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夏の花火

第310話

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 …どういう…ことだ…?


 絶句した。


 言葉は出てこなかった。



 …今、なんて言った…?



 結婚って言った…?



 誰と、誰が?



 いや、


 いやいやいやいや



 …え?



 …“結婚”…?



 …千冬と、…俺が…?




 「びっくりしたやろ」

 「…そりゃ」

 「信じられん?」

 「信じられん…」

 「キーちゃんを救うために必要なのは、過去でも、未来でもない。壁を越えるしかないんや。「時間」そのものの」


 開いた口が塞がらない。

 女の言葉は頭に入ってこなかった。

 入ってこないというか、何も考えられないっていうか…



 け、けけ


 ケッコン?!?


 ケッコンってあのケッコンだよな????


 間違いないよな??


 でも、なんで?!?!



 「落ち着け」

 「お、おおう」

 「重要なのは、あんた自身の足で、世界を変えるしかないってこと」



 …意味がわからない


 水を飲みたくなって、デッキの後ろにある水飲み場に向かった。

 思いっきり蛇口を捻る。

 水が冷たい。

 勢いよく出し過ぎたせいで、髪の毛がびしょびしょになった。

 だけど、そんなことはどうでもよかった。

 頭の中は、「結婚」というワードがびっしり埋まってた。

 整理しようにも整理できなかった。

 テトリスでうまくブロックを消せずに、どんどん沼っていくような、あの感じ。

 沼りすぎて、「結婚」がなんなのかを冷静に分析してしまう始末…


 あれだよな?

 結婚とはつまり、男と女が愛を誓い合う…


 確か…うん



 で?


 え、なんで?

 
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