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第二章
2ー3
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そして今、中学二年になった僕は人の悪意を聞くことがないように教室にいる時間をずっと一人で過ごしている。小学校に通っている間に人と関わらなければ悪意が聞こえることはないということは理解したためだ。
一人で過ごす時間は何もしない。唯々人に意識を向けないようぼうっとしている。
その成果か人から悪意の声が聞こえてくる時間が小学校に通っていた時より減ってきている気がする。
今日もまた、ぼうっと一日を過ごせばいいとそう考えていた時目の前から
「君……一人?」
と、声をかけられた。
突然のことで思わず返答しそうになるがグッと押しとどめる。
ここで答えてしまったら小学生の時の二の舞だ。今の今まで一人で過ごしてきた意味がない。
「ねえ……聞こえてる……」
弱弱しい声で再度聞いてくる。だが、僕は答えない。答えるわけがない。
「そう、あくまで僕の質問には答えないっていうんだね……だったら、君の秘密をクラス中にばらまくけどいい?」
その言葉に思わず顔を上げる。冷静に考えれば、僕の秘密といえる僕が悪意を聞くことができるということを知っているはずがない。小学校の時のいじめが原因で僕は中学は小学校がある県とは違う県の学校にしたのだから。
「あっ、やっとこっち向いてくれた」
目の前にいたのは、髪がかかっているせいで目元がほとんど見えず、顔にはそばかすが見える上、制服をキッチリと着こなしている男の子だった。
「なんですか?」
威圧するような声で呟く。
僕はできるだけ悪意を聞きたくないのだ。できるなら僕の声にビビッて、話しかけるのをやめてほしい。
「なんですか……って単純に君と話したいだけだよ」
「本当に?」
「本当だよ」
そこまで話して、違和感が生じた。
目の前の男の子から僕への悪意が聞こえないのだ。
意識が思わず目の前の男の子に向く。
確かに悪意は聞こえてきたが、その中に僕に対する悪意は一つもなかった。
正直、高圧的な態度で突っぱねた時点で、僕は悪意の一つや二つ向けられるだろうと覚悟していた。だが目の前の彼は僕に悪意を向けることなく別の集団に悪意を向けている。
目の前の彼が向けている悪意は多種多様であったが大まかに言えば
――馬鹿にするな。
というものであった。
「なんの話がしたいんですか」
迷ったが、目の前の彼と話してみようということになった。
僕に悪意が向けられていない上でこれだけ話してしまったのであったらこのまま話を続けた方がいい。
「いや……別にこれといった話題は用意してないんだけど……」
「……それなら、特に話すことはないですね」
僕のその言葉で彼の顔に不安が生まれる。
だが、彼から話のテーマを提示してくれなければ僕から話のテーマが生まれることはない。
僕に趣味なんてないし、何よりこの体質の影響で中学に入ってからはほとんど人と話さなくなったことでコミュニケーション能力が不足しているためだ。
だからこそ、突っぱねるように言ってしまったのだが……
「……じゃあ、本について話そうよ」
「本?」
彼の突然の提案に僕は思わず、本という言葉を反芻する。
「そう、本について話そう。本を読むくらいなら時間もとれるし」
「でも、僕もあまり本は読まないですけど……」
「それはこれから読んでいけばいいよ……ほら、朝の読書の時間とかあるし!」
あまり本を読まないという事実を告げたら、なら読めばいいという何とも頭の悪い返しをされた。
実際、朝の読書の時間はあるし僕自身も持て余していたし、そこは問題ない。
「それなら僕は何の本を読めば……」
「え~っと、確かに……あ、あれなんかどう?」
言いながら彼は教室に置かれている一冊の本を僕のところまで持ってきた。
その本は、出版した作品のほとんどがメディア化している有名な作家の本であった。
一人で過ごす時間は何もしない。唯々人に意識を向けないようぼうっとしている。
その成果か人から悪意の声が聞こえてくる時間が小学校に通っていた時より減ってきている気がする。
今日もまた、ぼうっと一日を過ごせばいいとそう考えていた時目の前から
「君……一人?」
と、声をかけられた。
突然のことで思わず返答しそうになるがグッと押しとどめる。
ここで答えてしまったら小学生の時の二の舞だ。今の今まで一人で過ごしてきた意味がない。
「ねえ……聞こえてる……」
弱弱しい声で再度聞いてくる。だが、僕は答えない。答えるわけがない。
「そう、あくまで僕の質問には答えないっていうんだね……だったら、君の秘密をクラス中にばらまくけどいい?」
その言葉に思わず顔を上げる。冷静に考えれば、僕の秘密といえる僕が悪意を聞くことができるということを知っているはずがない。小学校の時のいじめが原因で僕は中学は小学校がある県とは違う県の学校にしたのだから。
「あっ、やっとこっち向いてくれた」
目の前にいたのは、髪がかかっているせいで目元がほとんど見えず、顔にはそばかすが見える上、制服をキッチリと着こなしている男の子だった。
「なんですか?」
威圧するような声で呟く。
僕はできるだけ悪意を聞きたくないのだ。できるなら僕の声にビビッて、話しかけるのをやめてほしい。
「なんですか……って単純に君と話したいだけだよ」
「本当に?」
「本当だよ」
そこまで話して、違和感が生じた。
目の前の男の子から僕への悪意が聞こえないのだ。
意識が思わず目の前の男の子に向く。
確かに悪意は聞こえてきたが、その中に僕に対する悪意は一つもなかった。
正直、高圧的な態度で突っぱねた時点で、僕は悪意の一つや二つ向けられるだろうと覚悟していた。だが目の前の彼は僕に悪意を向けることなく別の集団に悪意を向けている。
目の前の彼が向けている悪意は多種多様であったが大まかに言えば
――馬鹿にするな。
というものであった。
「なんの話がしたいんですか」
迷ったが、目の前の彼と話してみようということになった。
僕に悪意が向けられていない上でこれだけ話してしまったのであったらこのまま話を続けた方がいい。
「いや……別にこれといった話題は用意してないんだけど……」
「……それなら、特に話すことはないですね」
僕のその言葉で彼の顔に不安が生まれる。
だが、彼から話のテーマを提示してくれなければ僕から話のテーマが生まれることはない。
僕に趣味なんてないし、何よりこの体質の影響で中学に入ってからはほとんど人と話さなくなったことでコミュニケーション能力が不足しているためだ。
だからこそ、突っぱねるように言ってしまったのだが……
「……じゃあ、本について話そうよ」
「本?」
彼の突然の提案に僕は思わず、本という言葉を反芻する。
「そう、本について話そう。本を読むくらいなら時間もとれるし」
「でも、僕もあまり本は読まないですけど……」
「それはこれから読んでいけばいいよ……ほら、朝の読書の時間とかあるし!」
あまり本を読まないという事実を告げたら、なら読めばいいという何とも頭の悪い返しをされた。
実際、朝の読書の時間はあるし僕自身も持て余していたし、そこは問題ない。
「それなら僕は何の本を読めば……」
「え~っと、確かに……あ、あれなんかどう?」
言いながら彼は教室に置かれている一冊の本を僕のところまで持ってきた。
その本は、出版した作品のほとんどがメディア化している有名な作家の本であった。
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