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バックストーリー集
バックストーリー No.10「シン・ティルモディア」
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NO.10 並行世界線0042
僅か15歳にして双剣を巧みに操り、まるで自分の手足の様にして使いこなす。
名門貴族家のティモルディア家長男の「シン・ティルモディア」はその圧倒的な双剣の才能を惜しみなく発揮していた。
幾多の模擬戦、大会を巡って尚不敗。
滑るかの様に、そして嫋かに相手を赤子の如く簡単にいなす。
そんなシンの戦う姿に、多くの観衆は魅了され家族はそんなシンに強い期待を向けていた。
シンは高い社交性も持ち、誰とでも打ち解けられる性格。
勉学や他の事、凡ゆる面において非凡な才覚を持っていた。
そんなシンは、正に完璧超人。将来が約束されたも同然と言える程の、非の打ち所がない様な人物だった。
――下らない、全てにおいて…。
しかし、シンは何も満たされていなかった。何においても、生き方も自分の信念も何も。
全てにおいて満たされていなかった。
何もかも、何もかも嫌で仕方ない。
他者からの評価なんて全てゴミと同格だ。
持て囃す、世辞、将来的価値、自身の地位の為、他の人間はそんな事ぐらいしか考えていない。
周囲の評価、誰かからの信頼。貴族社会において高い位に昇る為にはそれぐらいの事は出来て当然だが、シンはそれが嫌いだった。
自分は何がしたい?
全てにおいてハイスペック、何をやらせても100点を取れる様な人物。
正に天才。しかし、シンは天才である自分は何なのか問い詰めている。
完璧に出来るのは何故か、日々両手で剣を振るう自分は一体何だと言うのか。
そして本当になりたい『自分』が何なのか、シンはその答えが分からずに日々苦悩に悩まされ続けていた。
他者を撃破する様にして、無慈悲に剣を振るう自分?
勉学において常にトップに立つ自分?
女を囲って呑気に暮らす自分?
―――全てにおいて間違っている!
彼の願いなんて、存在しない。
求めるのは、何でもない。クズ共め、奴らは何も理解していない。
目先の事しか分かっていない馬鹿の集団だ。
求婚してくる若い女共も、所詮は自分に対する将来的価値しか見ていない。
いくら容姿が整っていようが、そこに愛など存在していない。
所詮は金の問題だ。将来楽して生きていける為に、地位を欲するが為に自分に嫁ごうとする。
そんな未来は望まない。そんな未来が来るぐらいなら、自決してさっさと死んでしまう方がマシな話だ。
それに、好きになりたい人ぐらい自分で選びたいものだ。
出来るのなら、自分を引っ張ってくれる様な優しい年上の女性が良いものだ。
◇◇
だが、世界は何一つして自分の事など理解していない。
優れているからなんだ、他の人より上手く出来るから何だと言うのだ。
結局、状況が好転する事はなく時間は自分の事など気にする事なく過ぎていく。
必要ない、この世界に生きているのが辛い。
そう感じて、夜に家の外に出たシンは双剣を引き抜く。
月明かりの様な光が空から照らす中、シンは双剣を握り締める。
月光の様な光に反射して、ギラギラと光る銀色の刃が眩しい中で…。
その月明かりが消える。
あぁ、あれだ。あの霧だ…。
鉄の様な血の匂いが蔓延するあの霧の匂いだ。
逃げろ、逃げるんだ。本能と読んだ本にはそう書かれていたが……。
シンは逃げなかった。寧ろ、逃げる気にはなれなかった。
足が竦んだとか、腰を抜かしてしまったのではなく彼は単に逃げる気にならなかったのだ。
逆に、その本心に浮かび上がるのは喜びだ。
シンはニヤリと笑いを見せる。他の全てを捨てて、己が得物とする双剣だけを握ったシンはその霧と闇に呑まれていく。
シンが霧と闇に消えた時、それは彼の願いが叶った時とも言えるのかもしれない…。
僅か15歳にして双剣を巧みに操り、まるで自分の手足の様にして使いこなす。
名門貴族家のティモルディア家長男の「シン・ティルモディア」はその圧倒的な双剣の才能を惜しみなく発揮していた。
幾多の模擬戦、大会を巡って尚不敗。
滑るかの様に、そして嫋かに相手を赤子の如く簡単にいなす。
そんなシンの戦う姿に、多くの観衆は魅了され家族はそんなシンに強い期待を向けていた。
シンは高い社交性も持ち、誰とでも打ち解けられる性格。
勉学や他の事、凡ゆる面において非凡な才覚を持っていた。
そんなシンは、正に完璧超人。将来が約束されたも同然と言える程の、非の打ち所がない様な人物だった。
――下らない、全てにおいて…。
しかし、シンは何も満たされていなかった。何においても、生き方も自分の信念も何も。
全てにおいて満たされていなかった。
何もかも、何もかも嫌で仕方ない。
他者からの評価なんて全てゴミと同格だ。
持て囃す、世辞、将来的価値、自身の地位の為、他の人間はそんな事ぐらいしか考えていない。
周囲の評価、誰かからの信頼。貴族社会において高い位に昇る為にはそれぐらいの事は出来て当然だが、シンはそれが嫌いだった。
自分は何がしたい?
全てにおいてハイスペック、何をやらせても100点を取れる様な人物。
正に天才。しかし、シンは天才である自分は何なのか問い詰めている。
完璧に出来るのは何故か、日々両手で剣を振るう自分は一体何だと言うのか。
そして本当になりたい『自分』が何なのか、シンはその答えが分からずに日々苦悩に悩まされ続けていた。
他者を撃破する様にして、無慈悲に剣を振るう自分?
勉学において常にトップに立つ自分?
女を囲って呑気に暮らす自分?
―――全てにおいて間違っている!
彼の願いなんて、存在しない。
求めるのは、何でもない。クズ共め、奴らは何も理解していない。
目先の事しか分かっていない馬鹿の集団だ。
求婚してくる若い女共も、所詮は自分に対する将来的価値しか見ていない。
いくら容姿が整っていようが、そこに愛など存在していない。
所詮は金の問題だ。将来楽して生きていける為に、地位を欲するが為に自分に嫁ごうとする。
そんな未来は望まない。そんな未来が来るぐらいなら、自決してさっさと死んでしまう方がマシな話だ。
それに、好きになりたい人ぐらい自分で選びたいものだ。
出来るのなら、自分を引っ張ってくれる様な優しい年上の女性が良いものだ。
◇◇
だが、世界は何一つして自分の事など理解していない。
優れているからなんだ、他の人より上手く出来るから何だと言うのだ。
結局、状況が好転する事はなく時間は自分の事など気にする事なく過ぎていく。
必要ない、この世界に生きているのが辛い。
そう感じて、夜に家の外に出たシンは双剣を引き抜く。
月明かりの様な光が空から照らす中、シンは双剣を握り締める。
月光の様な光に反射して、ギラギラと光る銀色の刃が眩しい中で…。
その月明かりが消える。
あぁ、あれだ。あの霧だ…。
鉄の様な血の匂いが蔓延するあの霧の匂いだ。
逃げろ、逃げるんだ。本能と読んだ本にはそう書かれていたが……。
シンは逃げなかった。寧ろ、逃げる気にはなれなかった。
足が竦んだとか、腰を抜かしてしまったのではなく彼は単に逃げる気にならなかったのだ。
逆に、その本心に浮かび上がるのは喜びだ。
シンはニヤリと笑いを見せる。他の全てを捨てて、己が得物とする双剣だけを握ったシンはその霧と闇に呑まれていく。
シンが霧と闇に消えた時、それは彼の願いが叶った時とも言えるのかもしれない…。
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