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俺の部屋を勝手に漁るな
第28話
しおりを挟む祐輔の家には、昔よく遊びに来ていた。
庭にあるブランコと、広い敷地。
裏庭から入れる森に入って、カブトムシを採りに行ったりしてた。
夏休みに。
「母さん、無事に帰ってきたぞ」
おじさんは家に着くなり、荷物をテーブルの上に置いて、裸足で茶の間の奥に行く。
祐輔も来いと言われ、靴を脱いだ。
畳が敷かれた居間を抜け、襖を開ける。
網戸から涼しい風が入ってきていた。
レース状のカーテンがゆらゆらして、中庭の木陰がこっそりと顔を覗かせている。
木の匂いがする。
それは昔からだ。
山の裾野から降りてくる森の匂いが、鼻の先をくすぐる。
窓の向こうに見えるガードレール越しの田園風景が、長閑な空気を運んでいて。
「ほら、ボケッとしてないで」
おじさんに促され、畳の上に座った。
線香の煙が、ふわりと漂う。
カーネーションの花と、うすしお味のポテトチップス。
「母さんがきっと守ってくれたんだ。お前のこと、天国で心配してたと思うぞ」
おばさんの顔を見るのは何年ぶりだろう。
なんだか、ずいぶん昔のことのように思えた。
靴を脱いで上がった先で、こうして、手を合わせたのは。
「すまんな。うちのオヤジ、昔から信心深くて」
「別に、気にしないけど」
「…?なんか言ったか?」
「ああ!いや、なんでもッ」
祐輔のお母さんは、私が小学生の時に亡くなった。
突然だった。
訃報が届いたのは。
当時のことはよく覚えてる。
実の母親のように、私はおばさんのことを慕ってた。
程よい塩味のおにぎり。
ジャガイモがゴロゴロしてたカレー。
畑で野菜を作って、一緒にとうもろこしを植えたこともあった。
毎年夏になると、私とおばさんで植えたプチトマトの苗が、よく育ってた。
祐輔がトマト嫌いだったから、なんとか食べさせようと、2人で画策して。
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