仮想現実の歩き方

白雪富夕

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第1章第4話 仮想現実武闘会

*2*

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店を出た私達。

詩乃
「うぷ……気持ち悪い……」

春一
「あーもー無理……苦し過ぎ……しばらく飯は見たくねぇな……」

ルイス
「だから言ったでしょ?頼み過ぎじゃない?って」

私と春一は街の広場の階段に座り込んでダウン。
ルイスさんに呆れられてしまっている。
……完全に調子乗ってたわ……。

クロード
「全く、情けないな……この釣竿を持っているのが恥ずかしい」

クロードは釣竿を階段に置いた。

春一
「あー、そうだその釣竿売りに行かねぇとな」

詩乃
「え、それ本当に売るつもりなの?もったいなくない?
怪物倒した証なのに」

春一
「バカだなぁ、だからこそ高値で売れるってもん……う、うえぇぇぇ!!」

詩乃
「ちょ、やだ、私まで貰っちゃ、うえぇぇぇ!!」

ルイス
「ちょっと!こんな所で吐かないでよ!」

ルイスさんが私達の背中を擦る。

ジル
「おや?皆様こんな所で何を……て、え!?だ、大丈夫ですか!?」

たまたま通りがかったジルさんが、私達を見て慌てて駆け寄る。

クロード
「ただの食べ過ぎなので……」

ジル
「食べ過ぎ?
……ああ机の上に沢山料理を置かれておりましたね、そういえば」

少し考えた後、ジルさんが提案する。

ジル
「もし宜しければ屋敷で休まれてはいかがです?」

ルイス
「屋敷って、ジャンヌさんのお屋敷?」

ジル
「ええ、生憎お嬢様は今夜の武闘会の為屋敷にはおりませんが、皆様ならお招きしても宜しいかと」

クロード
「でも、怒らせてしまいましたし……」

バツが悪い顔を見せるクロードに、ジルさんは微笑む。

ジル
「お嬢様は怒った訳ではありませんよ、きっと恥ずかしかったのです。
屋敷に招くくらいならお嬢様も歓迎なさると思いますよ」

クロード
「ではお言葉に甘えて」

クロードは釣竿をルイスさんに渡し、私達をそれぞれ両肩に担ぎ上げた。
腹部が圧迫され、頭が下向いてるから更に吐き気が……。

春一
「その運び方やめろって……!
吐き気催してる奴の持ち方じゃねぇだろ!
うっ……」

ジル
「あの、私もお手伝い致しましょうか?お2人が大変辛そうですし」

クロード
「これは罰も兼ねているので問題ありませんよ」

クロードの鬼!悪魔!



クロードの罰により、私と春一は吐き気を抑えながらジルさんの案内で屋敷へ向かった。
客間に案内され、私達はそれぞれベッドに寝かされる。
ああ、ふかふかのベッド……最高。

ジル
「只今紅茶をお持ち致しますので少々お待ちください」

そう言ってジルさんは部屋を出た。
しばらく待っていると、ティーセットを乗せたお盆を持って帰ってきた。

ジル
「お待たせ致しました」

白い磁器のティーカップにキレイな薄紅色の紅茶を注ぐ。
部屋中に甘い香りが香った。
受け取り、1口飲むと心が落ち着くような気がした。

クロード
「……拝見させて頂きたかったな」

クロードが紅茶に口付けてからボソッと呟いた。

春一
「いくら恥ずかしいからってあんなに怒る事無ぇじゃんか、ツンデレか?」

詩乃
「私も見たかったな……」

ジル
「では、お嬢様には内緒で行きますか?」

ニヤリと笑うジルさんにクロードが大きく反応する。

クロード
「な、内緒!?それは、大丈夫なのだろうか……」

ジル
「皆様もご覧になりたいようですし、私が席をご用意致します」

ルイス
「よし、じゃあ行っちゃいましょう!」

ジャンヌさんには悪いけど、やっぱりカッコ良い女性が闘う所は見てみたい。
ジルさん曰く武闘会は16時から。
私達はここでしばらく時間を潰す事にした。
時間になったらジルさんが呼びに来てくれる事になっている。

詩乃
「……私、お手洗い行きたくなってきちゃった」

春一
「奇遇だな!俺もだ!」

ルイス
「場所分かる?」

私と春一は首を大きく横に振った。

ルイス
「客間に案内されてる間にジルさんが教えてくれたけど、あんな状態じゃ聞けなかったわよね、そりゃ」

苦笑いするルイスさんはクロードに目線を移す。

ルイス
「クロードさん、2人をお手洗いに連れてくわね」

クロード
「……私も行く」

ボソッと呟くクロードにルイスさんは両手を胸の前で握った。

ルイス
「やだ、何その感じ、可愛い……!」

結局4人でお手洗いに行く事になった。
貴族とは言ってたけど、こんな豪邸過ぎるお屋敷で何だか萎縮してしまう。
極力物に触らないでいよう……。
ふと階段の上を見ると、黒髪の男性の姿が見えた。
白いシャツにループタイ、黒いスラックス姿で頭には……。

ね、ネコ耳だぁ!
ルイスさんを見ると、私と同じく興奮している模様。
何ここケモ耳パラダイスなの!?
ネコ耳のイケメンは階段を下りて、私達の前に立つ。
ネコ好きの私には堪らんな!

???
「君達、誰?」

黄色い目でジロっと見られる。

ルイス
「アタシ、ルイスよ!」

詩乃
「私は詩乃です!あ、あなたは?」

???
「君達に名乗る筋合い無いよ。どうせジャンヌのお客でしょ?」

あー、このツンツンした感じ……まさしくネコちゃんだわぁ!

クロード
「もしかして、貴方がジャンヌ様のお兄様のジャン様ですか?
お話は伺っておりました。
私は王族専属聖騎士団第一団長クロード・ハリントンと申します」

ジャン
「ジャンヌが僕の話を……」

少し喜びの顔を見せてくれたけど、すぐに仏頂面に戻る。

ジャン
「ここに居るのは勝手だけど、僕には関わらないでよね」

そう言ってお兄さんは立ち去った。

春一
「何だあのいけ好かねぇ野郎は」

ルイス
「あれが可愛いんじゃない!」

詩乃
「お兄さんはネコ耳なのに、ジャンヌさんはネコ耳じゃないんだなぁ。
見た目もあんまり似てないし」

クロード
「ジャンヌ様は養子だと聞いている。
だからジャン様と血は繋がっていない」

なるほど。
……義理兄妹の恋愛物感があるな、なんて!
キャー!ちょっとやだぁ!!

春一
「お前なんでニヤニヤしてるの?」

詩乃
「へ?いや?何でも無い!」

私達はお手洗いに行き、部屋に戻る。
時間はあっという間に過ぎ、ドアがノックされジルさんが入って来た。
そして私達は闘技場へ向かった。



闘技場に行くと既に沢山の観客でひしめき合っていた。

詩乃
「うっわぁ~!!すごーい!広ーい!熱気~!」

ジル
「さあ!ここがご用意致しました席でございます!」

春一
「見晴らし良いなぁ!S席だな!」

クロード
「こんなに見やすい所だと、気付かれてしまうのではなかろうか……」

ルイス
「大丈夫よ!向こうは試合に集中してるでしょうし!」

ジル
「それでは私はお嬢様の元へ行きますね。どうぞお楽しみください」

ジルさんは深々と頭を下げると立ち去った。
良い席まで用意してくれて、ホント良い人だなぁ!
間も無くして試合が始まった。
多種多様な種族達が自分の特性や特技を活かして闘う姿はカッコ良かった。
何となくプロレスとかボクシングに似ている。
見に行った事は無いけども。

アナウンス
「さて、次の試合はリア・ディクシーVSジャンヌ・ドルレアン!」

クロード
「ジャンヌ様……!」

他の試合はずっとソワソワとしてたのに、急に本腰を入れて見るクロード。
先に入場したのは相手選手からだった。

アナウンス
「身長100センチの小さな体、だけどその力見くびるな!
空飛ぶ骨に跨り華麗に技を決める初チャレンジャー、リア・ディクシー!」


会場は盛り上がる。
そして対面から出てきたのはお待ちかね、ジャンヌさんだった。

アナウンス
「かつては戦場の乙女と恐れられたが只今連敗中!
今宵こそは屈辱を果たせるか!?
伝説をもう一度、ジャンヌ・ドルレアン!」

ん?今のアナウンス……え?

ルイス
「彼女、優秀で強いのよね?」

クロード
「ああ、素晴らしい先輩だった。連敗中だなんて、まさかそんな……」

試合開始の合図で2人は動き出す。
ジャンヌさんは槍を振り回し、空を飛び回る相手選手リアを叩き落とそうするが瞬時に回避される。

リア
「これでもくらえっ!」

リアの乗る空飛ぶ骨の目から出たビームがジャンヌさんを狙う。

ジャンヌ
「ハッ!」

ジャンヌさんも華麗に避ける。
うーん、どっちも強い!
攻撃しては回避して、2人共まだ無傷状態だ。
だけど、試合終了間際一気に形成が崩れた。

ジャンヌ
「うぐっ!」

リアの攻撃が避け切れず、何度も当たってしまっている。

リア
「ヤアッ!」

思い切り加速させ、ジャンヌさん目掛けて飛ぶリア。

ジャンヌ
「ガハッ!」

腹に追突する空飛ぶ骨、そのまま壁に背中からめり込まれる。
壁が崩れ、その中で吐血するジャンヌさん。

クロード
「ジャンヌ様っ!!」

ジャンヌ
「……ハ、ハリントン……?」

立ち上がり名前を叫ぶクロードと朦朧としているジャンヌさんは目が合った。
そこで無常にも終了の合図が鳴った。

アナウンス
「勝者リア・ディクシー!!」

会場は大いに盛り上がっていたけど、私達は静寂の中に取り残されていた。
担架で運ばれるジャンヌさんを、ただ見つめる事しか出来なかった。
屋敷に戻り、食事を取る。
そこにジャンヌさんの姿は無かった。
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