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バトルフェスティバル 地区予選編②

第102話

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 ドッ


 つかず離れずの距離の中心で、先輩は攻撃を積み重ねていく。
 
 敵の思考も行動も、全て予測した上での行動だ。

 シールドの修復は織り込み済みだった。

 敵の攻撃が及ぶフィールドの「中」だろうと、手数を抑えるつもりはなかった。

 修復が間に合わない距離へ、——翔ぶ。

 先輩の脚力はより一層深く地面の懐を掴み、柔らかい弾力とその“反動”を帯びていた。

 シールドの周囲に伝播していく電流の経路は、入り組んだ回線のように線と線を交錯させ、また、満遍ない包囲網を結んでいた。

 相手も簡単には近づけさせない。

 その意向が反映されたのは、攻撃を繰り出す先輩の立体平面上、——その“斜線”だった。

 『サンドニードル』と呼ばれる岩の弾丸が、シールドの表層から飛び出してきた。

 先輩が移動する、その経路の軌道線上へと。

 
 飛び出してきた弾丸は、鋭い槍のような形状をしていた。

 全ての方向へと“同時に”飛び出したわけじゃない。

 先輩の移動方向、角度。

 その順序を辿るように狙いを澄ませ、発射する。

 シールドとの距離が近ければ近いほど被弾する確率が高くなる。

 後方への跳躍。

 それと、——ステップ。

 距離とタイミングをうまく組み合わせながら、先輩は被弾しないように左右に動いた。
 
 サンドニードルは直線的な軌道でのみ、向かってくる。

 避けるのは造作もなかった。

 いや、——“予測”できた。

 シールド表面上の微弱な電磁波の変化量を捉えれば、どこから発射されるのかを認識できる。

 発射されるよりも先に動く。

 例え、動いた先に飛んできたとしても——


 キュッ


 スニーカーの底が擦れる。

 バチバチッという火花のとともに、強烈なサイドステップ。


 距離を詰める。

 接近する。

 シールドの形状は歪な形へと変化していた。

 ドーム状だった輪郭は棘が生えたように凸凹に逆立ち、その全身を細かく尖らせていく。

 おそらく、接触範囲を狭めるためだろう。

 シールド全体を棘状の甲皮で覆えば、攻撃できる箇所を限定できる。

 球面であれば衝撃が直に伝わりやすいが、形状によっては分散できる。

 また、迎撃態勢の「手段」としても。
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