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2章 夏〜秋
僕は断っているんです
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展望ラウンジは、座席がすべて窓に向かって設置しているので、東ノ院くんとは、二人掛けのソファに横並びで座ることになってしまった。なるべく二人の間が空くように座る。
「さきほどのデザートでは物足りなかったでしょう?お勧めの季節のパフェはどうですか?」
「いえ、お腹一杯なので、アイスティだけでいいです。」
って言ったのに、なぜ季節のパフェを頼むの?
「すみません、是非一口食べていただきたくて、頼んでしまいました。全部食べなくて良いので味見してください。」
そう言われたら、少し食べるしかないじゃないか。さっさと用件伝えて帰りたかったのに。
「春人くんは、私のこと全然覚えていなかったんですね。」
気まずい事実を言われて、俯いてしまう。
「いいんです。沢山いるαの中の一人ですから。なのに、今日こうやって会いに来てくれて、とても嬉しいです。」
「そ、それは、母さんがー」
勝手にお見合いを受けたと続けたかったのに、東ノ院くんは、遮って別のことを言う。
「それにしても、」
と言って、東ノ院くんは僕を見て、
「ネックガードしてない春人くんってとても新鮮ですね。」
スッと指先で僕の首を撫でる。
「ひんっ。」
変な声を出してしまい、慌てて口を抑える。
「首、敏感なんですね。他の所もかな。」
「学園の外では、外してるんです。」
「そうですか。でも付けておいた方がいいですよ。こんな風に…」
と言って僕のうなじに息を吹きかけた。
「ひゃっ!」
「可愛いあなたにたまらなくなって、ガブっとしてしまうかもしれませんよ。」
僕は慌ててうなじを手で隠す。
「ふふ、冗談ですよ。きちんと無事に家まで送り届けることを春人くんのご両親にお約束しましたから安心してください。あ、ほら来ましたよ。」
ウェイターがアイスティとコーヒーそしてパフェを持ってきた。
ウェイターは、迷うことなく僕の前にパフェを置く。
マスクメロンがたっぷり入ったパフェは、食後でも食べられそうなぐらい美味しそうだった。
「どうぞ。」
促されて食べてみると、今まで食べたことないぐらい美味しい。
「どうやら、気に入ってくれたようですね。」
甘い物が大好きな僕はつい顔がほころんでしまったようだ。
「はい、美味しいです。」
「良かったです。春人くん、同級生ですから、私に敬語は不要ですよ。」
「でも、東ノ院くんも敬語ですよ。」
「私はこういう風に話す癖が付いているだけです。後輩にも敬語ですから気にしないでください。」
「そう?」
「はい。ついでに下の正孝の方で呼んでくださると嬉しいです。」
「いや、それは…。あの、」
「あ、ほらアイスが溶けてますよ。」
僕は、そう言われて食べる方に集中した。お腹いっぱいだったのに、あまりの美味しさに食べてしまう。
ナオくんとこんな風に横並びになって、いい景色を見ながら食事したら、楽しいだろうなあ。で、わざとくっついちゃったりしてたら、ナオくん慌てるかな。
「何を考えているのですか?可愛いですね。」
東ノ院くんは、コーヒーを飲みながら、ジッと僕を見ていた。
「あ。これ美味しくて。」
僕はごまかす。
「そうですか。また食べに来ましょうね。」
そうだ、きちんと断らないと。
僕は、長いパフェ用のスプーンを置いて、東ノ院くんに向き直る。
「東ノ院くん、お見合いの席に来ておいてこんなこと言うのひどいと思うんだけど、僕、他に好きな人がいるんだ。」
「はい。」
ん?平気そう?ならすんなり断れそうかな。
「だから、その、この先、東ノ院くんとお付き合いとかは出来ないんだ。」
「その想っている方とはお付き合いされているのですか。」
「え?いや…。」
「でしたら、私は構いません。あなたが私のことを好いてくださるよう努力します。」
「でも、僕はその人のことがものすごく好きだから、これからはこうやって会ったりはしないよ。」
「とてもご自身の気持ちに誠実なのですね。でしたら、同じ学園の同級生ですし、友達になってくださいませんか。」
「えっと…。」
「テニス部の他の生徒とはお友達のようですが、私ではダメですか。」
「ダメなわけではないですけど…学園の中の友達ならいいです。」
「まずは、それでいいですよ。」
これってきちんと断ってることになってるのかなあ。でも、学園にも断りを入れるから、これでいいのかな。
「じゃあ、僕そろそろ帰ります。あのおいくらですか?」
「ここは、大丈夫ですよ。懇意にしているホテルですから、すべて父に請求が行くようになっているんです。」
「はぁ。じゃあ、お父様にお礼を伝えておいてください。あと、今日の事すみませんでした、と。」
「春人くんは、何も謝るようなことをしてないですよ。なので、お礼だけ伝えておきます。あと、お一人で帰るのは、いけません。友達として無事に帰る所を見届けさせてください。」
大概、外に出る時は、家族か友達と一緒だから、そう言われてしまうと断る理由が見つからない。
仕方なく、東ノ院くんが呼んだタクシーに一緒に乗り込んで帰ることにした。
「そうだ、夏休みの最後の週の日曜日にホームパーティをやるんです。春人くんも遊びに来ませんか?」
「僕は、沢山人がいる所は苦手だからやめておくよ。」
それに絶対、場違いな気がする。
「そうですか。でもお気持ちが変わるかもしれませんので、後日招待状だけ送らせてくださいね。」
東ノ院くんって物腰柔らかそうでいて、実は押しが強いのかもしれない。
すべて断りきれてない感じがする。
だって、マンションの前でいいって言ってるのに、何だかんだ部屋の前まで送って両親だけでなく、兄さんにまで挨拶して帰って行った。
父さんや母さんだけでなく、兄さんにまで真面目そうで良さそうだなっていう高評価をもらっていく。
なんだかイライラモヤモヤして、僕は部屋に入るとすぐにナオくんに電話する。
「どうした?外出は終わったのか?」
「うん。」
「体調はどうだ?」
「かなり疲れたけど、特に悪い所ないよ。それよりもナオくんに会いたい。」
「素直だな。でも明日はゆっくりした方がいい。あさっての10時に春人の家の前にタクシー付けるから後で、住所送って。」
「うん!」
あさってナオくんに会えると決まると、僕の中にあったイライラやモヤモヤがあっという間に消えていった。
_______
本日は、ちっちゃなお話も後で更新する予定です。
「さきほどのデザートでは物足りなかったでしょう?お勧めの季節のパフェはどうですか?」
「いえ、お腹一杯なので、アイスティだけでいいです。」
って言ったのに、なぜ季節のパフェを頼むの?
「すみません、是非一口食べていただきたくて、頼んでしまいました。全部食べなくて良いので味見してください。」
そう言われたら、少し食べるしかないじゃないか。さっさと用件伝えて帰りたかったのに。
「春人くんは、私のこと全然覚えていなかったんですね。」
気まずい事実を言われて、俯いてしまう。
「いいんです。沢山いるαの中の一人ですから。なのに、今日こうやって会いに来てくれて、とても嬉しいです。」
「そ、それは、母さんがー」
勝手にお見合いを受けたと続けたかったのに、東ノ院くんは、遮って別のことを言う。
「それにしても、」
と言って、東ノ院くんは僕を見て、
「ネックガードしてない春人くんってとても新鮮ですね。」
スッと指先で僕の首を撫でる。
「ひんっ。」
変な声を出してしまい、慌てて口を抑える。
「首、敏感なんですね。他の所もかな。」
「学園の外では、外してるんです。」
「そうですか。でも付けておいた方がいいですよ。こんな風に…」
と言って僕のうなじに息を吹きかけた。
「ひゃっ!」
「可愛いあなたにたまらなくなって、ガブっとしてしまうかもしれませんよ。」
僕は慌ててうなじを手で隠す。
「ふふ、冗談ですよ。きちんと無事に家まで送り届けることを春人くんのご両親にお約束しましたから安心してください。あ、ほら来ましたよ。」
ウェイターがアイスティとコーヒーそしてパフェを持ってきた。
ウェイターは、迷うことなく僕の前にパフェを置く。
マスクメロンがたっぷり入ったパフェは、食後でも食べられそうなぐらい美味しそうだった。
「どうぞ。」
促されて食べてみると、今まで食べたことないぐらい美味しい。
「どうやら、気に入ってくれたようですね。」
甘い物が大好きな僕はつい顔がほころんでしまったようだ。
「はい、美味しいです。」
「良かったです。春人くん、同級生ですから、私に敬語は不要ですよ。」
「でも、東ノ院くんも敬語ですよ。」
「私はこういう風に話す癖が付いているだけです。後輩にも敬語ですから気にしないでください。」
「そう?」
「はい。ついでに下の正孝の方で呼んでくださると嬉しいです。」
「いや、それは…。あの、」
「あ、ほらアイスが溶けてますよ。」
僕は、そう言われて食べる方に集中した。お腹いっぱいだったのに、あまりの美味しさに食べてしまう。
ナオくんとこんな風に横並びになって、いい景色を見ながら食事したら、楽しいだろうなあ。で、わざとくっついちゃったりしてたら、ナオくん慌てるかな。
「何を考えているのですか?可愛いですね。」
東ノ院くんは、コーヒーを飲みながら、ジッと僕を見ていた。
「あ。これ美味しくて。」
僕はごまかす。
「そうですか。また食べに来ましょうね。」
そうだ、きちんと断らないと。
僕は、長いパフェ用のスプーンを置いて、東ノ院くんに向き直る。
「東ノ院くん、お見合いの席に来ておいてこんなこと言うのひどいと思うんだけど、僕、他に好きな人がいるんだ。」
「はい。」
ん?平気そう?ならすんなり断れそうかな。
「だから、その、この先、東ノ院くんとお付き合いとかは出来ないんだ。」
「その想っている方とはお付き合いされているのですか。」
「え?いや…。」
「でしたら、私は構いません。あなたが私のことを好いてくださるよう努力します。」
「でも、僕はその人のことがものすごく好きだから、これからはこうやって会ったりはしないよ。」
「とてもご自身の気持ちに誠実なのですね。でしたら、同じ学園の同級生ですし、友達になってくださいませんか。」
「えっと…。」
「テニス部の他の生徒とはお友達のようですが、私ではダメですか。」
「ダメなわけではないですけど…学園の中の友達ならいいです。」
「まずは、それでいいですよ。」
これってきちんと断ってることになってるのかなあ。でも、学園にも断りを入れるから、これでいいのかな。
「じゃあ、僕そろそろ帰ります。あのおいくらですか?」
「ここは、大丈夫ですよ。懇意にしているホテルですから、すべて父に請求が行くようになっているんです。」
「はぁ。じゃあ、お父様にお礼を伝えておいてください。あと、今日の事すみませんでした、と。」
「春人くんは、何も謝るようなことをしてないですよ。なので、お礼だけ伝えておきます。あと、お一人で帰るのは、いけません。友達として無事に帰る所を見届けさせてください。」
大概、外に出る時は、家族か友達と一緒だから、そう言われてしまうと断る理由が見つからない。
仕方なく、東ノ院くんが呼んだタクシーに一緒に乗り込んで帰ることにした。
「そうだ、夏休みの最後の週の日曜日にホームパーティをやるんです。春人くんも遊びに来ませんか?」
「僕は、沢山人がいる所は苦手だからやめておくよ。」
それに絶対、場違いな気がする。
「そうですか。でもお気持ちが変わるかもしれませんので、後日招待状だけ送らせてくださいね。」
東ノ院くんって物腰柔らかそうでいて、実は押しが強いのかもしれない。
すべて断りきれてない感じがする。
だって、マンションの前でいいって言ってるのに、何だかんだ部屋の前まで送って両親だけでなく、兄さんにまで挨拶して帰って行った。
父さんや母さんだけでなく、兄さんにまで真面目そうで良さそうだなっていう高評価をもらっていく。
なんだかイライラモヤモヤして、僕は部屋に入るとすぐにナオくんに電話する。
「どうした?外出は終わったのか?」
「うん。」
「体調はどうだ?」
「かなり疲れたけど、特に悪い所ないよ。それよりもナオくんに会いたい。」
「素直だな。でも明日はゆっくりした方がいい。あさっての10時に春人の家の前にタクシー付けるから後で、住所送って。」
「うん!」
あさってナオくんに会えると決まると、僕の中にあったイライラやモヤモヤがあっという間に消えていった。
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本日は、ちっちゃなお話も後で更新する予定です。
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