死にたい色は

yunha

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貴方は薬

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「手伝ってくれてありがとう、助かったよ。」

「はいよ、」

俺は牡丹の仕事を手伝い終わると、二人で喫茶店に移動した。

「今日には私は帰るから。」

会えるといいね、頑張ってと、彼女は俺から視線を目の前のお茶に向けて言葉を入れた。

『翡翠で飲食はするな。』

これは数十年前くらいから伝えられてきた。
喫茶店に行っても休むだけで物は口にしない。
店にいるものは何も飲まず食わずというわけだ。

「ねえ、この土地に薬物を広めてる二人組の女性がいるって話があるじゃない。」

「ああ、」

「その事なんだけどね」

彼女は声の音量を下げると、俺を見た。

「双子らしいのよ。」

この土地は王都の次に大きい都市だ、
元々人口も多く、観光地とも栄えていて、農業が発達している土地だ。

数百年前から流行した麻薬は、多くの人口の多さや、あまり王都に管理されていないため、昔から対策がしっかりと取られていない。

「ほう、双子か。」

「それでね、どうやらかなり若いらしくて、」


二人の若い女が薬物を、

この話はかなりと言っていいほど有名である。
目を輝かせて話す彼女の希望を壊したくないから、知らないふりをしたが、


そして
この女達の処分は行われない。

この国にはそもそも5つの土地がある。

この土地の回復は最優先だが、もう一つ厄介な土地があって、王都はそこの対処に前身しているのだ。
つまり、王都から見放された土地、というのが正解なのだろうか。


「興味あるでしょ、会ってみようよ」

彼女は笑う。頼もしいほどに。


まあ確かに彼女も同じ薬というものを扱うもの。気にはなるのだろう、
どっちにせよ俺は不老不死を探すから、ついでと言えば苦ではない。

「わかったよ。」

「ごめんね、会ったらちゃんと帰るから。」


いくら広い土地とはいえ、彼女の凄まじい情報力から数時間で女二人の行方が分かってしまった。
上手く行きすぎていてぶっちゃけのところつまらないが、そもそも会えればいいんだ、早ければ早い方が良いだろう。
早く見つかることも想定内だ。


そんなことを考えていると、人の少ない裏通りに二人の女が向かってきた。

先程双子を探すために数人の商人に話を聞いたところ、しょっちゅうこの裏通りを使用するらしい。という噂があるそうだ、本当かは分からないが、数少ない情報の中でも、信用しやすい話だったので俺達は訪れた。
案の定その噂は本当だったらしい。

女二人は牡丹と同じくらいの身長で、上半身はマントで隠されていてあまり見えないが、そこから零れでる長い髪だけが女性と判断する鍵だった。
一人の女は真っ黒な髪。
もう一人の女は、同じく真っ黒だが、下の方で赤い糸で括られている。
歩き方や雰囲気から、髪を結んでいる方に権力があるのだろう。


「えっ、」

二人が近づくに連れて顔も見えてくる。
そんな中で彼女と俺が驚きを隠せなかった理由その壱は、二人とも驚くくらいの若さだからだ、まだ、十五、六か、
そして其の二は驚くほど二人は美しかった。

麻薬など程遠い程に。


女達は俺たちを見ると、警戒した様子を見せた。
事情を説明したが、まあそんなに簡単にはいかない。
彼女達の唯一見える髪質や手先を見ると、薬を使っていないことはわかった。

牡丹は俺に初めてあった時に、この国で苦しむ人々を救いたいと話していた、
おれはそれを覚えている。



「私たちにあって何をするのですか、」

「あなた達が何故こんなことをしているのか知りたいの。」

俺と双子の髪を結んでいない片方はほとんど話に参加していない。
牡丹と双子の一人が交渉を続けていた。

「あなた達が止めようと、私達は止まらない。」

「それでもいいの、何故こんなことをするの、」

聞くと麻薬はそこまで重く感じない人間も多いだろう、しかし麻薬が流行るということは、親や子供が暴力を振り、挙句死亡する、
家族だけでなく、無関係の人間に当たり散らし、痩せこけてゆく、
そんな現状を作ったということは、許されることではないのだ。

牡丹は優しい性格だ、ガツンと言うことが出来ない。
死にたい死にたいと生きる希望を失った俺に、不老不死を探すように命じた者だ、
彼女には貸しがあるからな。

この無知な無礼双子に、大大大大大大先輩が正しい道を教えてやろう、そう思ったのだ。




「あなた達には分からない。」


そろそろ出番かと思ったら、後ろに隠れ声を出さなかった双子の片方が出てきた。

髪を結んでいる方によく似た透き通る、けれど優しい声。
髪を結んでいる方に比べるとやわらかく、あまりハキハキとはしていないが、安心する声だった。


「私達は間違っているかもしれない、許されないことかもしれない、けれど、これが、麻薬が」


女は泣いていた、悲しみ、辛さ、何を載せた涙なのかは分からない。
髪を結んでいる方はただただ声を殺していた、今にも叫びそうで、それがすごくすごく辛そうで、見ているだけで死にたくなって、


しかし、聞こえた気がした。




「私たちの希望なの。」


そう言う彼女達の影は泣いていた。


『たすけて』


そう効こえてしまったのだ、
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