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好きっていうかなんていうか
第188話
しおりを挟むそこに「答え」なんてないのかもしれない。
だんだんとわかったんだ。
野球を続けていくうちに。
千冬の球を、受けているうちに。
俺たちには初めから「明日」なんてものはない。
千冬はいつも言ってた。
“急に速い球を投げられるようになるわけじゃない”って。
最初はよくわからなかった。
そんなの当たり前だろって、思う自分がいた。
だけど、千冬的には当たり前じゃなかったんだと思う。
結果を出すには「今日」しかない。
そうやって、いつも練習に打ち込んでた。
先のことなんて考えてなかった。
いつだって、全力だった。
手を抜く暇なんてなかった。
千冬にとって「ストレート」っていうのは、きっとそういう意味だった。
明日よりも今日、今日よりも“今”。
——そんな時間の先端に追いつけるように、思いっきり振りかぶって。
千冬がいなくなって、いつも、千冬の姿が目に浮かんだ。
もう二度と一緒に、グラウンドに立てない。
そんな気配が頭の片隅に掠める度、明日が来ないって思った。
千冬のストレートが思い浮かぶんだ。
理屈とかじゃなく。
だから俺は追いかけた。
千冬が目指したストレートに追いつきたかった。
それに理由はなかったんだ。
もう二度と、会えないとわかっていても。
…だから、「好き」とか、そういうんじゃない。
もしかしたら、そう言えるのかもしれない。
俺にとっての「明日」が、千冬の中にある。
そんな気がする。
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