上 下
322 / 394
トンネルの向こう

第320話

しおりを挟む

 臨港道路を突っ切って、神戸中央医療センターの前を通った。

 ポートアイランドは、日本で有数の先端医療技術の研究ゾーンでもある。

 街中にはない巨大要塞のような研究施設や、奇抜なデザインのセンタードーム。

 敷地の広い各施設の建造物を挟んで、嘘みたいに開けた土地が、ガントリークレーンが並ぶ港まで続いていく。

 まるで別世界なんだ。

 この場所は。

 タイムスリップしたかのように街並みが変わって、遠い外国に来たみたいに、ガラッと雰囲気が変わる。

 港を目指して走っていると、大手企業の超高層ビルが突き出したように現れる。

 その左手に見える交差点を横切り、歩道橋をくぐり抜けた先にある一面ガラス張りの空港ターミナルは、どこか知らない場所へと誘ってくれるように大きい。

 ポートタワーよりも背の高い建物。

 キリンが首を持ち上げたように整列する電波塔。

 島の至る所に建てられた最先端の建築物は、近未来の都市のように新しかった。

 ゴミゴミした圧迫感も、排気ガスの舞う騒がしい喧騒も、どこにもない。

 整備の整った道路も、道沿いに続いていくレンガの舗装も、街中の狭い路地裏とはまるで違った。

 広い道路の両隣に過ぎていくだだっ広い景色は、大空の下に広がる空中庭園のように開放感があった。

 臨港道路の上を走っていく巨大な貨物輸送車は、普通のトラックよりも何倍も大きいコンテナを運んで、渋滞のない道の上を走っていた。

 ——時折、滑走路から飛び立つ飛行機が、街路樹の葉を揺らしながら。

しおりを挟む

処理中です...