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獄炎蝶
第285話
しおりを挟むただ、やはり「受け身」になっていたことに変わりはない。
それでも、敵の位置をある局所的な範囲に固定できたこと、その事実は、この場面に於いて有効な時間を提供することに成功していた。
より重要なことは、敵の行動がどのように転んでいくかを、一つの「枠」に“収められるかどうか”だった。
当然、あらゆる局面に於いて“絶対的な範囲”は存在しないと見るべきであろう。
単位時間あたりに生じる運動量や、三次元上に広がる空間の繋ぎ目を考えていく場合、部分的にもエネルギーの向きや位置が固定される範囲は、“安定”こそすれ、100%の固定値を持つことはない。
この点に着目した時、敵の位置や行動をコントロールするという意味合いは、あくまで“流動的な位置関係と時間間隔の中”に終始する。
場面に応じて適切な選択や行動は分子レベルで変化し続ける分、その変化量の中にどれだけ漸近的に「距離」を縮めていけるかが、一つの確率を収束させる上で重要な足掛かりになる。
場面、——1つの運動場の仕事率に於ける1つの「枠」は、一種の「確率変動場」に他ならない。
サイコロを振れる領域にサイコロを転がす。
そうしてその目が「狙った目」になるかどうかの点を、いくつかの条件の中で常に判定し続ける。
坂本が誘導した「場所」は、ある一定の範囲内で、敵が起こせる行動の「量」を“限定させるだけの広さ”を運んでいた。
地面の、中。
——そう、真琴が弓を引くまでの時間と、その狙いが“定まる”までの。
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