楽しみじゃない?」

 「……まあそりゃ……」

 「何度倒れたか分からないけど、リリーちゃんが協力してくれるから、遠慮なく魔力を使い切っても大丈夫よ!」

 「……あれ、すげえキツい。」

 「あら、弱音を吐くだなんて、やっぱり貴方はその程度だったの?」

 「上等だゴルァ、何度でもやってやる。」



 こうして、何度も何度も訓練していくうちに、彼の態度が段々と柔軟になってきた気がした。

 形振り構わす喧嘩を売ったり、反抗したり、といった事が少なくなってきた。

 特に驚いたのが、授業をサボる事が無くなったこと。

 授業態度は相変わらずらしいけど、授業に中に寝たり、途中で退出することはもう無くなったんだと。

 元々運動神経はいいらしく、筋トレや武術はかなりいい線を言ってるとの事。

 そして、魔法実技の時間は、ただひたすらロウソクの炎を見てイメトレを欠かさないみたい。

 そのおかげもあって、炎の威力は火力最大のライター程まで上がってきた。

 エリックのこの生活態度の改善に、先生方は大喜び。

 魔法技術の先生は、私にゲンコツではなく手のひらで背中を強めに叩いてきた。

 いい事やってもこの人は私を叩くのか。

 エリックを躾けたという事で、カーネル生徒会長からは「猛獣使い」と呼ばれている。

 いや、もっといい言い方あるだろう。



 魔法の威力が少しづつ上がってきたエリックは、私に過去の話を話してきた。

 成認式の日からずっと、親からぞんざいな扱いを受けていた事。

 兄弟は優秀な魔力量の持ち主で、魔法の技術も上手かった事。

 だからこそ、家族から必要とされない存在になった事。

 どれだけ努力しようが追いつくことは出来ない。

 どれだけ優秀な学力と武術でも、魔法がほぼ使えないと言うだけで見捨てられる。

 なら、悪行をして目立てば、こっちを向いてくれるんじゃないか。

 その行動が裏目に出て、家族はおろか周りの人間からも必要とされない存在になってしまった。

 取り戻せない過去。

 今更真面目にやった所で、誰も振り向いてくれることは無い。

 そんな感じで今に至ると。

 つまり、ただの悪ガキじゃないか。

 俺だってボッチだったけど、回りが見えない程好きな事を見つけていれば、周りの評価なんて気にしないのに。

 「今夢中になれることは何かないの?」

 「……魔法の訓練。」

 「素敵じゃない!
 もっと沼にハマりなさい。
 今まで嫌いだった魔法が、周りが見えない程好きになってくるわ!」

 「なんだよ沼って。」

 「じゃあ、これからも訓練続けて行くわよ。
 よろしくね!」

 「……よろしく。」

 なんだか、ロナウド王子と始めて仲良くなった日のことを思い出した。



 「またフラン様を狙う人が増えてしまいました。
 かなり厳しい展開になってしまいましたね。」

 リリーちゃん、何を言ってるの?
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