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「何だ、あれ、・・・黒い、光」
タケルは目の前に立つ乾の手の中で、黒いものが徐々に大きくなっていくのを見た。あり得ないと思いつつも、その手のものは黒い光と呼ぶのが一番ぴったりとくるものだった。
「ふん」
乾がタケルの方に顔を向けながら、龍二に向かって手をかざし、気合を入れた。その瞬間、乾の手から黒い光が放たれ、龍二を襲った。
「ぐわっ」
龍二がまともに黒い光を受け、吹っ飛んだ。男を縛っていた紐が緩み、男がまた動き出した。
「・・・ば、縛」
龍二が口から血を垂らしながらも気合をかけ、何とか再び男を縛りつけた。
「ふん」
乾が今度は星に向け黒い光を放った。星も男の動きを封じることに集中しており無防備だった。
「危ないっ」
タケルが叫んだ時、星の前にミコが立ち、鏡で黒い光を受けた。
「きゃっ」
ミコが体をひねり、黒い光を上手く逸らせたが、その衝撃で後ろのテーブルまで飛ばされ、大きな音を立ててぶつかった。
「ミコさん」
「おい、余所見してるひまないで、今度はこっちや」
タケルがミコの方に駆け寄ろうとした時、ウルラが叫んだ。タケルが乾の方を見た時には、乾の手から黒い光が放たれていた。
「うわああ」
タケルはまともに黒い光を受けた。雷に打たれたような衝撃に加え、体が奥底から腐ってくるような嫌な感覚がタケルの全身を襲った。肉体と精神の両方に大きなダメージを受け、タケルは床をのたうち回った。
「ふん。大したことないな、お前ら」
乾が鼻で笑った。
「い、痛い。何で、何でこんな目に合うんだよ」
タケルは涙目になって呻いていた。
「は、はは、あっはははは。お前、泣いてるのか。あはは、面白いな」
乾がしゃがみ、タケルの髪を左手で掴み、笑いながら言った。乾の右手には黒い光が集まり始めていた。
「ひいっ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。・・・た、助けて」
タケルは恐怖で泣きながら乾に訴えた。
「泣くなや、なっさけないのう。お前は男やろ、男やったら泣いてんと、ガツンといってまえや」
ウルラが喚いた。
「ははは、そうだ、こいつは、お前のご主人様はとんでもなく弱いぞ。どうだ、お前、俺のものにならないか。お前のような特別な道具は、俺にこそ相応しいんだ」
乾がウルラを興味深そうに見て言った。
「あほんだら。誰がお前のもんになんかなるかい。タケルは主人やない。わしらはバディーや。バディーを見捨てられるかい。ぼけえ」
ウルラが乾に悪態をついた。
「ふん。少し口の聞き方を教えた方がいいようだ」
乾が右手の黒い光をウルラに近づけた。
「やめて。ねえ、ごめんなさい。私が悪いの。私が自分が騙された訳が知りたいって、みんなにお願いしたから。だから、ねえ、みんなを許して」
由美子が乾に謝り、許してくれるように頼んだ。
「駄目だね。だって、こいつらは知ってはいけないことまで知ってしまったんだぞ。駄目に決まってる。あと、由美子、お前も余計なことをしたんだから、きっちりと苦しみを味わってもらうから」
乾が黒い光をウルラにぶつけた。
「やめんかい、あほんだら」
「やめろおおおお」
ウルラとタケルの叫び声が重なった。再びタケルを衝撃と体が腐るような感覚が襲い、タケルの頭の中にウルラと由美子の苦しむ声が響いた。タケルは気を失った。
「ふん、気を失ったか。つまらん。じゃあ、こいつから殺すか」
乾の手に、今までとは比べ物にならない位の黒い光が集まっていた。
「縛」
乾が黒い光をタケルにぶつけようとしたまさにその時、乾の体を紐が縛りつけた。乾が見ると、龍二が紐で乾の動きを封じようとしていた。龍二がさっきまで縛りつけていた男は、星の術の光を鏡で反射させることで、ミコが動きを封じていた。
「鬱陶しいな」
乾がうんざりした口調で言い、立ち上がり、三人に向かい黒い光を放った。龍二の術では、乾の動きを封じることはできなかった。
「うわっ」
「きゃっ」
「きゃあああ」
三人とも黒い光をまともに受け、食堂の端の方まで吹き飛び、倒れた。動きを封じられていた男達も吹き飛ばされていた。
「タケル、遊ぼううぜ」
夜の山の中だった。タケルは小さな子供の姿になっていた。声に振り向くと、夜の闇の中に、さらに深く黒い影がいた。初めに大きな影が見え、気がつくと小さな影、ひょろ長い影など、沢山の影に取り囲まれていた。
「うん」
タケルは大きく頷くと、影達と遊び回った。そこはタケルの実家の寺の周りとも違う深い山の中だったが、タケルはそこを知っていた。懐かしかった。
「おい、タケル、目え覚ませ。やるんや」
山の中にウルラの声が響いた。タケルは追いかけっこの足を止めた。
「やだね、今楽しいもん」
タケルが大声で言い返した。
「あほっ、このままやとミコも龍二も星も、みんな死んでまうで」
ウルラの声が必死だった。
「やだ、痛いの嫌だ。気持ち悪いの嫌い。ここでみんなと遊ぶ」
乾の黒い光を思い出しタケルが答えた。
「あほ、お前も死ぬんやぞ」
ウルラが叫んだ。
「タケル、死んじゃうの」
一緒に遊んでいた小さな影が聞いた。
「タケル、死んじゃうともう遊べないよ。いいの、僕は嫌だよ」
ひょろ長い影が言った。
「えええ。でも、あいつの黒い光、痛いし気持ち悪いんだよ」
タケルが不貞腐れたように言った。
「大丈夫、タケルならあれぐらい何てことないよ。だって、タケルは・・・」
大きな影が言った。急に強い風が吹き、最後のところが聞き取れなかった。
「とにかくタケルは大丈夫。僕達も手伝うから」
影達の声が重なり、遠のいていった。
「ミコさん」
タケルが薄く目を開けると、倒れているミコの姿が目に入った。見回すと、乾が龍二の前に立ち、龍二を蹴りあげたのが見えた。
「や、やめろ」
タケルは必死に体を動かしたが、痛みで立ち上がることが出来なかった。
「ん、何だ、起きたのか。まあ、今からこいつを殺すから、そこで見ていろ。次はあの変なドレスの女で、その次がその女、最後はお前だ」
乾が嬉しそうに笑った。乾の口から二本の長い牙が見えた。
「タケル、しっかりせい。お前の力をわしに貸せ。わしの力だけではあいつは倒せん」
ウルラの声が頭に響いた。
「力を貸すって、どうやって」
「お前の奥深くにある力をわしと繋げるんや。わしらの力を合わせたら、あいつに勝てるかもしれん」
「俺の奥深くにある力って。・・・それって、どうしたらいいんだ」
「知るか、そんなん。でもやるしかないんや。やらな死ぬ。それだけや。とにかく何でもいいから、やってみい」
タケルは頭の中で自分の力とウルラが繋がる姿をイメージした。
「あかん、繋がらん。もういっぺんや」
ウルラが言った。
「ああ、龍二さん」
乾の手の黒い光が大きくなっていくのが見えた。
「あほ、よそ見すな」
タケルはもう一度イメージしたが、上手くいかなかった。
「駄目だ。無理だよ」
乾の手の黒い光は今までより大きくなっていた。あんなのをくらえば、龍二は絶対に助からないだろうとタケルは思い、もう一度、力を繋ごうと必死にイメージした。
「僕達に任せて」
さっきの影達の声が聞こえ、タケルの奥から影が伸び、ウルラに繋がったことが分かった。
「きたで、きたで、きたで」
ウルラが叫んだ。タケルはウルラから大きな力が溢れ、その力がタケルを満たすのを感じた。
「・・・うん、何だ今さら」
乾がタケルの変化に気づき、タケルの方に向き直った。
「うははは、またせたな。これでお前は終わりや。今までの礼をさせてもらうわ」
ウルラが乾を挑発するように言った。
「ふん。やれるものならやってみろ」
乾がタケルをめがけ黒い光を放った。
「かああっ」
ウルラが気合をかけると、力の壁がタケルの前にでき、乾の黒い光を止めた。黒い光はそのまま壁に弾き返され、乾の後ろの机を吹き飛ばした。
「くそが」
乾は驚いた顔をしたが、次の瞬間、牙を剥き、ありったけの力をぶつけてきた。タケルは力を受け止めながら、このまま力を弾き返すと、ここにいる全員が巻き込まれると思い、どうしようか考えた。
「任せえ」
ウルラが言い、口を開け、乾の力を飲み込んだ。乾が信じられないものを見たように目を見開いた。
「うう、まっず。これ、要らんから返すわ」
ウルラの口から小さな光が吐き出された。その光はゆっくりと乾に向かって近づいていった。乾はその光を暫く見つめていたが、右手を伸ばしその光を掴もうとした。
「ぎゃあああああああああああ、・・・あああああ」
乾が右手で光を掴んだ瞬間、光が膨張し乾を包み込んだ。光の中から乾の凄まじい叫び声が聞こえた。
「何だ、あれ」
光が消えると、上半身の服が破れ胸元がはだけた乾が、口から泡を吹いて倒れていた。乾の心臓の上辺りで、長く不気味な生き物が苦しそうに体をくねらせていたが、暫くすると動かなくなり、灰となって崩れ消えた。
「終わりや」
ウルラがほっとしたように言った。ミコや龍二、星が立ち上がり、タケルの方に近づいてきた。三人の無事を確かめほっとしたとたん、タケルは体中の力が抜け、目が回り、立っていられなくなった。
「やったね。さすがは我らの嗣ノ皇子だ」
遠ざかる意識の中で、タケルは三つの影の声を聞いた気がしたが、すぐに何も分からなくなった。
タケルは目の前に立つ乾の手の中で、黒いものが徐々に大きくなっていくのを見た。あり得ないと思いつつも、その手のものは黒い光と呼ぶのが一番ぴったりとくるものだった。
「ふん」
乾がタケルの方に顔を向けながら、龍二に向かって手をかざし、気合を入れた。その瞬間、乾の手から黒い光が放たれ、龍二を襲った。
「ぐわっ」
龍二がまともに黒い光を受け、吹っ飛んだ。男を縛っていた紐が緩み、男がまた動き出した。
「・・・ば、縛」
龍二が口から血を垂らしながらも気合をかけ、何とか再び男を縛りつけた。
「ふん」
乾が今度は星に向け黒い光を放った。星も男の動きを封じることに集中しており無防備だった。
「危ないっ」
タケルが叫んだ時、星の前にミコが立ち、鏡で黒い光を受けた。
「きゃっ」
ミコが体をひねり、黒い光を上手く逸らせたが、その衝撃で後ろのテーブルまで飛ばされ、大きな音を立ててぶつかった。
「ミコさん」
「おい、余所見してるひまないで、今度はこっちや」
タケルがミコの方に駆け寄ろうとした時、ウルラが叫んだ。タケルが乾の方を見た時には、乾の手から黒い光が放たれていた。
「うわああ」
タケルはまともに黒い光を受けた。雷に打たれたような衝撃に加え、体が奥底から腐ってくるような嫌な感覚がタケルの全身を襲った。肉体と精神の両方に大きなダメージを受け、タケルは床をのたうち回った。
「ふん。大したことないな、お前ら」
乾が鼻で笑った。
「い、痛い。何で、何でこんな目に合うんだよ」
タケルは涙目になって呻いていた。
「は、はは、あっはははは。お前、泣いてるのか。あはは、面白いな」
乾がしゃがみ、タケルの髪を左手で掴み、笑いながら言った。乾の右手には黒い光が集まり始めていた。
「ひいっ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。・・・た、助けて」
タケルは恐怖で泣きながら乾に訴えた。
「泣くなや、なっさけないのう。お前は男やろ、男やったら泣いてんと、ガツンといってまえや」
ウルラが喚いた。
「ははは、そうだ、こいつは、お前のご主人様はとんでもなく弱いぞ。どうだ、お前、俺のものにならないか。お前のような特別な道具は、俺にこそ相応しいんだ」
乾がウルラを興味深そうに見て言った。
「あほんだら。誰がお前のもんになんかなるかい。タケルは主人やない。わしらはバディーや。バディーを見捨てられるかい。ぼけえ」
ウルラが乾に悪態をついた。
「ふん。少し口の聞き方を教えた方がいいようだ」
乾が右手の黒い光をウルラに近づけた。
「やめて。ねえ、ごめんなさい。私が悪いの。私が自分が騙された訳が知りたいって、みんなにお願いしたから。だから、ねえ、みんなを許して」
由美子が乾に謝り、許してくれるように頼んだ。
「駄目だね。だって、こいつらは知ってはいけないことまで知ってしまったんだぞ。駄目に決まってる。あと、由美子、お前も余計なことをしたんだから、きっちりと苦しみを味わってもらうから」
乾が黒い光をウルラにぶつけた。
「やめんかい、あほんだら」
「やめろおおおお」
ウルラとタケルの叫び声が重なった。再びタケルを衝撃と体が腐るような感覚が襲い、タケルの頭の中にウルラと由美子の苦しむ声が響いた。タケルは気を失った。
「ふん、気を失ったか。つまらん。じゃあ、こいつから殺すか」
乾の手に、今までとは比べ物にならない位の黒い光が集まっていた。
「縛」
乾が黒い光をタケルにぶつけようとしたまさにその時、乾の体を紐が縛りつけた。乾が見ると、龍二が紐で乾の動きを封じようとしていた。龍二がさっきまで縛りつけていた男は、星の術の光を鏡で反射させることで、ミコが動きを封じていた。
「鬱陶しいな」
乾がうんざりした口調で言い、立ち上がり、三人に向かい黒い光を放った。龍二の術では、乾の動きを封じることはできなかった。
「うわっ」
「きゃっ」
「きゃあああ」
三人とも黒い光をまともに受け、食堂の端の方まで吹き飛び、倒れた。動きを封じられていた男達も吹き飛ばされていた。
「タケル、遊ぼううぜ」
夜の山の中だった。タケルは小さな子供の姿になっていた。声に振り向くと、夜の闇の中に、さらに深く黒い影がいた。初めに大きな影が見え、気がつくと小さな影、ひょろ長い影など、沢山の影に取り囲まれていた。
「うん」
タケルは大きく頷くと、影達と遊び回った。そこはタケルの実家の寺の周りとも違う深い山の中だったが、タケルはそこを知っていた。懐かしかった。
「おい、タケル、目え覚ませ。やるんや」
山の中にウルラの声が響いた。タケルは追いかけっこの足を止めた。
「やだね、今楽しいもん」
タケルが大声で言い返した。
「あほっ、このままやとミコも龍二も星も、みんな死んでまうで」
ウルラの声が必死だった。
「やだ、痛いの嫌だ。気持ち悪いの嫌い。ここでみんなと遊ぶ」
乾の黒い光を思い出しタケルが答えた。
「あほ、お前も死ぬんやぞ」
ウルラが叫んだ。
「タケル、死んじゃうの」
一緒に遊んでいた小さな影が聞いた。
「タケル、死んじゃうともう遊べないよ。いいの、僕は嫌だよ」
ひょろ長い影が言った。
「えええ。でも、あいつの黒い光、痛いし気持ち悪いんだよ」
タケルが不貞腐れたように言った。
「大丈夫、タケルならあれぐらい何てことないよ。だって、タケルは・・・」
大きな影が言った。急に強い風が吹き、最後のところが聞き取れなかった。
「とにかくタケルは大丈夫。僕達も手伝うから」
影達の声が重なり、遠のいていった。
「ミコさん」
タケルが薄く目を開けると、倒れているミコの姿が目に入った。見回すと、乾が龍二の前に立ち、龍二を蹴りあげたのが見えた。
「や、やめろ」
タケルは必死に体を動かしたが、痛みで立ち上がることが出来なかった。
「ん、何だ、起きたのか。まあ、今からこいつを殺すから、そこで見ていろ。次はあの変なドレスの女で、その次がその女、最後はお前だ」
乾が嬉しそうに笑った。乾の口から二本の長い牙が見えた。
「タケル、しっかりせい。お前の力をわしに貸せ。わしの力だけではあいつは倒せん」
ウルラの声が頭に響いた。
「力を貸すって、どうやって」
「お前の奥深くにある力をわしと繋げるんや。わしらの力を合わせたら、あいつに勝てるかもしれん」
「俺の奥深くにある力って。・・・それって、どうしたらいいんだ」
「知るか、そんなん。でもやるしかないんや。やらな死ぬ。それだけや。とにかく何でもいいから、やってみい」
タケルは頭の中で自分の力とウルラが繋がる姿をイメージした。
「あかん、繋がらん。もういっぺんや」
ウルラが言った。
「ああ、龍二さん」
乾の手の黒い光が大きくなっていくのが見えた。
「あほ、よそ見すな」
タケルはもう一度イメージしたが、上手くいかなかった。
「駄目だ。無理だよ」
乾の手の黒い光は今までより大きくなっていた。あんなのをくらえば、龍二は絶対に助からないだろうとタケルは思い、もう一度、力を繋ごうと必死にイメージした。
「僕達に任せて」
さっきの影達の声が聞こえ、タケルの奥から影が伸び、ウルラに繋がったことが分かった。
「きたで、きたで、きたで」
ウルラが叫んだ。タケルはウルラから大きな力が溢れ、その力がタケルを満たすのを感じた。
「・・・うん、何だ今さら」
乾がタケルの変化に気づき、タケルの方に向き直った。
「うははは、またせたな。これでお前は終わりや。今までの礼をさせてもらうわ」
ウルラが乾を挑発するように言った。
「ふん。やれるものならやってみろ」
乾がタケルをめがけ黒い光を放った。
「かああっ」
ウルラが気合をかけると、力の壁がタケルの前にでき、乾の黒い光を止めた。黒い光はそのまま壁に弾き返され、乾の後ろの机を吹き飛ばした。
「くそが」
乾は驚いた顔をしたが、次の瞬間、牙を剥き、ありったけの力をぶつけてきた。タケルは力を受け止めながら、このまま力を弾き返すと、ここにいる全員が巻き込まれると思い、どうしようか考えた。
「任せえ」
ウルラが言い、口を開け、乾の力を飲み込んだ。乾が信じられないものを見たように目を見開いた。
「うう、まっず。これ、要らんから返すわ」
ウルラの口から小さな光が吐き出された。その光はゆっくりと乾に向かって近づいていった。乾はその光を暫く見つめていたが、右手を伸ばしその光を掴もうとした。
「ぎゃあああああああああああ、・・・あああああ」
乾が右手で光を掴んだ瞬間、光が膨張し乾を包み込んだ。光の中から乾の凄まじい叫び声が聞こえた。
「何だ、あれ」
光が消えると、上半身の服が破れ胸元がはだけた乾が、口から泡を吹いて倒れていた。乾の心臓の上辺りで、長く不気味な生き物が苦しそうに体をくねらせていたが、暫くすると動かなくなり、灰となって崩れ消えた。
「終わりや」
ウルラがほっとしたように言った。ミコや龍二、星が立ち上がり、タケルの方に近づいてきた。三人の無事を確かめほっとしたとたん、タケルは体中の力が抜け、目が回り、立っていられなくなった。
「やったね。さすがは我らの嗣ノ皇子だ」
遠ざかる意識の中で、タケルは三つの影の声を聞いた気がしたが、すぐに何も分からなくなった。
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