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第三章
第17話 人外と龍王
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「むっ!避けよッ!!」
リヴァリアの忠告虚しく、獣王国の兵士たちは邪龍のブレスに巻き込まれた。
一瞬で塵と化した兵士たちとは違い冒険者らは危機回避の判断が早かった。
「あれだけの兵士が一瞬か……大魔法クラスの一撃じゃないか」
「龍王のブレスは遠目で見ただけでしたが、実際に近くで見ると恐ろしいとしか言えませんね……」
カイトとセニアも辛うじて回避したが、ほんの数メートル先にいる兵士たちは全て死んだ。
『雑魚どもが!どれだけ群れようが俺の前では塵芥と同じと知れ!』
「ギラドラス!そちらばかりに意識が向いていると背後がガラ空きだぞ!」
愉悦に浸る邪龍の背中目掛けて、リヴァリアの魔法が炸裂した。
『不意打ちなどで俺が負けるものかッ!老いぼれはさっさと死にやがれ!』
ギラドラスの周囲に魔法陣が浮かび上がり、リヴァリアもまた周囲に魔法陣をいくつも浮かべる。
龍王と龍王の魔法戦。
余波が激しく冒険者や無名はすぐに距離を取った。
「使われているのは殆どが上級魔法……複数の魔法の同時詠唱はそう簡単ではないんだけれど……」
ソウリュウは二体の龍王を眺めながら小さく零す。
体力、防御力、魔力量、どれをとっても人間や亜人など遥かに超える。
唯一魔力量で迫るのはこの場で無名だけである。
龍王同士の戦いもやがて終わりを迎えた。
リヴァリアの魔法発動が一瞬遅れ、その隙をギラドラスが突く。
『どうしたッ!古龍ではやはり持久戦は辛いか!?』
「黙れッ!貴様などこの手で葬ってくれる!」
それでもお互いに魔法を放ち続ける。
徐々にリヴァリアの身体に直撃する魔法の数が増えてくると攻撃の手も緩んでいく。
「リヴァリア様!」
遂にギラドラスの魔法がリヴァリアの腹部を直撃し、人の姿へと戻った。
「クッ……やはり妾より力を蓄えておる……。すまぬがこれ以上の戦闘はできん」
「次は僕が代わります」
人の姿に戻ったリヴァリアが膝を突くと、その目の前に無名が飛んできた。
『勇者か!貴様が龍王同士の戦いに水を差すか!?面白いぞ!』
またもギラドラスの周囲に複数の魔法陣が浮き上がると、無名も同じように魔法陣を複数展開する。
「人間と龍王の一騎打ち、か。歴史に残る戦いじゃねぇか」
ガンツも離れた位置から無名の様子を伺っており、他の冒険者や兵士たちもまた無名を眺めている。
ギラドラスと無名が魔法を発動すると、多数の魔法がぶつかり合い相殺していく。
魔法の応酬は何度も続き、無名がギラドラスに拮抗しているのが見て取れた。
「おいおい……化け物かよアイツ。万能の勇者が別格なのか?それともアイツの才能か?」
「分からないけど……恐らく後者じゃないかしら?」
ガンツも少し引いておりソウリュウは無名の才能を認めていた。
『てめぇッ!まだ続けるつもりか!?俺を相手によくぞここまでもたせたが、もう限界が近いだろう!さっさとくたばりやがれ!』
「その判断はまだ早いのではないですか?僕はまだ魔力が残っていますよ」
流石の無名も最初に放った切り札といいその後に続く連戦も相まって魔力はほぼ底を突きかけていた。
しかしここで引けば獣王国は蹂躙されてしまうだろう。
自分に優しく接してくれた彼らを見捨てたくはない。
そんな気持ちから無名は自身の体力や精神力を魔力に変換し魔法の応酬を続けていた。
そんな事になっているなど気付いていないギラドラスはもはや驚愕するしかなかった。
勇者とはいえ人間の魔力量はそれほど多くない。
なのにも関わらず既に数十の魔法の応酬を続けている無名を不気味に感じ始めていた。
(こいつ本当に人間か……?俺も相当消耗しているがコイツはいつまで戦い続ける……まさか俺よりも魔力量が多い……いや、そんなはずはねぇ。龍王と同格など魔王くらいでないと説明がつかん。いや、魔王ですら俺よりも劣る。ならば奴は……魔王をも超えるのか?)
ギラドラスは複数の魔法を展開しながら心の中で無名について考えた。
勇者は人間の中では破格の能力を持つ。
それは有名な話だ。
龍王であり永き時を生きるギラドラスは当然ながら知っている。
過去にも異次元の力を持つ勇者は存在した。
だが定期的に召喚される勇者は龍王ギラドラスにとってさほど脅威ではない。
異次元の力を持つ勇者など数百年に一度しか現れはしないのだから。
その一人が彼だというのならここで殺さなければ、更に力をつけるだろう。
こんなことを考えていると、いよいよ魔法の応酬も百を超える。
それも全てギラドラスの魔法を相殺できる威力であり、手を抜いているわけではない。
『化け物がッ!いつまで続けやがる!』
「さぁ?……まだやりますか?」
『てめぇ如きに劣っているはずがねぇ!』
煽り文句までする始末。
本当に無名は数百年に一度の勇者なのではないか。
そんな気持ちが徐々に信憑性を帯びてくる。
それと同時にギラドラスは無名に恐れを抱き始めていた。
魔法の応酬が百五十を超えても無名の表情は変わらない。
正確には耐えているのだが、そんな事などギラドラスには分からない。
『貴様ッ!どれだけ魔力が残ってやがる!この俺と同格など!認められるわけがねぇ!』
「事実を否定しますか?何よりも今、貴方の攻撃を全て捌いているんですから、これが証拠です」
『あ、有り得ねぇ!リヴァリアよりも魔力を持つなどもはや人間じゃねぇぞ!』
遂に魔法の応酬は二百を超えてしまい、先ほど互角に渡り合っていたリヴァリアの発動した魔法の数を上回った。
それでもまだ無名の表情に変化はなかった。
(コイツは本物だ……これ以上の戦いは敗北を意味する。この辺りで引かねぇと流石の俺も限界がちけぇ!)
ギラドラスは魔法の展開をしながら周囲に目を向ける。
一番逃げやすい方向を確認しているのだ。
「どこを見ているんですか?」
そんなギラドラスの様子に不信感を持った無名が問いかける。
『さぁな……』
「集中力が乱れていているのでは?」
『黙ってろ!バケモンが!』
逃げようとしているのがバレている。
もうここで目の前の男を消すしかない。
ギラドラスは最後の力を振り絞り、背後に百を超える魔法陣を浮かべた。
『さぁそろそろ決着をつけようじゃねぇか!これが防げるか人間!!』
「……これは……まだこれだけの魔力を残していたんですね」
それでもまだ表情に変化がない無名に、ギラドラスは恐怖を抱いた。
龍王をも超える魔力量の勇者。
脅威的なまでの持久力にギラドラスは最後の賭けに出た。
背後に浮かべる百の魔法陣に全魔力を注ぎ込んだのだ。
これで防がれるようであれば潔く敗北を認めなければならない。
龍王であるギラドラスにそこまで考えさせる無名は本物の化け物と言っても過言ではないだろう。
「アイツ……どれだけ戦い続けられるんだ?いよいよ邪龍が本気出したぞ。流石に勇者でもあれは止められねぇだろ……」
「いいえ、それ以前にこれだけの魔法の応酬を続けられるなんてもう、人間を辞めているわよ」
ガンツはドン引き、ソウリュウも呆れを含んだ表情でガンツにそう言葉を漏らした。
「無名さん、あれは魔力変換を使っているのではないでしょうか?」
「ああ、セニアも気づいたかい?体力、精神力、多分生命力も削って魔力に変換してるね。流石に止めないと彼の命が危険だよ」
「ですがあの魔法の応酬……止められますか?」
「俺では無理だね。できるとしたら、それこそリヴァリア様しかいないだろうけど、あの様子だし……」
カイトの視線の先には無名と邪龍の戦いを見守る人間の姿のリヴァリアがいた。
リヴァリアも連戦に次ぐ連戦で、既に魔力は枯渇している。
龍の姿を維持することさえ厳しく、不安そうな顔で無名を眺めていた。
「表情には出していないけど、多分かなり苦しいはずだよ。あ、邪龍の方から凄い魔力を感じる……これは不味いかもしれない」
カイトの表情は険しくなり、時を同じくして邪龍の背後に百の魔法陣が浮かび上がった。
リヴァリアの忠告虚しく、獣王国の兵士たちは邪龍のブレスに巻き込まれた。
一瞬で塵と化した兵士たちとは違い冒険者らは危機回避の判断が早かった。
「あれだけの兵士が一瞬か……大魔法クラスの一撃じゃないか」
「龍王のブレスは遠目で見ただけでしたが、実際に近くで見ると恐ろしいとしか言えませんね……」
カイトとセニアも辛うじて回避したが、ほんの数メートル先にいる兵士たちは全て死んだ。
『雑魚どもが!どれだけ群れようが俺の前では塵芥と同じと知れ!』
「ギラドラス!そちらばかりに意識が向いていると背後がガラ空きだぞ!」
愉悦に浸る邪龍の背中目掛けて、リヴァリアの魔法が炸裂した。
『不意打ちなどで俺が負けるものかッ!老いぼれはさっさと死にやがれ!』
ギラドラスの周囲に魔法陣が浮かび上がり、リヴァリアもまた周囲に魔法陣をいくつも浮かべる。
龍王と龍王の魔法戦。
余波が激しく冒険者や無名はすぐに距離を取った。
「使われているのは殆どが上級魔法……複数の魔法の同時詠唱はそう簡単ではないんだけれど……」
ソウリュウは二体の龍王を眺めながら小さく零す。
体力、防御力、魔力量、どれをとっても人間や亜人など遥かに超える。
唯一魔力量で迫るのはこの場で無名だけである。
龍王同士の戦いもやがて終わりを迎えた。
リヴァリアの魔法発動が一瞬遅れ、その隙をギラドラスが突く。
『どうしたッ!古龍ではやはり持久戦は辛いか!?』
「黙れッ!貴様などこの手で葬ってくれる!」
それでもお互いに魔法を放ち続ける。
徐々にリヴァリアの身体に直撃する魔法の数が増えてくると攻撃の手も緩んでいく。
「リヴァリア様!」
遂にギラドラスの魔法がリヴァリアの腹部を直撃し、人の姿へと戻った。
「クッ……やはり妾より力を蓄えておる……。すまぬがこれ以上の戦闘はできん」
「次は僕が代わります」
人の姿に戻ったリヴァリアが膝を突くと、その目の前に無名が飛んできた。
『勇者か!貴様が龍王同士の戦いに水を差すか!?面白いぞ!』
またもギラドラスの周囲に複数の魔法陣が浮き上がると、無名も同じように魔法陣を複数展開する。
「人間と龍王の一騎打ち、か。歴史に残る戦いじゃねぇか」
ガンツも離れた位置から無名の様子を伺っており、他の冒険者や兵士たちもまた無名を眺めている。
ギラドラスと無名が魔法を発動すると、多数の魔法がぶつかり合い相殺していく。
魔法の応酬は何度も続き、無名がギラドラスに拮抗しているのが見て取れた。
「おいおい……化け物かよアイツ。万能の勇者が別格なのか?それともアイツの才能か?」
「分からないけど……恐らく後者じゃないかしら?」
ガンツも少し引いておりソウリュウは無名の才能を認めていた。
『てめぇッ!まだ続けるつもりか!?俺を相手によくぞここまでもたせたが、もう限界が近いだろう!さっさとくたばりやがれ!』
「その判断はまだ早いのではないですか?僕はまだ魔力が残っていますよ」
流石の無名も最初に放った切り札といいその後に続く連戦も相まって魔力はほぼ底を突きかけていた。
しかしここで引けば獣王国は蹂躙されてしまうだろう。
自分に優しく接してくれた彼らを見捨てたくはない。
そんな気持ちから無名は自身の体力や精神力を魔力に変換し魔法の応酬を続けていた。
そんな事になっているなど気付いていないギラドラスはもはや驚愕するしかなかった。
勇者とはいえ人間の魔力量はそれほど多くない。
なのにも関わらず既に数十の魔法の応酬を続けている無名を不気味に感じ始めていた。
(こいつ本当に人間か……?俺も相当消耗しているがコイツはいつまで戦い続ける……まさか俺よりも魔力量が多い……いや、そんなはずはねぇ。龍王と同格など魔王くらいでないと説明がつかん。いや、魔王ですら俺よりも劣る。ならば奴は……魔王をも超えるのか?)
ギラドラスは複数の魔法を展開しながら心の中で無名について考えた。
勇者は人間の中では破格の能力を持つ。
それは有名な話だ。
龍王であり永き時を生きるギラドラスは当然ながら知っている。
過去にも異次元の力を持つ勇者は存在した。
だが定期的に召喚される勇者は龍王ギラドラスにとってさほど脅威ではない。
異次元の力を持つ勇者など数百年に一度しか現れはしないのだから。
その一人が彼だというのならここで殺さなければ、更に力をつけるだろう。
こんなことを考えていると、いよいよ魔法の応酬も百を超える。
それも全てギラドラスの魔法を相殺できる威力であり、手を抜いているわけではない。
『化け物がッ!いつまで続けやがる!』
「さぁ?……まだやりますか?」
『てめぇ如きに劣っているはずがねぇ!』
煽り文句までする始末。
本当に無名は数百年に一度の勇者なのではないか。
そんな気持ちが徐々に信憑性を帯びてくる。
それと同時にギラドラスは無名に恐れを抱き始めていた。
魔法の応酬が百五十を超えても無名の表情は変わらない。
正確には耐えているのだが、そんな事などギラドラスには分からない。
『貴様ッ!どれだけ魔力が残ってやがる!この俺と同格など!認められるわけがねぇ!』
「事実を否定しますか?何よりも今、貴方の攻撃を全て捌いているんですから、これが証拠です」
『あ、有り得ねぇ!リヴァリアよりも魔力を持つなどもはや人間じゃねぇぞ!』
遂に魔法の応酬は二百を超えてしまい、先ほど互角に渡り合っていたリヴァリアの発動した魔法の数を上回った。
それでもまだ無名の表情に変化はなかった。
(コイツは本物だ……これ以上の戦いは敗北を意味する。この辺りで引かねぇと流石の俺も限界がちけぇ!)
ギラドラスは魔法の展開をしながら周囲に目を向ける。
一番逃げやすい方向を確認しているのだ。
「どこを見ているんですか?」
そんなギラドラスの様子に不信感を持った無名が問いかける。
『さぁな……』
「集中力が乱れていているのでは?」
『黙ってろ!バケモンが!』
逃げようとしているのがバレている。
もうここで目の前の男を消すしかない。
ギラドラスは最後の力を振り絞り、背後に百を超える魔法陣を浮かべた。
『さぁそろそろ決着をつけようじゃねぇか!これが防げるか人間!!』
「……これは……まだこれだけの魔力を残していたんですね」
それでもまだ表情に変化がない無名に、ギラドラスは恐怖を抱いた。
龍王をも超える魔力量の勇者。
脅威的なまでの持久力にギラドラスは最後の賭けに出た。
背後に浮かべる百の魔法陣に全魔力を注ぎ込んだのだ。
これで防がれるようであれば潔く敗北を認めなければならない。
龍王であるギラドラスにそこまで考えさせる無名は本物の化け物と言っても過言ではないだろう。
「アイツ……どれだけ戦い続けられるんだ?いよいよ邪龍が本気出したぞ。流石に勇者でもあれは止められねぇだろ……」
「いいえ、それ以前にこれだけの魔法の応酬を続けられるなんてもう、人間を辞めているわよ」
ガンツはドン引き、ソウリュウも呆れを含んだ表情でガンツにそう言葉を漏らした。
「無名さん、あれは魔力変換を使っているのではないでしょうか?」
「ああ、セニアも気づいたかい?体力、精神力、多分生命力も削って魔力に変換してるね。流石に止めないと彼の命が危険だよ」
「ですがあの魔法の応酬……止められますか?」
「俺では無理だね。できるとしたら、それこそリヴァリア様しかいないだろうけど、あの様子だし……」
カイトの視線の先には無名と邪龍の戦いを見守る人間の姿のリヴァリアがいた。
リヴァリアも連戦に次ぐ連戦で、既に魔力は枯渇している。
龍の姿を維持することさえ厳しく、不安そうな顔で無名を眺めていた。
「表情には出していないけど、多分かなり苦しいはずだよ。あ、邪龍の方から凄い魔力を感じる……これは不味いかもしれない」
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