サマーバケーション

平木明日香

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第39話

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 博多駅に着いたのは昼の12時を回った頃だった。

 そこから電車に乗り換えて、『春日駅』っていうところまで行った。

 博多駅と違って小さな駅で、長閑な街並みが、階段を上った先の通路から見えた。

 線路沿いのフェンスに、ずらっと敷き並べられた自転車。

 トタン屋根の古びた柱が、閑散とする駅のホームに並んでいた。


 えーっと、先輩は…っと。


 「そっちじゃなくね?」

 「でも駐車場の近くにいるって」

 「南って言ったらあっちだろ?」


 入り口を出たところにあるロータリー。

 スマホを見ながら、待ち合わせ場所を探してた。

 『駅の目の前の駐車場』

 でも、どこの駐車場のことだろう??

 駅を出て向かい側の道を歩き、キョロキョロ見渡してた。

 目の前…

 目の前って言うけどなぁ


 「おーい!」


 コンビニの近くまで歩いてると、後ろから声が聞こえてきた。

 先輩だ。

 見るからに優等生かつスタイル抜群の“スーパーウーマン”が、そこにはいた。


 (あれが、葵先輩…?)

 (そうそう)


 最初、話しかけていいのかどうか迷った。

 本当に実在したっていう安堵感と、想像以上の美女が出現したことによる驚きとが混ざって。

 開いた口が塞がらなかった。

 …なんで、こんな人と付き合えてるんだ…?

 何かの間違いじゃ…


 「祐輔君!」


 葵先輩は大きく手を振り、満面の笑みで駆け寄ってきた。

 目がくりくりだ。

 服装はすごくラフで、露出度が高い…

 ノースリーブにデニムのショートパンツ。

 半袖の日焼け跡が、うっすらと二の腕に残っていた。


 「すいません、待ちましたか…?」

 「全然!そんなことより大丈夫?事故、ニュースで見たけど…」


 怪我はないかってジロジロ見てきた。

 大丈夫です。

 この通りピンピン…



 ピトッ…………………



 ………………………………ヒャッ!!


 おでこに手を当てられ、体が硬直する。

 ふわっと甘い香りがした。

 オレンジの匂いだ。
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