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俗に言うアレ

第212話

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 外に出ると、入口横の昇降口に、一之瀬さんがいた。

 他のクラスの女子と何か話してた。

 でかいバックを担いでる子が何人かいるけど、テニスラケットとかじゃないよな?

 よく見ると、金色の物体を手に持ってる子がいる。

 トランペット??

 一之瀬さんは確か、チア部だったっけ?

 チア部でも、時期によっては吹奏楽部と合同でやってるらしい。

 文化祭の共演で、今はよく合同で練習してるって言ってたんだ。

 ってことは、吹奏楽部の子達かな。

 それにしてもデカい。

 背の半分くらいはある。

 めちゃくちゃ重たそう。



 「ほんならまた明日な」という声が聞こえた。

 話してた女子たちに手を振って、俺の方に向かってくる。

 …まさか、本当に手伝うつもりなのか?

 一之瀬さんは、今日は部活休むって言ってた。

 記憶喪失の件もそうだが、「人探し」についても、彼女に話していた。

 それで、学校が終わった後に須磨高に行くって言ったら、「手伝ってあげる」って言われたんだ。

 手伝うって言っても、別に1人でできないようなことじゃない。

 それにアイツの顔も知らないだろ?

 だから、大丈夫って言ったんだ。

 行くだけ行ってみるだけだし。


 「おっそいなぁ」

 「ほんとに手伝ってくれるん?」

 「そもそも今日は映画見る約束やったんやけど?」


 そういえばそうでした。

 悪いけど、非日常的すぎて全く現実感が持てない。

 彼女は半ば不貞腐れたような顔をして、ほっぺたを膨らませてた。

 ごめんごめん。

 ちなみに彼女には、“本当”のことを全部伝えてる。

 あまりにも親身になって聞いてくれるから、一から整理して伝えていた。

 千冬との打ち合わせの件も含めて。
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