上 下
353 / 394
100億光年の時の彼方で

第351話

しおりを挟む

 「そういえばあんた、コウに変なこと言った?」

 「言っとらん」

 「昨日あんたとキャッチボールせぇって言われたんやけど」

 「え?」

 「なんか聞いとらん?」

 「…いや」


 アイツ…

 余計なこと言うなよ。

 いつ言ったんだそんなこと。

 大体そんなこと頼んだ覚えはないぞ。

 キャッチボール?

 練習でってこと?


 「部活の時や」

 「昨日はコウとキャッチボールしたけど」

 「断ったからな」

 「あ、そう」


 アイツに余計なこと言わなきゃよかった。

 …つーか、アイツが言い出してきたんだよ。

 「最近おかしいぞ」って。


 「絶対なんか言ったやろ?」

 「言っとらんって」

 「ならええけど」


 ギクッてなったんだ。

 アイツ、俺の話は信じてくれないくせに、妙に勘が鋭くて。

 そりゃしばらく挙動不審だったから仕方ないのかもしれないが、まさか千冬のことを言われるとは思わなかった。

 ホームルームが終わって掃除してた時だ。

 なんかあった?って、聞いてきたのは。



 その時は別に大した話にはならなかったが、ちょいちょい突っ込まれるんだよな…、あれ以来。

 一体どこで勘付いたのか知らないが、俺からしたらいい迷惑だ。

 千冬のことはいいから、少しは俺の話を信じろっつーの。

 難しい話なのはわかるけど。



 「さぶっ」



 朝露が街の上に降りてきてる。

 1週間前はそんなことなかった。

 まだ、半袖で十分くらいだった。

 暖房とは無縁だって思ってたのに、空気が冷たい。

 明日から手袋しようかな。

 ゴツいのじゃなくて、薄手のやつ。



 「もう暖房つけとん!?」

 「寒いし」

 「早くない?」


 風邪引くかと思ったんだって。

 今日の朝はとくに。

 夜はそんなことなかったんだけどなー

 さすがに掛け布団1枚じゃ耐えられん。

 毛布を出してもいいけど、いちいちクリーニングに出すのがめんどくさいんだよな。

 衣替えの時期に。



 「今使わんといつ使うねん」

 「暖房つけりゃいい話や」

 「電気代節約せぇよ」

 「大して変わらんやろ」

 「変わりますー」

 「去年そんなことなかったけどな」

 「普段から節約できてないからやろ」

 「してますが?」

 「どこらへんを?」

 「こまめに電気消しとる」

 「ほんまに?」

 「ほんまほんま」


しおりを挟む

処理中です...