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第1章第4話 仮想現実武闘会
*1*
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次の日、次の街を目指して朝早く出発した。
素潜りなんて慣れない事したから、体が痛い……。
いや、1人で舟を漕いだからだな!絶対!
また沢山歩くのかなぁなんて思っていたら、なんとお昼前には着いてしまった。
横浜に似た九龍街の次はどこの街に似た所なんだろうと思ってたけど、ここはなんとなく見覚えのある街に似てる。
というか漂う雰囲気が似てる。
詩乃
「おっと、最初の街に戻って来ちゃった?」
茶色の石畳に西洋風の建物。
うん、やっぱそうだ、最初の街だ。
ルイス
「確かにロワフォンテーヌに似た街だけど、全くの別物よ」
クロード
「ここはフォールフィエルテという街だ。
強さを求めてここにやって来る者が多いと聞く」
春一
「知ってるー!あれだろ?この街じゃ武道会が開かれてるんだろ?
強ぇ奴がいっぱい居るんだろうなぁ!オラわくわくすっぞ!」
クロード
「武道では無い、武闘会だ」
あんなにノリノリだったのに、クロードに訂正されて不貞腐れる。
春一
「まあ似たようなもんだろ、どうせなら天下一が似合う方にしようぜ」
詩乃
「え、何?舞踏会?ダンスパーティー?」
ルイス
「あー、違う違う!闘うのよ、踊るんじゃなくて!」
あーそっちの武闘会、ね。
春一
「ムキムキなシンデレラがカボチャぶん投げて闘うってのも面白そうだな!」
春一の冗談に思わず吹き出す。
詩乃
「あははっ!想像したら笑えるんだけど!マジ草!!
ガラスの靴ぶん投げるのもアリじゃない?」
春一
「それはさすがに草通り越してジャングルだわ!
下手すりゃ死ぬだろうが!」
詩乃
「それなっ!!」
クロード
「草?」
ルイス
「ジャングル?」
大笑いする私達を見ながら、2人は首を傾げた。
春一
「はーあ!
久々に大笑いしたらなんか腹減ってきたなぁ、飯食いに行こうぜ」
詩乃
「久々の大笑いと空腹はあんま関係無くない?
確かにお腹減ったけどさぁ」
クロード
「そうか、もうすぐ昼時か。そこの店に入ろう」
クロードが指差した先には看板が掛かっている。
どこからとも無く美味しそうな匂いが漂ってるなとは思ったけど、このお店からだったか!
春一
「はぁ~!腹減った~!」
駆け足で店に入って行く春一。
……中身まで子供になってるような気がするのは気のせいかな?
店内はなかなかに賑わっていた。
屈強な男達が多めで、アウェー感を感じるけど気にしないでおこう。
春一はさっさと4人掛けの丸テーブルの席に座った。
私達も座ると店員さんがメニューの紙を持って来てくれた。
昨日の夜は魚だったし、こういう雰囲気のお店はお肉をガブッといきたいところだなぁ!
???
「ちょっと、そこの黒髪の兄ちゃん御一行!」
突然声を掛けられ振り返る。
カウンターでお酒を飲んでいる男の人が私達を見ていた。
クロード
「我々の事だろうか?」
男性
「そうそう、お前さんらだよ!金と銀の釣竿持ってお出かけかい?」
クロード
「いや、昨日立ち寄って貰ったんだ」
男性
「昨日!?じゃあ湖に巣食うバケモン倒したのかっ!?」
カウンターを拳で叩き付け、勢いよく立ち上がる男性。
あんなに賑わっていた店内が静まり返り、みんなが私達を見る。
えっと……これは……?
男性
「…………コイツはたまげた……勇者だ、勇者様だ!!」
彼の言葉にみんなが盛り上がり、私達に集まってくる。
木こり
「アイツが現れてから木こりの仕事がままならなかったんだ、ありがとう!」
剣士
「あのバケモンはオレが倒したかったのに……どうやったんだよ!?」
女剣士
「あたしにも教えちゃくれないかい?お兄さん1人で倒したの?」
クロード
「私だけでは無い、皆が居たから成し得た事だ」
屈強な男
「じゃあひょろひょろの兄ちゃんもお嬢ちゃんも、そこの坊主も戦ったのかよ!?」
春一
「まあな!俺達にかかれば朝飯前だったぜ!ま、あれは夕飯前だったけどな!」
春一の言葉に更に盛り上がる。
……得意気に言ってるけどアンタ、溺れてただけじゃん!
エプロンを着けたワンピースの店員さんが目をキラキラとさせ近くに来た。
店員
「良かったらサービスさせてください!
お代は結構ですので、どんどん召し上がってくださいね!」
詩乃
「え!?良いんですか!?」
私はメニューを広げ指差す。
詩乃
「じゃ、じゃあこれとこれとこれと、あとこれも!」
春一
「あ!あとこれも追加な!」
身を乗り出して春一も指差す。
ルイスさんが苦笑いした。
ルイス
「いくらサービスしてくれるからって頼み過ぎじゃない?」
詩乃
「大丈夫大丈夫!」
いやぁ!勇者様か~!
なんて良い響き!
そこからは質問責め。
どうやって倒したかとか近くで見た怪物の印象だとか、色々。
私達は運ばれてきた食べ物を口に詰め込みながら、質問に答えていった。
やっぱり強さを求めて集まって来た人達だけあって、興味津々みたいだ。
ルイスさんはここぞとばかりに宿のチラシを配っている。
???
「あんまり旅人を疲れさせるんじゃないよ?
落ち着いて食事も出来やしないじゃないか」
良く通る声がみんなの興奮を落ち着かせる。
その声でみんなが自分の席へと戻って行った。
扉の前には青い甲冑を着た凛々しい女性が立っていた。
金髪のショートカットで左目は前髪で隠れている。
キリッとした蒼眼と綺麗な褐色肌が格好良い。
???
「久しぶりだな、ハリントン」
クロード
「あ、ジャンヌ様!」
クロードは女性に駆け寄り、深々とお辞儀をした。
クロード
「ご無沙汰しております!」
ジャンヌ
「相変わらず堅苦しい奴だな、お前は」
そう言ってフッと笑った。
ルイス
「そちらの方は?」
クロードは女性を連れて私達のテーブルに戻る。
クロード
「紹介しよう、このお方は王族専属聖騎士団第四団長ジャンヌ・ドルレアン様。
私の先輩に当たるお方だ」
詩乃
「東雲詩乃でーす!」
右手を上げ名乗ると、後の2人も続いた。
春一
「阿久津春一でーす!」
ルイス
「ルイス・ヴィトンでーす!」
詩乃
「ルイスさんのフルネーム初めて聞いた!」
私が驚くと、ルイスさんはキョトンとした。
ルイス
「あら、言ってなかったかしら?」
春一
「どっかのブランドみてぇな名前してんなぁ!」
苦笑する春一。
クロードが私達のやり取りを見て眉間に皺を寄せた。
クロード
「コラ、お前達!ジャンヌ様の前で失礼だろう!」
ジャンヌ
「構わんよ、愉快な仲間達じゃないか」
クロードと愉快な仲間達、か……。
どこぞの子供向け冒険活劇みたい。
ジャンヌ
「旅をしている途中で湖のヴォルールを討伐したらしいな」
春一
「なんでアンタもみんなも分かんだよ」
クロード
「言葉遣いに気を付けなさい!」
ジャンヌ
「良いんだ、お前が堅苦しいだけだよ」
クロードにそう言うと、ジャンヌさんは釣竿に目を向けた。
ジャンヌ
「今そんな道具を持って歩いている奴は怪物を倒さない限り居ない。
だから皆、分かったのだろう」
なるほど、確かにこの2本の釣竿は折り畳めないし目立つもんなぁ。
怪物倒しました!って言って歩いてるようなもんか。
ジャンヌさんは近くの空いている椅子を持って、私達のテーブルの近くに置き座った。
長い焦げ茶のマントがひらりと動いた。
クロードも席に着く。
ジャンヌ
「君達は強いんだな、私も見習わなくては」
春一
「強いなんて、まーそれ程でもあるかな!是非とも見習ってくれ!」
だから何でそんなに得意気なのよ!
クロード
「ジャンヌ様も充分お強いではありませんか!
トップの成績を誇る優秀な聖騎士なのですから!」
ジャンヌ
「あ、ありがとう……」
目を輝かせるクロードに対し、ジャンヌさんはどこか浮かない表情だった。
???
「ああ!こんな所にいらっしゃいましたか!」
扉の前できちんとした身なりの男性がそう言い、私達にというかジャンヌさんに近寄る。
黒の燕尾服に灰色のネクタイとベスト、胸元には白いチーフ。
灰色の髪に赤い目。
そして頭の上から上に伸びる、灰色の兎の耳。
???
「おや?こちらの方々は?」
ジャンヌ
「ヴォルール討伐に成功した勇者達だよ」
???
「討伐されたのですか!?」
男の人にしては大きめな赤い瞳を更に大きくさせ、私達に視線を向ける。
???
「なんて素晴らしい!」
詩乃
「ル、ルイスさん……!うさ耳イケメン……カッコ可愛い……!」
ルイス
「アタシ、旅に出て良かったと心から思ったわ……!」
私とルイスさんは目の前のうさ耳イケメンを見ながら、ヒソヒソと静かにテンションが高まっていた。
春一
「アンタ、名前は?」
???
「申し遅れました、私ジャンヌお嬢様の執事を務めておりますジルと申します」
うさ耳イケメンのジルさんは深々とお辞儀した。
春一
「え?ジャンヌって良いトコのお嬢な訳?」
クロード
「ドルレアン家は上流階級に属する貴族だ。
だからあまり無礼な言動は慎んだ方が良い」
ジャンヌ
「だからってあんまりお嬢様扱いするなよ……」
ジャンヌさんは苦笑いをした。
春一
「そんな上流階級のお嬢が何でこんな聖騎士団なんてやってんだよ」
春一の質問にジャンヌさんは遠くを見る。
清々しい表情を浮かべ、語り出す。
ジャンヌ
「私は生まれも育ちもずっとここで、この街が大好きなんだ。
だからこの街の安全は私が守りたい。
それに煌びやかな世界でのんびり過ごすより、泥だらけで戦う方が性に合っているんだ」
詩乃
「へぇ、カッコ良い!舞踏会より武闘会が好きって感じだね!」
私のシャレにジャンヌさんは一瞬驚いたけど、すぐに理解してくれた。
ジャンヌ
「え、ああ、その通りだ!
武闘会の方が好きだ、上手い事言うな東雲!」
褒められてにんまりする私。
ジル
「お嬢様、ここは是非本日の武闘会に皆様をお呼びしては?」
ルイス
「え、参加するの!?私達!?」
ジルさんの提案にルイスさんが大きく驚いたけれど、すぐに否定する。
ジル
「いえいえ!お嬢様のご活躍を皆様に是非見て頂きたいと思いまして!」
ジャンヌ
「ジル、突然そんな事言っても彼らには彼らの予定があるだろう」
困り顔のジャンヌさんに、私達は笑顔で答えた。
春一
「全くもって問題無い!予定は未定だから!」
クロード
「ジャンヌ様も出場なさるのですね!是非拝見させて頂きたいです!」
詩乃
「わぁ!ジャンヌさんの闘ってるとこ、見てみたい!」
ルイス
「この街1番の観光スポットだもん、そこは行かないとね!」
ジャンヌ
「来なくて良いっ!」
突然の大声に静かになる店内。
ジャンヌさんの怒号に固まってしまった。
我に返るジャンヌさん。
ジャンヌ
「……あ、いや申し訳無い……他にも観光出来る所は沢山あるから……」
そう言ってジャンヌさんは店から出た。
ジル
「申し訳ございません、失礼致します」
後を追うようにジルさんも出て行った。
クロード
「どうなさったのだろうか、ジャンヌ様は……」
あんな風に言われてしまっては、見に行く訳にもいかないか……。
私達はとりあえず目の前の大量の料理と格闘し始めた。
素潜りなんて慣れない事したから、体が痛い……。
いや、1人で舟を漕いだからだな!絶対!
また沢山歩くのかなぁなんて思っていたら、なんとお昼前には着いてしまった。
横浜に似た九龍街の次はどこの街に似た所なんだろうと思ってたけど、ここはなんとなく見覚えのある街に似てる。
というか漂う雰囲気が似てる。
詩乃
「おっと、最初の街に戻って来ちゃった?」
茶色の石畳に西洋風の建物。
うん、やっぱそうだ、最初の街だ。
ルイス
「確かにロワフォンテーヌに似た街だけど、全くの別物よ」
クロード
「ここはフォールフィエルテという街だ。
強さを求めてここにやって来る者が多いと聞く」
春一
「知ってるー!あれだろ?この街じゃ武道会が開かれてるんだろ?
強ぇ奴がいっぱい居るんだろうなぁ!オラわくわくすっぞ!」
クロード
「武道では無い、武闘会だ」
あんなにノリノリだったのに、クロードに訂正されて不貞腐れる。
春一
「まあ似たようなもんだろ、どうせなら天下一が似合う方にしようぜ」
詩乃
「え、何?舞踏会?ダンスパーティー?」
ルイス
「あー、違う違う!闘うのよ、踊るんじゃなくて!」
あーそっちの武闘会、ね。
春一
「ムキムキなシンデレラがカボチャぶん投げて闘うってのも面白そうだな!」
春一の冗談に思わず吹き出す。
詩乃
「あははっ!想像したら笑えるんだけど!マジ草!!
ガラスの靴ぶん投げるのもアリじゃない?」
春一
「それはさすがに草通り越してジャングルだわ!
下手すりゃ死ぬだろうが!」
詩乃
「それなっ!!」
クロード
「草?」
ルイス
「ジャングル?」
大笑いする私達を見ながら、2人は首を傾げた。
春一
「はーあ!
久々に大笑いしたらなんか腹減ってきたなぁ、飯食いに行こうぜ」
詩乃
「久々の大笑いと空腹はあんま関係無くない?
確かにお腹減ったけどさぁ」
クロード
「そうか、もうすぐ昼時か。そこの店に入ろう」
クロードが指差した先には看板が掛かっている。
どこからとも無く美味しそうな匂いが漂ってるなとは思ったけど、このお店からだったか!
春一
「はぁ~!腹減った~!」
駆け足で店に入って行く春一。
……中身まで子供になってるような気がするのは気のせいかな?
店内はなかなかに賑わっていた。
屈強な男達が多めで、アウェー感を感じるけど気にしないでおこう。
春一はさっさと4人掛けの丸テーブルの席に座った。
私達も座ると店員さんがメニューの紙を持って来てくれた。
昨日の夜は魚だったし、こういう雰囲気のお店はお肉をガブッといきたいところだなぁ!
???
「ちょっと、そこの黒髪の兄ちゃん御一行!」
突然声を掛けられ振り返る。
カウンターでお酒を飲んでいる男の人が私達を見ていた。
クロード
「我々の事だろうか?」
男性
「そうそう、お前さんらだよ!金と銀の釣竿持ってお出かけかい?」
クロード
「いや、昨日立ち寄って貰ったんだ」
男性
「昨日!?じゃあ湖に巣食うバケモン倒したのかっ!?」
カウンターを拳で叩き付け、勢いよく立ち上がる男性。
あんなに賑わっていた店内が静まり返り、みんなが私達を見る。
えっと……これは……?
男性
「…………コイツはたまげた……勇者だ、勇者様だ!!」
彼の言葉にみんなが盛り上がり、私達に集まってくる。
木こり
「アイツが現れてから木こりの仕事がままならなかったんだ、ありがとう!」
剣士
「あのバケモンはオレが倒したかったのに……どうやったんだよ!?」
女剣士
「あたしにも教えちゃくれないかい?お兄さん1人で倒したの?」
クロード
「私だけでは無い、皆が居たから成し得た事だ」
屈強な男
「じゃあひょろひょろの兄ちゃんもお嬢ちゃんも、そこの坊主も戦ったのかよ!?」
春一
「まあな!俺達にかかれば朝飯前だったぜ!ま、あれは夕飯前だったけどな!」
春一の言葉に更に盛り上がる。
……得意気に言ってるけどアンタ、溺れてただけじゃん!
エプロンを着けたワンピースの店員さんが目をキラキラとさせ近くに来た。
店員
「良かったらサービスさせてください!
お代は結構ですので、どんどん召し上がってくださいね!」
詩乃
「え!?良いんですか!?」
私はメニューを広げ指差す。
詩乃
「じゃ、じゃあこれとこれとこれと、あとこれも!」
春一
「あ!あとこれも追加な!」
身を乗り出して春一も指差す。
ルイスさんが苦笑いした。
ルイス
「いくらサービスしてくれるからって頼み過ぎじゃない?」
詩乃
「大丈夫大丈夫!」
いやぁ!勇者様か~!
なんて良い響き!
そこからは質問責め。
どうやって倒したかとか近くで見た怪物の印象だとか、色々。
私達は運ばれてきた食べ物を口に詰め込みながら、質問に答えていった。
やっぱり強さを求めて集まって来た人達だけあって、興味津々みたいだ。
ルイスさんはここぞとばかりに宿のチラシを配っている。
???
「あんまり旅人を疲れさせるんじゃないよ?
落ち着いて食事も出来やしないじゃないか」
良く通る声がみんなの興奮を落ち着かせる。
その声でみんなが自分の席へと戻って行った。
扉の前には青い甲冑を着た凛々しい女性が立っていた。
金髪のショートカットで左目は前髪で隠れている。
キリッとした蒼眼と綺麗な褐色肌が格好良い。
???
「久しぶりだな、ハリントン」
クロード
「あ、ジャンヌ様!」
クロードは女性に駆け寄り、深々とお辞儀をした。
クロード
「ご無沙汰しております!」
ジャンヌ
「相変わらず堅苦しい奴だな、お前は」
そう言ってフッと笑った。
ルイス
「そちらの方は?」
クロードは女性を連れて私達のテーブルに戻る。
クロード
「紹介しよう、このお方は王族専属聖騎士団第四団長ジャンヌ・ドルレアン様。
私の先輩に当たるお方だ」
詩乃
「東雲詩乃でーす!」
右手を上げ名乗ると、後の2人も続いた。
春一
「阿久津春一でーす!」
ルイス
「ルイス・ヴィトンでーす!」
詩乃
「ルイスさんのフルネーム初めて聞いた!」
私が驚くと、ルイスさんはキョトンとした。
ルイス
「あら、言ってなかったかしら?」
春一
「どっかのブランドみてぇな名前してんなぁ!」
苦笑する春一。
クロードが私達のやり取りを見て眉間に皺を寄せた。
クロード
「コラ、お前達!ジャンヌ様の前で失礼だろう!」
ジャンヌ
「構わんよ、愉快な仲間達じゃないか」
クロードと愉快な仲間達、か……。
どこぞの子供向け冒険活劇みたい。
ジャンヌ
「旅をしている途中で湖のヴォルールを討伐したらしいな」
春一
「なんでアンタもみんなも分かんだよ」
クロード
「言葉遣いに気を付けなさい!」
ジャンヌ
「良いんだ、お前が堅苦しいだけだよ」
クロードにそう言うと、ジャンヌさんは釣竿に目を向けた。
ジャンヌ
「今そんな道具を持って歩いている奴は怪物を倒さない限り居ない。
だから皆、分かったのだろう」
なるほど、確かにこの2本の釣竿は折り畳めないし目立つもんなぁ。
怪物倒しました!って言って歩いてるようなもんか。
ジャンヌさんは近くの空いている椅子を持って、私達のテーブルの近くに置き座った。
長い焦げ茶のマントがひらりと動いた。
クロードも席に着く。
ジャンヌ
「君達は強いんだな、私も見習わなくては」
春一
「強いなんて、まーそれ程でもあるかな!是非とも見習ってくれ!」
だから何でそんなに得意気なのよ!
クロード
「ジャンヌ様も充分お強いではありませんか!
トップの成績を誇る優秀な聖騎士なのですから!」
ジャンヌ
「あ、ありがとう……」
目を輝かせるクロードに対し、ジャンヌさんはどこか浮かない表情だった。
???
「ああ!こんな所にいらっしゃいましたか!」
扉の前できちんとした身なりの男性がそう言い、私達にというかジャンヌさんに近寄る。
黒の燕尾服に灰色のネクタイとベスト、胸元には白いチーフ。
灰色の髪に赤い目。
そして頭の上から上に伸びる、灰色の兎の耳。
???
「おや?こちらの方々は?」
ジャンヌ
「ヴォルール討伐に成功した勇者達だよ」
???
「討伐されたのですか!?」
男の人にしては大きめな赤い瞳を更に大きくさせ、私達に視線を向ける。
???
「なんて素晴らしい!」
詩乃
「ル、ルイスさん……!うさ耳イケメン……カッコ可愛い……!」
ルイス
「アタシ、旅に出て良かったと心から思ったわ……!」
私とルイスさんは目の前のうさ耳イケメンを見ながら、ヒソヒソと静かにテンションが高まっていた。
春一
「アンタ、名前は?」
???
「申し遅れました、私ジャンヌお嬢様の執事を務めておりますジルと申します」
うさ耳イケメンのジルさんは深々とお辞儀した。
春一
「え?ジャンヌって良いトコのお嬢な訳?」
クロード
「ドルレアン家は上流階級に属する貴族だ。
だからあまり無礼な言動は慎んだ方が良い」
ジャンヌ
「だからってあんまりお嬢様扱いするなよ……」
ジャンヌさんは苦笑いをした。
春一
「そんな上流階級のお嬢が何でこんな聖騎士団なんてやってんだよ」
春一の質問にジャンヌさんは遠くを見る。
清々しい表情を浮かべ、語り出す。
ジャンヌ
「私は生まれも育ちもずっとここで、この街が大好きなんだ。
だからこの街の安全は私が守りたい。
それに煌びやかな世界でのんびり過ごすより、泥だらけで戦う方が性に合っているんだ」
詩乃
「へぇ、カッコ良い!舞踏会より武闘会が好きって感じだね!」
私のシャレにジャンヌさんは一瞬驚いたけど、すぐに理解してくれた。
ジャンヌ
「え、ああ、その通りだ!
武闘会の方が好きだ、上手い事言うな東雲!」
褒められてにんまりする私。
ジル
「お嬢様、ここは是非本日の武闘会に皆様をお呼びしては?」
ルイス
「え、参加するの!?私達!?」
ジルさんの提案にルイスさんが大きく驚いたけれど、すぐに否定する。
ジル
「いえいえ!お嬢様のご活躍を皆様に是非見て頂きたいと思いまして!」
ジャンヌ
「ジル、突然そんな事言っても彼らには彼らの予定があるだろう」
困り顔のジャンヌさんに、私達は笑顔で答えた。
春一
「全くもって問題無い!予定は未定だから!」
クロード
「ジャンヌ様も出場なさるのですね!是非拝見させて頂きたいです!」
詩乃
「わぁ!ジャンヌさんの闘ってるとこ、見てみたい!」
ルイス
「この街1番の観光スポットだもん、そこは行かないとね!」
ジャンヌ
「来なくて良いっ!」
突然の大声に静かになる店内。
ジャンヌさんの怒号に固まってしまった。
我に返るジャンヌさん。
ジャンヌ
「……あ、いや申し訳無い……他にも観光出来る所は沢山あるから……」
そう言ってジャンヌさんは店から出た。
ジル
「申し訳ございません、失礼致します」
後を追うようにジルさんも出て行った。
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「どうなさったのだろうか、ジャンヌ様は……」
あんな風に言われてしまっては、見に行く訳にもいかないか……。
私達はとりあえず目の前の大量の料理と格闘し始めた。
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