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ライバル

第120話

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 「…追いつかんとあかんのや」

 「…は?」

 「もう間に合わんことがあるかもしれん。…でも、諦めたくないんや。勝負は最後の最後までわからんやろ?」


 言ってる意味がわからない。

 それはずっとだが、ここにきてそれはエスカレートしてる。

 ふざけてる様子はない。

 きっと、そんなつもりはないんだろう。

 でも、だから余計に、こっちは困ってる。

 俺の力が必要だとか、千冬に会いに行こう…だとか。

 …挙げ句の果てには、「運命を変える」なんてふざけたことを言う。

 そんなこと急に言われても、真顔ではいそうですかとは答えられない。

 伝わるでしょ?的な感じで、言うセリフじゃない。

 内容的にも、流れ的にも。


 「とりあえず、甲子園に行く」

 「…はぁ??」

 「未来で、あんたは甲子園に行ったんやで?」


 …甲子園に…行った?

 誰が?


 真顔で聞き返した。

 …聞き間違いじゃないかと思い。


 女は言うんだ。

 それが、さも当たり前のように。

 未来で、俺が、“甲子園に行った”って。


 「ちょお待て」

 「ん?」

 「ん?やないわ。どういう意味やそれ」


 「未来」っていうだけでも信じられないのに、よりにもよって俺が甲子園に行っただぁ?

 あり得ないだろそんなの。

 この部を見てみろよ。

 奇跡が起きたって、せいぜい3回戦止まりだ。
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