「完結」幸せにしてくれますか?

瑠渡

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新しい形

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私とイネスは領地にある教会で結婚式を挙げた。

家族はもちろん店のユリティーナから同じ刺繍仲間もお祝いにかけつけてくれ、幸せなひとときだった。

やっと、やっとイネスと結婚できたことに「幸せでどうにかなりそう」
と、口から出た。

そんな私の言葉に、ミョーイがビックリしていた。

「お母さんが乙女のようだ」

「ミョーイ!母さんだって好きな人と結婚式を挙げたかったわ」

「ごめん、ごめん、可愛いなって思っただけだよ。
母さん、良かったね」

「ありがとう、ミョーイ」

結婚式が始まり、イネスが私に口づけし、「これからはずっと、一緒だよ」と、小さな声で伝えてくれて、
長くずっとミョーイの事だけを考えていた私は、息子を同じように大事にしてくれる人ができ、安堵からか涙が止まらなくなった。


それから私は1人でトロリン村へ戻った

店の子達にミョーイの父親と結婚したこと、

イネスがたまに此方へ来て生活するので、店にも顔を出すだろうけどと、伝えていたその時……



「何を話してるんだい?」

「あっ、プルーレ様、いらっしゃいませ」

「サリーさんが結婚されたんですよー。」

「えっ?いつ?」

「個人的な話ですみません。
ついこの間です」

「誰と?僕の知ってる人かい?
名前は?」

「…………あの、ミョーイの父親とです」

「そうなんだ。じゃあ……また来るよ」


「「「………」」」

「プルーレ様、サリーさんが好きだったんですよ。きっと。
じゃなきゃ独身なのに、
女性の物が大半な店に頻繁に来ませんもの」

「そんなことないわよ!
妹さんのプレゼントとか買いにいらっしゃってたし、私より年下よ」

「でも、私はそう思ってましたよ」


(確かに……何回か食事に誘われたりはしたけれど、勘違いしても、されてもいけないから丁寧に断ってはいた。)


私は今まで通りにしてなきゃね



1ヵ月過ぎ、やっとイネスが此方へ。
暫く此方で過ごせるように仕事の調整ができ、やっと今日会える。

なんか、朝からそわそわして何回も手を刺してしまい、皆に笑われた

「天気も悪いし、お客様も少ないので店を早めに閉めましよう。
戸締まりして出るから、先にあがって。」


「「はぁーい」」


(さぁ、私も帰りましょう)

チリーン

「すみません、今日はもう……プルーレ様?
何か探し物ですか?今日は早めに閉めちゃいますので小物なら」

(まずいわ、2人が先に帰ってしまって)


「妹にポーチを頼まれてね。
何でも隣町に住む友達への土産らしい」

「そうなんですね。妹さんが選ばなくて大丈夫ですか?」

「僕のセンスを信用してると、言われたよ。」

「まぁ、ふふふっ。」

「じゃあ、これを頼む」

「はい。じゃあ包みますからお待ちくださいね」



包むために下を向いてた私に急に後ろから抱きしめられた。、

「キャー、何を?やめてください、離してください」


「サリーさん、なぜ?僕の気持ちを、知っていたくせに」

「何をおっしゃるのですか?
私はなにも存知ませんし、誘われてもお断りしたはずです。
それに私は貴方より年上で子供までいる身なんです。
気持ちに間違いはありますので、離してください」

「いやだ。僕は一目見て可愛らしい貴方に恋をした。なのに、こんなに僕が好きなのに結婚してしまうなんて」

「やめて」

後ろから抱きすくめられ、胸まで触られ揉まれてしまっている。
首当たりに生暖かい息や、唇が当てられたのがわかる。

気持ち悪い。気持ち悪い。

だれか、助けて!


「!!!サリーさん!!

何をしてるんですか!やめてください!人を呼びますよ!」

店の子が、忘れ物をしたと戻ってきて私が後ろから襲われているのを見て助けてくれた。

彼女は父親が騎士なので、小さい時から剣を習っていて、棒で叩いてくれた。

「痛い。やめろ!」


「痛いのはサリーさんです。
2度と店に来ないでください!
これ以上何かしたら、連行しますよ」


「……好きだったんだ。ずっと憧れてて。」

「それでも、貴方のしたことは犯罪にもなるんです」

「プルーレ様、もう2度と私に近づかないでください」


「………っ、すみません」





「「はぁ」」

「サリーさん、大丈夫ですか?」

「ありがとう」

助かったことの安堵で膝から崩れ落ちてしまった。

「私が家まで送りますね。
病院行きますか」

「大丈夫よ。気持ち悪い思いしたけど、まだ未遂なようなものだし」

「旦那様は今日来られるのですよね?来る日で良かったですが、サリーさんはこの村で目立ってますから、相談された方が良いですよ」

「………目立つ?今日の事は旦那様に言うわ」

「話し合われた方が良いですね」

「ええ。」





夜遅くにイネスがやっと家に来た。

私は食事しながらイネスに今日あったことを伝えたら


「何だって?それは何故もっと大事(おおごと)にしなかったんだ!!」

「だって、店に迷惑かけるし」

「君の貞操が大事だろう?
こんな事があったなら、此処へはいさせられないよ。
サリー?君は僕の大事な人なんだ。
こんな事、今までもあったのかい?」

「誘われたり、結婚の打診は何回かされたけど……いつもちゃんと断っていたのだけど。
結婚したことが引き金になってしまったみたい」

「こんなことを聞けば尚更この村にいさせられないよ。
ミョーイもね、婚約したのにまだ言い寄って来る子がいて、マリエを非難したりしているらしいよ。
難しい問題だ」

「あの子は小さい時から一目を引いてしまう子だったの。
何をやらせても上手くやってしまうし……貴方に似たのかしらね」

「僕はそんなにモテないよ。
顔は僕に似てるけどね。
そんなことより、今は君だ。
早めに相談して決めよう」

「そうね。私も怖くなってしまったわ」

「サリー、どこを触られた?」

「えっ?後ろから胸と首当たりを。
でも帰って気持ち悪いから洗ったわ」

「サリー、おいで」

「まだ食事中よ」

「いいからおいで!」

「はい」

「それから朝までイネスに離してもらえなかった」







早めに本店にいるユリティーナに相談したら、

そこから直ぐに帝都へ来るように。

帝都の店で働くようになった。

トロリン村は、私を助けてくれた子が責任者になってやってくれるようになった。

ミョーイは今まで通り店の近くの邸宅に住み、

私はドレスデン家に住まいを移した。



    
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