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俗に言うアレ

第211話

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 体育の授業が終わって、放課後を迎えた。

 ホームルームの後、ガヤガヤと騒がしい教室の中で、部活に行こうとしてる千冬に話しかけた。

 朝にも話したように、俺は今から須磨高に行く。

 行っても見つからないかもしれないが、なにかわかるかも。


 「部活は?」

 「今日は休むって言うたやろ」

 「ハイハイ。まぁ頑張り」


 千冬がどう思ってんのか、全く掴めない。

 今日も一日ろくに話すことがなかった。

 フォローしてくれるのは一之瀬さんだけで、千冬とは時々目が合うくらいだった。

 俺が思うように話しかけられなかったっていうのもあるが、それにしてもだな…

 朝の話じゃ、協力してやるってちゃんと言ったよな?

 なんで「記憶喪失」なんて言ったんだよ。

 すげー困ったんだが?

 今すぐに問い詰めたい気分だった。

 マフィン代を返せほんとに。

 ただでさえ手持ちが少ないんだぞ?


 下駄箱に行って靴を履き替えた。

 靴の場所がどこだったかいまいち思い出せなかったが、何とか思い出せた。

 一日だけじゃ全然把握できない。

 トイレとか階段の場所とかならもう頭に入ってる。

 けど、他の場所はからきしだ。

 どこに何があるのかがさっぱりわからん。

 いやまあ、一日いたからなんとなく把握してはいる。

 教室が何階にあるかとか、体育館の行き方とか。
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