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深淵からの使者
第243話
しおりを挟むランクは第八位だが、彼女の能力には随一の“サポート力”がある。
それは緑間との連携に於いて顕著に現れていた。
「イマジナリー・フレンド」によって生成された【戦闘用のプリン】を、モモカは“スライム”と呼んでいた。
彼女が“スライム使い”と呼ばれている理由は、ここにある。
彼女の“空想”によって具現化されたスライムは、全ての魔力を透過する能力があり、【魔力と魔力の分子上の境界面を繋ぐ媒質】としての役割を果たすことが、構造上明らかになっていた。
モモカも緑間と同様、夜月の意識下に於いて行動を取っていた。
『グリーン・スライム』
緑間のガムによって極度の伸縮性を持ったスライムは、緑間の魔力を介しながら巨大に膨れ上がっていた。
スライムはモモカの魔力によって形成されているが、重要なのは、”外部からの魔力の供給“によって、体内の魔力密度=魔力濃度を高めることができるという点だ。
本来、天使同士は外部からの魔力を共有することはできない。
リンがカーティスの魔力を干渉できたのは、彼女の「超電導」の特性があってこそだった。
しかも「超電導」はあくまで“場”にある魔力流域、もしくは周囲の魔力と互換できるという能力で、自らの魔力総量を高めたり、体内に巡る魔力濃度を強化することはできない。
同じ属性を持つ天使同士であったとしても、互いの魔力を重ね合わせ、天使自身が持つ魔力総量を変えることはできない。
これは、原理としては【容器の中に入っている液体】がそうだ。
ペットボトルを水の中に入れても、蓋がされている限り中の容量が増えることはない。
逆に蓋が開いていたとしても、ペットボトルの容器の容量自体は変わらず、中に入る量そのものが増えることはないだろう。
天使とは、言い換えれば【魔力を納めるための容器】である。
彼らの細胞レベルや容器としての容量を強化しない限りは、“自らの持つ魔力総量を超えて魔力を扱うことはできない”、ということに留意しなければならない。
その点、モモカの生成した”スライム“は違った。
彼女のスライムはいわば外部デバイスのようなものであり、彼女の体からは離れた「独立的な存在」である。
そしてそのもっとも最たる点は、スライムがあらゆる魔力と結合できる純粋な「元素核」を持っているという点だった。
それはつまり、緑間の持つ魔力を100%共有できるということでもあった。
あらゆる細胞、物質と結合することができる水。
いわば「万能の物質」と呼ばれ、あらゆる魔力に対して適応・順応できる特殊な構造を持っていた。
ありとあらゆる細胞・物質に分化できる分化万能性と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を持たせた液体状の媒質、と言い換えることもできる。
緑間は彼女のスライムを介し、「ガム」の能力を展開していた。
モモカの魔力を介した「バブルガム」の物質的な強度は、通常よりもより強固で、頑丈なものとなっていた。
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