アア

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第四章

4ー8

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 そうして、部室で小説を読むようになって四日が経過した。
 四日間の間、あかりさんは若干退屈そうではあるが、一応文句は言わずに小説を読んでいる。凛さんと茜さんは今までと同じように静かに小説を読んでいる。そして、僕も四日の間そんな三人と一緒にずっと小説を読んでいた。そう、僕は結局まだ小説を書き始めてはいないのだ。
 茜さんにはあの日から遠回しにではあるが書いてみないかと言われている。確かに僕自身、僕達の部の目的を小説コンテストでの入賞とすればいいのではないかと考えた際に自身で小説を書こうとはしていた。だが、実際に書かなければいけない現状になって僕にあんなに素晴らしいものが作れるのかどうかと不安になった。茜さん、あかりさん、凛さんの三人が書いてくれることになって僕は書かなくてもいいのではないかと思うようになった。
 そんな思いは時が経てば経つほど大きくなっていく。今日、部室で小説を読んでいた時にだってそんな恐怖心は大きくなっていっていった。
 このままではいけないことはわかっている。このままでは書きたくないという思いばかりが大きくなってしまうだろうことも理解している。だが、どうすればこの恐怖心をなくすことができるのかがわからない。
 だからこそ、僕は相談もかねて茜さんに電話をしてみることにした。
 スマホを操作し、電話をかける。数コールの後に茜さんが電話に出た。
『もしもし、空太君。急に電話してきてどうしたの?』
「ちょっと相談したいことがあって……」
『相談……。何?』
 そうして僕は自身の悩みを話す。
 たどたどしく話をする僕の話を茜さんは相槌を打ちながらしっかりと聞いてくれる。
 そうして僕がすべての悩みを打ち明けた時、茜さんが口を開く。
『なんか空太君、昔の私みたい』
「昔の茜さん?」
 どういうことかと疑問に思っていると茜さんが
『私も空太君と同じように悩んだことあったし』
 と言った。
「茜さんも?」
『うん、私も空太君みたいに悩んでた。私が小説を書いてもいいのかなって。だから当時の先輩にその悩みを打ち明けたの。そしたらその先輩が言ったの。「自惚れるな」って』
「自惚れるな?」
 当時の茜さんの先輩が茜さんに言ったという言葉を反芻する。どういう意味なのだろう。
『私、最初に聞いた時意味が分からなかった。自惚れるな、ってどういうことだろうって。そうやって悩んでいたら教えてくれたの。「どんなに才能があるやつでも初めから世の中に出てるような小説のような作品を書けるわけがない。だからまずは自分の面白いと思う物語をどんなに下手くそでもいいから形にしてみることが重要だ。書かないと文章なんてうまくならないし、面白い物語も生み出せないからな。世の中に出てるような小説みたいにかけるかどうか不安だから自分の作品を書かないなんてもったいないし、そういう考えは正直お門違い。だから自惚れるなって言ったんだ」って。私、先輩の言うとおりだと思ったんだ。だからその日から小説を書き始めた。面白い物語を書くためにどんなに下手くそでもいいから物語を書いてみるべきだって思ったから』
「……」
 言葉が出なかった。
 茜さん、ひいては茜さんの先輩の言うとおりだ。僕は自惚れていた。最初から世の中に出ている物語みたいな素晴らしい物語を書けるなんてことはないんだ。素晴らしい物語を書くにはまず自身の面白いと思う物語を書いてみることが重要なのだ。
「茜さん、ありがとう。僕は自惚れたみたいだ」
『そんなお礼を言うほどのことじゃないよ』
「いや、でも自惚れてることに気づかなかったら、ずっと書かないなんてこともあったかもしれないから……」
『そんなに気にしないで良いよ。私も先輩に言われるまで気づかなかったから、きっとそんなもんなんだよ』
「そんなもんなのかな?」
『そんなもんなんだよ』
「……僕、今からでも小説書いてみるよ」
 今は午後七時頃だ。十二時には寝るとしても約五時間はある。
 それに土日も挟むから物語の構想くらいは浮かぶかもしれない。
『そっか、頑張れ空太君』
 茜さんは優しい声でそう言って、その後『おやすみ』とだけ言って電話を切った。
 そうして僕は、パソコンを起動し心の中で「やるぞ」と意気込んでから物語の案を書き始めた。
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