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まだ、寝てたいんだけど

第29話

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 「…うまっ!!!」


 味に感動していると、2人が帰ってきた。


 「お、食ってる食ってる」


 呑気なおかんのことを睨むが、いい塩加減のおにぎりに思考が持っていかれる。

 女はがっついている俺を見ては、クスクス笑っていた。

 …呑気なヤツだ。

 こちとらどうやって追い出そうか考え中だってのに。


 「しっかり味わって食べんさいよ?せっかく作ってくれたんやから」

 「おかんが作れや」

 「私が作ったら文句言うやろ?あんた」


 それはごもっともだが、それが母親の言う言葉かね?

 どうせなら、文句を言われないような料理を作って欲しい。

 不味いと言ったらゲンコツを飛ばしてくるくせに、少しも成長しようとしないもんな?

 俺だけだぞ?

 部活の弁当にコンビニおにぎり持っていくのは。


 「ね、海行かない?」


 朝メシを食べ終わる頃に、女はそう催促してきた。

 海、か。

 なんでわざわざ…


 「キャッチボール、するで?」

 「キャッチボールゥ??」

 「せっかくいい天気なんやから」


 確かにいい天気ではあるが、なんでお前なんかとしなきゃいけない。

 しかも「海」で。

 正直今日は一日中寝転んでいたいんだ。

 せっかく部活も休んでるわけだし。


 「ええから行くで!」


 食器洗いはおかんがやるって言って、グローブとボールを持たされた。

 女は俺の手を引っ張り、自転車の後部座席に座る。

 …いや、行かないって

 こんな朝っぱらから、何が嬉しくて行かなきゃいけないんだ。

 つってももう9時だけど

 そんなことはいいんだよ。

 部屋に戻ろうとすると、階段前に立ちはだかった。

 「千冬に会いに行くで」と、語尾を強めながら。
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