8 / 20
神なんて存在するわけない
第7話
しおりを挟む単刀直入に話そう。
和茶、——つまり、目の前にいるコイツは、俺たちが俗に言っている「神」の1人であり、超常的な存在である。
…んー、いや、まあ、信じられないのはよくわかる。
俺だっていまだに信じられない。
神なんていないし、そんな存在についてを考えることすらバカバカしい。
ただ、あの日からだった。
和茶とあの神社で出会った日から、奇妙な日々が始まった。
もう6年目になる。
出会ってから、一緒に過ごし始めて。
もうそんなに経つのかって思う。
6年って言ったら、小学校に入学して卒業するまでの期間だ。
俺の人生で言ったら、半分とちょっとの時間だ。
そう考えるとちょっとやだな…
和茶のせいで俺の人生がめちゃくちゃになった。
詳しくは省くが、コイツのせいで周りからは“クズ”呼ばわりだ。
プライベートなんてあったもんじゃないんだ。
学校生活だって、休みの日だって…
(好きなんだろう?)
「あ?」
(男だったら、少しは勇気を出せ)
「…はいはい」
(私は少し眠るから、くれぐれも邪魔をするなよ?)
「…はぁ」
何が“邪魔をするな”、だ。
そっくりそのまま返してやろうか?
さんざん人の邪魔をした挙句、余計なおせっかいまで働きやがって。
和茶との最悪の日々を誰かに相談したくても、相談できる人間が周りにいない。
何人かは霊感が強い奴がいて、和茶のことを認識してる人もいる。
友達だったり、理佐なんかがそうだ。
理佐っていうのは親戚の子で、俺とは2つ離れてる。
元々妹と仲が良くて、ほぼほぼ毎日家でつるんで遊んでる。
俺のことを「ヒロ兄」って呼んでくる。
実の兄貴じゃないんだが、理佐のとこは女兄弟しかいないから、どうも俺のことを実の兄のように慕ってくる。
めちゃくちゃ霊感が強いせいで、和茶の存在を知っていた。
かといって、俺みたいにはっきり見えるわけじゃない。
あくまで“そこにいる”ってレベルで、気配を感じ取っている程度の話だった。
…はぁ
今日はチャンスだったんだろうか…
お腹は空いてるんだが、どうも箸が進まない。
先輩は俺のことをどう思ってるんだろうか。
嫌いじゃないとは思うんだ。
じゃなきゃ、デートの誘いになんか乗らないだろうし。
「ラインを送った」って言われた時はマジでビビった。
殴ってやろうかと思った。
よりにもよってあの「先輩」に送って、挙句感謝しろとか、どの口がほざいてんだよって感じだった。
和茶が言うように、今日のお礼とか言った方がいいんだろうか?
いやいや、でも…
ピコンッ
スマホと向き合っていると、先輩から連絡が来た。
今日の「デート」のことだった。
まさか…
そう思い、嬉しさのあまりスマホを落としそうになる。
『楽しかった』
文面には、そう書かれてた。
多分お世辞だ。
楽しかったなんて、どこのどの場面を切り取ったらそう思えたんだ…?
我ながら最悪だった。
誰がどう見ても”失敗“だった。
それなのに…
返信の文章を考えるのに、1時間くらい使った。
結局当たり障りのない言葉を使って返すことにした。
文章を打つだけで、こんなに緊張するのは初めてだった。
和茶が寝てて良かった。
起きてたら、また茶々を入れられるに違いないからだ。
ったく、呑気なもんだよ
神のくせにパジャマなんて着んなっつーの。
“神聖な存在だ”って言うんなら、もう少し品性ってもんをだな…
0
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れ果てた俺がたどり着いたのは、圧倒的な自由度を誇るVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は、幼い頃から密かに憧れていた“料理人”。しかし戦闘とは無縁のその職業は、目立つこともなく、ゲーム内でも完全に負け組。素材を集めては料理を作るだけの、地味で退屈な日々が続いていた。
だが、ある日突然――運命は動き出す。
フレンドに誘われて参加したレベル上げの最中、突如として現れたネームドモンスター「猛き猪」。本来なら三パーティ十八人で挑むべき強敵に対し、俺たちはたった六人。しかも、頼みの綱であるアタッカーたちはログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク・クマサン、ヒーラーのミコトさん、そして非戦闘職の俺だけ。
「逃げろ」と言われても、仲間を見捨てるわけにはいかない。
死を覚悟し、包丁を構えたその瞬間――料理スキルがまさかの効果を発揮し、常識外のダメージがモンスターに突き刺さる。
この予想外の一撃が、俺の運命を一変させた。
孤独だった俺がギルドを立ち上げ、仲間と出会い、ひょんなことからクマサンの意外すぎる正体を知り、ついにはVチューバーとしての活動まで始めることに。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業。
そんな俺が、仲間と共にゲームと現実の垣根を越えて奇跡を起こしていく物語が、いま始まる。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる