COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

じゃがマヨ

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バトルフェスティバル 地区予選編①

第74話

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 空間に張り巡らせていた水のバリアは、敵の動きを封じ込めるためのものじゃなかった。

 空間内、——つまり大気中に漂う相手の魔法流域に、【属性間⇄エネルギー間】の“ノイズ”を走らせるため。

 天使は自らの体内で魔力を生成し、それを出力する。

 ただ、戦いの場においてそれはスキルの一部でしかなく、周りの環境、“魔法を展開できる場”が、魔力を行使する上での重要なファクターになる。

 リオン君は大気中に水蒸気を混ぜ込ませ、それを網のように張り巡らせていた。

 網は相手の周囲を囲み、あらゆる方向を包囲していた。

 水の魔法流域と風の魔法流域が、互いのテリトリー内に於いてぶつかり続けていた。

 大気の壁に押し流れそうになる水の気体と、自由な動きが制限される風。

 わずかな歪みだった。

 激しくぶつかり合う2つの魔法流域の臨界線で、相手の行動が、ほんの微かに“ブレた”。



 「…がはっ」



 湿った空気の中で躍動する吐息。

 見開いた目。



 相手が試みようとしていた脚力。

 近距離から中距離へと離脱するために必要な魔力とその「範囲」は、おそらく数秒の間で充填できるはずだった。

 ところが、リオン君が展開していた水の流域に足を取られ、後退するための一歩が遅れた。

 その最中に「風」が千切れた。

 音のない振動が瞬く間に空間の底を衝き、静寂が訪れる。

 互いの動きが静止していた。

 溢れる吐息だけが、静寂の最中に揺れ動いていた。



 ズッ



 相手天使の「心臓」は、すでに地面にあった。


 ——“地面“に。


 リオン君の右手から放出された水の”詠唱魔法“は、相手の胸を貫いたあと、フィールドの地面をも深くくり抜いていた。

 地面に着弾するまでのスピードでさえ、目で追えなかった。

 空気に穴が空く。

 物差しで線を描く。

 まるで針に糸を通すように、それは視えた。
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