僕は超絶可愛いオメガだから

ぴの

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2章 夏〜秋

城之内の心の内側②

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 春人を見送り、部屋に戻ると、部屋は春人の残り香が漂っていた。

 (ここに今日泊まるのは拷問だな。)

 ソファの上には、今朝買って渡した春人の帽子が置いてある。帽子を被らずにホテルのロビーに行くから、誰も彼もが春人を振り返って見ていた。
 
 春人は、非常に人を惹きつける容姿をしている。人に見られ慣れているのか、本人はどれだけ見られていようと意に介さないようだった。
 だが、俺が誰かに見られていると、
『あの女の子達、ナオくんのこと見てる。』と言って口を尖らすのだった。
 春人を見ている男の方が倍以上いるし、目つきも嫌らしい。でもそういうのは、どうでもいいらしく、あまり目に入らないようだ。

 そのせいか無防備で、すぐに人から声を掛けられる。俺が側にいるのに連絡先を渡してくるとか普通ならあり得ない。
 
 しかし、春人の本当の可愛さは見た目だけではないところだ。とにかく何をするのも不器用なのに、何をするのも一生懸命な所が可愛い。
 靴紐ひとつうまく結べなくて、でも俺を待たせたらいけないと思うのか、焦って余計にぐちゃぐちゃにしてしまう。
 手を出されるのは、好きじゃないのだろうと見守ってるけど、さすがに手伝うと、叱られた子犬のようにしょんぼりする。
 その様子がたまらなく庇護欲をそそる。

 どうも春人は、色んなことが普通に出来ないことにかなりコンプレックスがあるようだ。

 特にアルバイトが出来ずに自分でお金を稼げないことに非常に負い目を感じているのが分かる。恐らく、『今働けない。』ことではなく、『将来に渡って働けない。』ことにだ。

『僕ってまともに働けないから、これぐらいはしないと。』
っていう言葉を付き合ってから何回聞いたか分からない。
 俺はそれを言われると、『そんな風に思う必要はない。』などの言葉を言うが、誰が何を言ってもその思いは簡単には、拭えなさそうだ。

 だから、『こんな自分が靴紐ぐらいで相手を煩わしてはいけない。』と思っているのだろう。

 俺は、春人のためだったら、靴紐だけでなく、ボタンひとつから留めてあげたいと思うのだが…。

 寝室に入ると、より濃く春人の残り香がする。下半身が疼く。俺はベッドサイドの腕時計を手に取ると、急いで部屋を出た。
 春人と体を重ねてその甘さを知った今、匂いだけで、俺の体は反応してしまう。

 春人が初めて発情した時、よく自分を抑えれられたと今更ながら自分に感嘆する。

 学園のオメガの講義をきちんと聞いていれば、ネックガードの緊急ボタンの存在を知れたのに、知らなかったせいで、あのたまらなく良い春人の匂いを他の生徒にも嗅がせてしまった。
 興奮したアルファの生徒達。今考えても腹立たしい。

 ふーここはダメだ。春人のことばかり考えてしまう。また春人と会う時間を作るために、やるべきことをしてしまわないと。

 俺はフロントに電話してタクシーを呼ぶ。
無機質なオフィスに戻れば、仕事に集中できるだろう。

 春人はこの部屋をかなり気に入っていた。次来る時は、きちんと春人の両親に挨拶して、泊まれるようになってからにしよう。
 
 その為には、分家を含めた城之内家を説得するだけの実績を作って、春人との仲を認めてもらわないといけない。
 でないと、組織ぐるみで、春人とのことを妨害し、春人の家族にも害が及ぶだろう。城之内家とはそういう家だ。

 俺は、手早く荷物をまとめて部屋を出た。迷ったが、帽子は置いてきた。きっと今日のことを思い出してしまうだろうから。
 春人にわざと置いてきたと言ったら、また口を尖らして怒るだろうか。その時の顔を想像すると、自然と口元が緩んでしまうのだった。
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