COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２５３話

　バンッ——


　風の層は、チサトの足を支えるだけの厚みを持っていた。

　一種の壁の役割を果たしながら、足の裏側をキャッチする。

　チサト独自の空間。

　壁を蹴る音が、空気中に波紋を広げる。


　『ジェットストーム』


　直線系の攻撃魔法。

　右手に溜め込んだエネルギーをボール状に圧縮しながら、指定した狭範囲に衝撃波をぶつける。

　衝撃波の範囲自体は、広めることも狭めることもできる。

　キョウカを持ち上げた「エアリアルドライブ」と違う点は、それが対象物に対し、ドリルのような直接的な接点を持っている部分だ。

　エアリアルドライブは、あくまで周囲にサークル状の突風を引き起こす魔法に過ぎない。

　攻撃魔法としての役割もそうだが、風そのものを空間内に放出することで、移動手段としての補助魔法や敵の攻撃を防ぐ盾としても活用することできる。

　その点、ジェットストームは違う。


　チサトが踏み出した足の先で、風の層が砕け散る。

　それはその“層”が、あくまで最小限の厚みを持っていたからに他ならない。

　空中で移動するには十分だった。

　他の天使が踏み台にするならまだしも、ここはチサトの風域圏だ。

　縦の移動も横の移動も、水の中の魚のように滑らかだった。


　ボッ


　放出されるエネルギー。

　命中させるには十分な距離だった。

　ましてや相手は防御姿勢を取っていない。

　ジェットストームは敵を直接弾き飛ばすだけの物理的な「硬度」を持っている。

　文字通りそれはドリルであり、鑿岩機のような鋭い威力を持っている。

　軽やかな動作からのステップ。

　回転する動作の先端から、高速で動く“渦”が、確かな実線を帯びていく。