COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

じゃがマヨ

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深淵からの使者

第237話

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 暗闇は球体内部から生まれていた。

 バケツから水をこぼしたように、黒が上空に侵食していく。

 外へと働く力。

 その力の向きは、地上に向かって滴るように降りかかった。

 膨張する曲線。

 肥大化する魔力。

 重力が“落下”する。

 その形容の矛先にあるものは、すべてを圧縮しようとする“力”だ。

 球体は急激な変遷を見せていた。

 形状そのものを変化させ、花を開くように滑らかにその面積を広げていた。

 ビデオの「逆再生」ボタンを押したかのような挙動だった。

 一度はある一点に向かって収束し、球面上に丸まりながら規則正しくまとまっていたが、今度はその逆だ。

 空の中心には、無秩序に入れ乱れる魔力のうねりがあった。

 球体の表面はすでに乱雑な模様に変化していた。

 光も通さないほどの濃い厚み。

 一見するとそれは靄のようでもあったが、どこか、性質が違う…


 深い闇。


 「影」と呼ぶにはあまりにも禍々しく、重い。

 空間が歪むような、大気の中に、「溝」ができたかのような——



 時間の進みは穏やかだった。

 しかしそれは、“夜月の視点に於いて”は、だ。

 躊躇いがあったとはいえ、上空に広がる暗闇に対処しようとしたのは、この場面に於いて彼女1人だった。

 もちろん、この場にいた全員が次の行動に向けて舵を取っていた。

 ただ、キョウカにしても真琴にしても、反応が少し遅れていた。

 言わずもがな、キョウカの意識は半歩下がっていた。

 球体が地上に向けて落下し始めるまでの時間に、キョウカの理解はまだ追いついていなかった。

 白蓮の消失は、それほどまでに“不可解”だった。

 ダメージを与えられなかった、というならまだしも、自らの魔力が球体内部に取り込まれたかのように姿を消したのは、予想だにしていないことだった。

 
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