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嘘だろ!?

第76話

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 ジャリッ…!


 地面と靴が擦れる音が聞こえ、女の影が飛び立つように視界の片隅に動いた。

 海と街とを横断する線路。

 遮断機のポールは、その真ん中にあった。

 赤いランプが、線路とその内側の境界を隔てながら。


 ——誰だってわかることだった。

 その“向こう側”に行けないことは。


 ドンッ…!


 地面の底を掴んだスニーカーの底が、一瞬の間変形する。

 それは踏み込んだ足の力が、つま先の先端に触れて、重力の流れていく方向を掴んでいたからだ。

 前に進んでいこうとする力が、地面の外側へと脱出しようとする。

 重力が地面にぶつかる時間差は、ほとんどなかった。

 ただ、前のめりになった女の体が、空中に解き放たれたように“波”の中を動いていた。

 躍動する時間。

 交錯する実体と影。

 自分が目にしているものが何かを、すぐに理解することはできなかった。

 だって女は、白線の“内側”へと行こうとしていたんだ。

 勢いのままに飛び出した足を伸ばし、ポールの向こう側へ。
 

 え……!?

 と、視点が止まった。

 しかしその時にはもう遅かった。

 女は線路の上に立っていた。

 猛然と近づいてくる電車の目の前に。
 
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