アア

文字の大きさ
9 / 31
第二章

2ー5

しおりを挟む
 三島君と友人関係になってから数週間ほど経過したころ。学校は修学旅行の時期を迎えていた。
 今は六時間目の授業の時間を使って教師が修学旅行についての説明や修学旅行での注意点について話しているが、僕はその教師に意識を向けない。
 意識を向けて教師の悪意を聞くのが怖いからだ。
 修学旅行という中学生活の中でもとりわけ大きな行事であるためキチンと説明を聞かなければとは思っているのだがこればかりは仕方ない。重要なことを言っていた場合は三島君に聞けばいい。
 そんな風に考えて、僕は教師の説明を全てスルーし、放課後、三島君の元へ教師が何か重要なことを言っていなかったかを聞いてみた。
「いや、特に重要なこととか聞き漏らしてたら駄目なこととかは言ってなかったよ。先生も『今した説明は配ったしおりにも書いてあるし、聞き逃したやつもしおり見ておけば大丈夫だ』なんて言ってたし」
「そっか、わかったありがとう」
 三島君に簡単にお礼を告げてそのままカバンの奥に突っ込んでいたしおりを取り出して内容を確認する。
 修学旅行実行委員会が作ったというしおりは生徒が書いたとは思えないほど丁寧で、修学旅行中に行く場所、利用するホテルで注意するべき点がしっかりと書いてあった。
 そうしてパラパラとページをめくりつつ内容を確認していき、重大なことに気づく。
「ねえ、三島君。修学旅行って四人一組で回らないといけないの?」
「……うん、そうだよ」
 溜めに溜めて、三島はポツリとこぼす。そうして続けて
「修学旅行、四人グループを作れてない人は行けないんだってさ」
 と言った。
 おかしい。本の中での修学旅行ではグループは学校からある程度決められていたりするものだったはずだが……本で得た知識は使えないということなんだろうか……
「今までは学校側からグループの班員を指定してたんだけど、今年からは生徒の自主性とか何とかを高めるために自分でグループを作るところから始めろってさ」
 僕が心の中で抱いていた疑問に、三島君が答えてくれる。
 どうやら僕が本で得た知識はそこまで間違ったものではなかったらしい。
 しかしまあ、そういうことなら僕は修学旅行に行かなくてもいいだろう。
 元々、学校側が三島君以外の人とグループを組ませた場合、行く気はなかったのだ。
 その中で、四人グループを作れない生徒は主学旅行に行けないという条件を学校が提示してきたのだ。他の生徒の中には文句を言っている生徒も多いだろうが、人の悪意を聞きたくない僕にとっては万々歳だ。人と関わる機会と関わる人の数はできるだけ少ないほうがいい。
「それなら僕は、修学旅行は行かなくてもいいかな」
「えっ?」
 僕が言うと、三島君はそんな間抜けな声を上げる。
 僕は、そんな三島君をスルーしつつ続けて
「元々、三島君以外の人と修学旅行を回る予定はなかったから。三島君以外に二人グループに入れなきゃ修学旅行に行けないなら行かなくてもいいかなって」
 と言い放った。
 僕がそこまで言い放つと三島はわかりやすくうろたえる。
「いや、でも……修学旅行って中学の行事の中でも結構大きな行事じゃん。だから白峰君も他の人が僕達のグループに入ってきても楽しめるんじゃない?」
「そんなことはないと思う。三島君だけとだったら行きたいけど他の人がいるんじゃ楽しめる気がしない」
「う~ん。そっか……」
 三島君の声がどんどん小さくなっていく。
 一瞬、僕に悪意が向けられるかと身構えたが、そんなことはなかった。それどころか、少し落ち込んでいるように見える。
 もしかしたら三島君は修学旅行に行きたいのかもしれない。
 ……まあ、それもそうか。僕みたいに人の悪意を持っているわけでもない三島君からしたら修学旅行なんていう一生の内に二回しかないビッグイベントへは、行きたいに決まっている。だが、それならそれで僕以外の三人の人を誘ってでも行けばいいと思うのだが……
 僕があれこれ考えている最中、三島君が口を開いた。
「僕はなんとなく白峰君は修学旅行に行かないんだろうなって思ってたんだ。白峰君は僕以外の人と一緒にいたり話したりするのをいつも嫌がってるから……だから、白峰君を僕の班にいれるのははやめておこうって思ってたんだ」
 三島君の口から飛び出した言葉に僕は驚く。
 三島君がそこまで僕のことを見てくれていたのかという意味で。
「でも、仲のいい人達はもうグループで固まっちゃってて、僕もできるだけ多くの人に声をかけたんだけど、二人しかメンバーが集まらなくて……でも、それでも、僕は修学旅行に行きたくて、だから白峰君に声をかけてみるしかなくて、ごめん」
 その言葉を聞いて。
 三島君が僕のことを気にかけてくれていることを知って。
 僕は
「なら、一緒に修学旅行行こうよ。三島君が声かけた二人と合わせて四人でさ」
 彼のささやかな願いを叶えることにした。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー! 愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は? ―――――――― ※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...