行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも

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番外編 王宮散歩は重労働

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「……システィーナ」

王宮の回廊を歩いている途中、背後から低い声がした。

「なぁに?」

振り返る前から分かっている。
この距離感、この気配。

間違いなく夫だ。

「少し、歩く速度を落とさないか」

「もう十分ゆっくりですわよ?」

実際ほぼ散歩である。
なのに彼は、なぜか真剣な顔でわたしの隣にぴったり並び周囲を警戒していた。

「王宮内に不審な視線が多いように感じる」

「それはあなたが目立ちすぎるからです」

軍団長が全力で妻の隣を主張しながら歩いていれば、そりゃ見られる。

「だが、君に向けられる視線は私が処理しなければ」

「アレス」

「ん?」

「腕、絡めなくて結構です」

「……しかし」

「歩きにくいです」

彼は一瞬黙り込み、それから妙に理屈っぽく言った。

「離れて歩くと君が一人に見える」

「一人でも歩けますわ」

「私が嫌だ」

なら仕方なく彼の腕にそっと触れると、
即座に腕が固定された。

……強い。

「これでは私が捕まっているみたいですわ」

「安全確保だ」

堂々と言うな。

しばらく歩くと庭園に差し掛かる。
花の香りと昼の陽射し。

「……平和ですね」

わたしが言うと、彼は少し考えてから答えた。

「君が無事で私の元にいる。それだけで平和の概念が生まれる」

また重い。

「本当に……大げさな人」

「君を見つけてから、長い」

そうですか。

わたしはため息をついて、腕を引き寄せた。

「ではせめて堂々と歩きましょう」

「ああ」

それから

歩幅がほんの少しだけ合った。

王宮の人々がひそひそと噂している。
重すぎる軍団長に捕まった王女の話を。

……まあ、悪くない。
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