欲にまみれた楽しい冒険者生活

278美形兵士

拓の２度目の休憩所作りの移動が始まった。
村で貴族が派遣した兵士と合流したのだが細身の筋肉質、そして美形揃い。

「我々が護衛を行わせて頂きます。」

まるで少女漫画から出て来たような、一団だった。

「あの、兵士になるのに容姿の基準でも有るのでしょうか？」

一応確認して見るが、その様な事は無いとの回答。
拓が作業を行うのに厳つい男達に囲まれるよりは、未だましと選ばれたらしい。

兵士としての腕は優秀で、作業中の安全を任せることが出来る
拓は美形より漢臭い兵士をと思いながらも、仕事はしっかりこなしていた。
そして、前回同様兵士達にお湯の玉を作り出し、体を洗う手伝いも行う。
その様子を見たガラとレオは笑っていたが、拓としては自分の趣味で対応を代える訳にはいかなかった。

趣味では無くても拓はしっかりと体のチェックをしていたのだが、妙に色気がある。
好きな人には、たまらない光景だっただろう。

問題なく休憩所を作り上げ、村に着くと

「良ければ、町まで同行させて頂けないでしょうか。」

村長からエチゴに打診される。
祭りで店を出すのに、安全に移動を行いたいとの事。
エチゴとしては対応してあげたい気持ちはあるが、金を払って護衛を雇っているため相乗りは良い事では無い。

「エチゴ殿の相乗りは良くない。ただし、我々も町に戻る予定だ。
　我々に同行したらどうだ。祭りの成功は望むところだからな。」

美形兵士が代わりに対応する事に。
町までに寄った村全てで対応することになり、町に着くときにはまるで大商隊の様になっていた。

「しかし、美形の威力って凄いな。」
「確かに村に着くと、女性の態度が一変するよね。」
「拓が厳つい男を見る時と同じだな。」

エチゴの商隊が村に着けば喜ばれるのだが、美形兵士が一緒だと女性が色めき立つ。
確かにこの商隊には美女は居ても、一般的に言われる様な美男子は居ない。
こんな村人、特に女性の反応は初めての事だった。


町に着くと村人達は礼を言って別れ、エチゴ達はそのまま兵士に付いて領主の屋敷へ。
面会した領主のズゲベ侯爵は、恰幅が良く、太い眉毛に鷲鼻、如何にも精力の強そうな風貌をしている。
貫禄は有るがスケベオヤジにも見えてしまい、自分の護衛には美人を選びそうだ。
男の護衛兵士でも美形を選びそうな感じがする。
実際は屋敷の警備等は普通に厳つい漢が多く、休憩所作りの護衛は拓の為の人選だった。

ここでも追加の報酬をもらい食事になったのだが、ズゲベ侯爵は独身のため一族の中で拓に近い年齢の令嬢を同席させていた。
跡取りも、一族から養子を取っていた。

「明日は祭りを見て楽しまれるのですか？」
「その予定です、今から楽しみにしています。」
「では、私が案内させて頂きますわ。」

ズゲベ侯爵からも誘いを受けていた事も有り、エチゴはせっかく回るのならと収穫祭に合わせて予定を立てていた。
明日が、その初日となっている。
久しぶりに盛大に行われる為、近隣の町や村から人が集まるので宿は全て埋まっている為、ズゲベ侯爵の屋敷に滞在する。
それがズゲベ侯爵の目的かとも考えたが、エチゴは拓達の楽しみを優先することにした。

ズゲベ侯爵は普通に対応しているが、令嬢はグイグイと来る。
結局、明日は祭りの案内をしてもらう事になり、食事会は終わりになった。
それぞれに用意してもらった部屋に戻る時、拓はアルに相談すると

「良いぜ、面白いな。」

スケベそうな顔で笑っていた。