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第三章
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ファミレスでの出来事から数日経過した日の昼休み。僕は茜さん、須藤さん、宮下さんとの四人で昼食を食べながら話をしていた。
どうして昼休みに話す人が茜さん一人から須藤さん、宮下さんを加えた三人に増えているのかと言われれば理由は簡単だ。ファミレスでの出来事の翌日の昼休み、須藤さんと宮下さんが僕と茜さんが話している中に入ってきたからだ。
そんなこんな、僕達は四人で適当な話をしている。
話の内容と言っても疑似討論ではない。
最初の方は僕と茜さんは疑似討論を続けていたのだが、疑似討論を続けていくうちに須藤さんが「なんていうか、本の話されても私達はわかんねーっていうか……」と暗に四人でいる時に疑似討論をするのはやめてほしいということを伝えてきたので四人でいる時は疑似討論ではなく適当な話をすることになったのだ。
そうして話をし始めて数日が経過し、僕はあることに興味を持っていた。
それはネットにアップされている動画だ。
僕らの会話には須藤さんや茜さんが話題を出していき、宮下さんや僕がその話に対して適当な反応を返すというある程度のパターンがあり、二人が出す話題は今話題に上がっているようなテレビ番組の話やネットにアップされている動画についてだ。
僕は話の中で上がったネットでの動画を見て、面白いものだと思い、興味を持ったのだ。
意識を話に戻す。
今日も、須藤さんや茜さんが自身が見つけたネットの面白い動画について話していた。
「でさーその動画のこの部分がめちゃくちゃ面白いわけよ」
須藤さんが自身のスマホに映し出された動画を指さしながら言う。
その動画を見てみると須藤さんが言うように面白い動画だった。
茜さんと宮下さんも動画を見てクスクスと笑っている。
「確かに、面白い動画ですね」
「おお、空太もこの動画の面白さがわかるか」
僕が素直な感想を述べると、須藤さんがそう返してきた。
須藤さんは話をし始めた次の日から僕のことを「空太」と呼び捨てで呼ぶようになった。
突然呼び捨てにされ、須藤さんのことを豪胆な人だと思ったことは記憶に新しい。
ちなみに宮下さんからは茜さんと同じように「空太君」と呼ばれている。
本人曰く、須藤さんのように呼び捨てで呼ぶのは難しいが、かといって茜さんの前で「白峰君」など呼ぶのも気まずいため「空太君」と呼ぶようにしたらしい。
そんな二人の僕に対する悪意は段々と聞こえなくなってきている。
今では、二人が僕と茜さん以外の人に向けている悪意が少し聞こえてくる程度だ。
僕はそんな現状に満足しつつも、不安なことがあった。
それは、二人に僕の体質のことを打ち明けた時の二人の反応だ。
確かに、須藤さんと宮下さんは僕に優しくしてくれているし、知り合って数日の僕を名前で呼んでくれるくらいにはフレンドリーだ。
だがそれは、体質を打ち明けたうえで仲良くしてくれるという証拠ではない。
僕に優しくしてくれていた母は僕の体質を理解したとたん僕を腫れ物のように扱うようになった。
中学の時に仲良くしてくれていた三島君だって、僕が体質を告白したとたんに僕に対して悪意を向けてきた。
そんなトラウマじみた経験が僕を不安にさせる。自身の体質を明かしたくないとそう思わせてしまう。
僕がそうやってあれこれ考えていると宮下さんが
「そう言えば空太君ってなんで私達と話すとき敬語で話すの?」
と聞いてきた。
「あ、それ私も気になってた。もう友達になって数日経つけどいまだに敬語が抜けないな~って」
須藤さんが宮下さんに続く。
「それは、中学の時ほとんど一人でいたから友達との会話の仕方がわからなくて……
敬語なら間違いないかなって思って、それで……」
「む~ん、なるほど」
「まあ、確かに距離感がつかめてないなら会話してるときに敬語になっても仕方ないのかも」
「なら、試しに空太に敬語抜きで話してみてもらおうぜ」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
あれ?今の流れって仕方ないからこのままで良いかってなる流れだったんじゃ……
「それいいかも、やってみようよ空太君!」
「え?」
茜さんが乗ってきたことに驚いて、またも素っ頓狂な声が出る。
「私も賛成」
宮下さんまで乗ってくる。どうやら僕に逃げ場はないようだった。
「わかりました、やります。敬語抜きで話せばいいんですよね?」
「「「うん」」」
見事に三人の声が重なる。
正直、茜さんのことを名前で呼び始めたあの日からかなりの時間は立っていたし、いい加減敬語を抜いて話をしなければいけないとは思っていた。だからこそ、これはいい機会なのかもしれない。
覚悟を決めて言葉を吐きだす。
「じゃあ、こんな感じで敬語なしで話すけどそれでいいのか?」
「う~ん。違和感がすごい」
須藤さんがきっぱりと言い放つ。
宮下さんと茜さんも口には出さないが違和感があるらしい。
目がそう言っている。
「須藤さんたちが敬語を抜いて話せって言ったんでしょう?」
「あ、また敬語入ってる」
宮下さんから指摘が入る。
その指摘に、僕は一度咳払いをしてから
「須藤さんが敬語ぬいて話せって言ったんだろう?」
と言い直した。
「わりぃわりぃ、あんまりにも違和感がすごかったもんだからさ」
「うんうん、すごい違和感あるよね」
好き放題言ってくるが実際その通りだ。自分でやっていても違和感がすごい。
「まあまあ二人とも、確かに今は違和感がすごいかもしれないけど後々慣れてくると思うから今はそんなに言わないであげて。あんまり言うとせっかく敬語抜きで話してくれたのに空太君がまた敬語アリの状態で話し始めちゃうかもだから」
茜さんが、フォローを入れてくれる。
「それもそうだな、よし空太、バンバン敬語抜きで話していこうぜ」
「ええ?」
そしてそれから僕は、敬語を抜いた状態でいつものように話をした。
昼休みの間ずっとその状態で話をしていたが違和感はぬぐえなかった。
どうして昼休みに話す人が茜さん一人から須藤さん、宮下さんを加えた三人に増えているのかと言われれば理由は簡単だ。ファミレスでの出来事の翌日の昼休み、須藤さんと宮下さんが僕と茜さんが話している中に入ってきたからだ。
そんなこんな、僕達は四人で適当な話をしている。
話の内容と言っても疑似討論ではない。
最初の方は僕と茜さんは疑似討論を続けていたのだが、疑似討論を続けていくうちに須藤さんが「なんていうか、本の話されても私達はわかんねーっていうか……」と暗に四人でいる時に疑似討論をするのはやめてほしいということを伝えてきたので四人でいる時は疑似討論ではなく適当な話をすることになったのだ。
そうして話をし始めて数日が経過し、僕はあることに興味を持っていた。
それはネットにアップされている動画だ。
僕らの会話には須藤さんや茜さんが話題を出していき、宮下さんや僕がその話に対して適当な反応を返すというある程度のパターンがあり、二人が出す話題は今話題に上がっているようなテレビ番組の話やネットにアップされている動画についてだ。
僕は話の中で上がったネットでの動画を見て、面白いものだと思い、興味を持ったのだ。
意識を話に戻す。
今日も、須藤さんや茜さんが自身が見つけたネットの面白い動画について話していた。
「でさーその動画のこの部分がめちゃくちゃ面白いわけよ」
須藤さんが自身のスマホに映し出された動画を指さしながら言う。
その動画を見てみると須藤さんが言うように面白い動画だった。
茜さんと宮下さんも動画を見てクスクスと笑っている。
「確かに、面白い動画ですね」
「おお、空太もこの動画の面白さがわかるか」
僕が素直な感想を述べると、須藤さんがそう返してきた。
須藤さんは話をし始めた次の日から僕のことを「空太」と呼び捨てで呼ぶようになった。
突然呼び捨てにされ、須藤さんのことを豪胆な人だと思ったことは記憶に新しい。
ちなみに宮下さんからは茜さんと同じように「空太君」と呼ばれている。
本人曰く、須藤さんのように呼び捨てで呼ぶのは難しいが、かといって茜さんの前で「白峰君」など呼ぶのも気まずいため「空太君」と呼ぶようにしたらしい。
そんな二人の僕に対する悪意は段々と聞こえなくなってきている。
今では、二人が僕と茜さん以外の人に向けている悪意が少し聞こえてくる程度だ。
僕はそんな現状に満足しつつも、不安なことがあった。
それは、二人に僕の体質のことを打ち明けた時の二人の反応だ。
確かに、須藤さんと宮下さんは僕に優しくしてくれているし、知り合って数日の僕を名前で呼んでくれるくらいにはフレンドリーだ。
だがそれは、体質を打ち明けたうえで仲良くしてくれるという証拠ではない。
僕に優しくしてくれていた母は僕の体質を理解したとたん僕を腫れ物のように扱うようになった。
中学の時に仲良くしてくれていた三島君だって、僕が体質を告白したとたんに僕に対して悪意を向けてきた。
そんなトラウマじみた経験が僕を不安にさせる。自身の体質を明かしたくないとそう思わせてしまう。
僕がそうやってあれこれ考えていると宮下さんが
「そう言えば空太君ってなんで私達と話すとき敬語で話すの?」
と聞いてきた。
「あ、それ私も気になってた。もう友達になって数日経つけどいまだに敬語が抜けないな~って」
須藤さんが宮下さんに続く。
「それは、中学の時ほとんど一人でいたから友達との会話の仕方がわからなくて……
敬語なら間違いないかなって思って、それで……」
「む~ん、なるほど」
「まあ、確かに距離感がつかめてないなら会話してるときに敬語になっても仕方ないのかも」
「なら、試しに空太に敬語抜きで話してみてもらおうぜ」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
あれ?今の流れって仕方ないからこのままで良いかってなる流れだったんじゃ……
「それいいかも、やってみようよ空太君!」
「え?」
茜さんが乗ってきたことに驚いて、またも素っ頓狂な声が出る。
「私も賛成」
宮下さんまで乗ってくる。どうやら僕に逃げ場はないようだった。
「わかりました、やります。敬語抜きで話せばいいんですよね?」
「「「うん」」」
見事に三人の声が重なる。
正直、茜さんのことを名前で呼び始めたあの日からかなりの時間は立っていたし、いい加減敬語を抜いて話をしなければいけないとは思っていた。だからこそ、これはいい機会なのかもしれない。
覚悟を決めて言葉を吐きだす。
「じゃあ、こんな感じで敬語なしで話すけどそれでいいのか?」
「う~ん。違和感がすごい」
須藤さんがきっぱりと言い放つ。
宮下さんと茜さんも口には出さないが違和感があるらしい。
目がそう言っている。
「須藤さんたちが敬語を抜いて話せって言ったんでしょう?」
「あ、また敬語入ってる」
宮下さんから指摘が入る。
その指摘に、僕は一度咳払いをしてから
「須藤さんが敬語ぬいて話せって言ったんだろう?」
と言い直した。
「わりぃわりぃ、あんまりにも違和感がすごかったもんだからさ」
「うんうん、すごい違和感あるよね」
好き放題言ってくるが実際その通りだ。自分でやっていても違和感がすごい。
「まあまあ二人とも、確かに今は違和感がすごいかもしれないけど後々慣れてくると思うから今はそんなに言わないであげて。あんまり言うとせっかく敬語抜きで話してくれたのに空太君がまた敬語アリの状態で話し始めちゃうかもだから」
茜さんが、フォローを入れてくれる。
「それもそうだな、よし空太、バンバン敬語抜きで話していこうぜ」
「ええ?」
そしてそれから僕は、敬語を抜いた状態でいつものように話をした。
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